ディープラーニングとAIの関係は?初心者でもわかる基礎知識の解説
近年耳にすることが増えた、ディープラーニングやAI。それらは高度な技術が用いられています。「正直よくわからない」という方もいるかもしれません。
この記事ではディープラーニングの仕組みについて解説し、AIとの関連性やどのようなシーンで活用されているのか?それぞれの実例をご紹介します。
ディープラーニングとは?AIとの関係性について
ディープラーニング(深層学習)とは、人が持っている認識能力を機械に学習させる工程を指します。
ディープラーニングを使って大量のデータを学習させることで、AI(人工知能)をはじめとしたさまざまなシーンで活用することが狙いです。
2017年には「Alpha Go」と呼ばれる囲碁AIが人類最強のプレイヤーに勝利したことで話題になりました。
囲碁には天文学的数字ともいえるほど多大な組み合わせが存在し、従来のAIでは人類最強のプレイヤーに勝つのはまず不可能だとされていたことです。
「Alpha Go」勝利の背景には、ディープラーニングとAIが密接に関わっています。
ディープラーニングによる効率的かつ圧倒的な学習スピードにより、AIも目まぐるしい進化を遂げつつあるのです。
ディープラーニングはAIや機械学習とどう関係する?
AI(人工知能)とは、人のような知的行動をコンピュータに行わせる技術を指します。
先述のAlpha Goのように、まるで人のように物事を見極められ、従来のコンピュータ以上の性能を発揮できることが特徴です。
その人工知能に学習させる方法として、ディープラーニングと機械学習が注目を浴びています。
ディープラーニングとは機械学習をさらに発展させた技術
機械学習法の一つとして「教師あり学習」というものがあり、今までは元になるデータから人間が手動で機械へ学習させていました。
たとえば、「A.りんご B.バナナ」と2枚の写真を見比べられるように、「A.りんごー赤い」「B.バナナー黄色い」と一つ一つの回答を与え、見極めるためのデータを蓄積させていったのです。
それに対してディープラーニングは、写真データの違いを自らが自動的に学ぶという特徴を持ちます。
たとえば、「りんごは赤い」という観点から「A.りんご」と答えを導き出した場合、写真に映っているりんごを見て、「りんごは丸めの形をしている」「ヘタがついている」「上下がへこんでいる」などといった目のつけどころを自動的に学習していきます。
最終的にAIは、「りんごは赤い」という限定的な視点を外れ、青りんごでも「りんご」だと見極められるようになるなど、ディープラーニングは優れた学習能力を持っているのです。
ディープラーニングは、データがあるだけ自主的に学び性能を高めていくことが大きな特徴となっています。
そんなディープラーニングや機械学習に大きく役立っている仕組みを「ニューラルネットワーク」と呼びます。
ニューラルネットワークとは?
ニューラルネットワークとは、人間の脳にある神経細胞「ニューロン」を参考に作られた仕組みです。
私たち人間の脳内にはニューロンという神経細胞が存在し、それぞれが電気信号を発して情報を伝達しています。
ニューロンは、ニューロン同士が接合するシナプスによって、情報伝達のしやすさが変わるという特徴を持ちます。
ニューラルネットワークは、ニューロンが情報伝達する仕組みを応用しているのです。
頭の中にある細胞を技術で再現したのが「ニューラルネットワーク」
脳内にはニューロンと呼ばれる細胞が千数百億個 存在しており、情報の処理と伝達において特に優れた性能を持ちます。
そして、そのニューロン同士が私たちの脳の中で巨大な情報伝達ネットワークを構築しているのです。
そのニューロンの仕組みをコンピューターで応用する手法を発表したのが心理学者・計算機科学者の「フランク・ローゼンブラット」です。
彼は1958年に「パーセプトロン(英: Perceptron)」という仕組みを発表しました。
別名「人工ニューロン」とも呼ばれる「パーセプトロン構造」を使い、ディープラーニングに使われるニューラルネットワークが構築されています。
ニューラルネットワークの仕組みについて
人間の脳内では、情報の重要性や関連性によってシナプスが結合する強さが変わります。
結合する強さが変わるということは、「情報の優先度をランク付けしている」ようなイメージです。
これを応用したニューラルネットワークでは「情報伝達時にニューロンが結びつく強さ」と同じように、「情報伝達したときの情報ごとに重みを割り振る」仕組みがとられています。
取り込むデータ(入力値)から情報を受け取り、次々と情報が繋がっていく中でそのデータへ「重み」として数値を設定します。
これは「重み付け」とも呼ばれ、その後の出力層、つまり結果に影響を及ぼします。
そんなニューラルネットワークは主に3つの層に分けられています。
- 1:情報を入れるための入力層
- 2:受け取った情報を評価する中間層
- 3:最終的な結果を受け取る出力層
こうした情報処理が行われていく中で、情報に対する目のつけどころ、つまり特徴が見分けられていきます。
そして、最終的に算出された特徴を結果として出力する仕組みがニューラルネットワークです。
ニューラルネットワークの中間層が2層以上など深層になることで、さらなる深い計算や特徴の見極めが可能になります。
これをディープニューラルネットワークと呼び、この技術を応用したものが「ディープラーニング(深層学習)」となるのです。
ディープラーニングの種類
ディープラーニングをはじめとして、ニューラルネットワークにはさまざまな種類が登場しています。
その結果として幅広い分野でAI技術が活用できるようになりました。
特に使用されることの多いディープニューラルネットワークから発展した技術をご紹介します。
畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Networks: CNN)
畳み込みニューラルネットワークは画像認識に特化したモデルです。
現在、画像を識別したり、動く物体を検知したりする仕組みはほとんどがCNNの仕組みを活用しています。
画像をより小さく分割して分析することで、従来では解析できなかった画像でもしっかりと読み込むことが可能です。
技術の活用例としては、顔認識システムなどが挙げられます。
再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network: RNN)
再帰型ニューラルネットワークは自然言語処理に適したモデルです。
現在では機械翻訳や音声認識といったサービスに活用され、Google翻訳などの文章生成にも利用されています。
しかし、RNNにはいくつかのデメリットがあり、現在ではそれを改善したLSTM(Long Short-Term Memory)も多く活用されています。
長・短期記憶(Long Short-Term Memory: LSTM)
長・短期記憶とは、回帰型ニューラルネットワーク(RNN)が抱えていたデメリットを解消した拡張モデルです。
RNNは短時間のデータしか扱うことができず、長時間のデータを利用しようとすると誤差が消滅したり演算量が膨大になったりするデメリットがありました。
LSTMには「情報を忘れる機能」 が追加されたため、分析する上での情報の要・不要の判断ができるようになったことが特徴です。
敵対的生成ネットワーク(Generative Adversarial Network: GAN)
敵対的生成ネットワークは、二つの生成モデル・識別モデルをぶつけあうことで、お互いの性能がどんどんアップするニューラルネットワークです。
- 「生成モデルは、入力データを元に本物に類似した画像を作る」
- 「識別モデルは、作られた画像が偽物かどうか真偽を判断する」
という具合にお互いが争うことで能力を上げ、最終的には「区別がつかなくなる」ことが目的です。
敵対的生成ネットワークは、一昔前の白黒写真を色鮮やかにしたり、低解像度の画像を高解像度へ修正したりする技術に応用されています。
ビジネス活用におけるディープラーニングの実例
高い可能性を持つディープラーニングやAIは、さまざまなビジネスシーンに活用されることも増えています。
ビジネスシーンに活用されているディープラーニング技術の実例を大まかに分けると以下の4通りです。
- 画像・映像データへの活用
- 文章データへの活用
- 音声データへの活用
- 数値データへの活用
画像・映像データへの活用
ディープラーニングの中で最も活発に発展が進んでいる画像・映像データの活用は、今後の生活に大きく関わる要素の一つです。
ビジネスシーンにおけるディープラーニングの活用例としては、自動運転技術への応用や、不良品を自動的に検知する技術が挙げられます。
そして、「顔認識技術」の精度をアップさせることにより、防犯セキュリティや不正検出などにおける需要も高まりを見せています。
文章データへの活用
文章データは企業のホームページに活用されるチャットボットや、自動翻訳技術など、幅広い分野で活用されています。
とくに自動翻訳技術は大きな進化を遂げていて、最先端のニューラルネットワーク技術を駆使して開発された「DeepL翻訳」は注目を浴びつつある自動翻訳ツールの1つです。
音声データへの活用
iPhoneのSiriやAmazonEcho、Google Homeといった音声認識技術においてもディープラーニングの技術が活用されています。
人の発言内容を文章として変換し正確に読み取ることで、手を使わずに機械へさまざまな指示を出すことも可能です。
また、近年では音声をもとに話者の感情を分析する技術が登場するなど、メンタルヘルスケアなどのシーンにおいても音声データのディープラーニングが有効活用されつつあります。
数値データへの活用
近年ではGoogleをはじめとしたさまざまなサービスでビッグデータが収集されています。
このビッグデータをもとに、サービス利用者の好みなどを分析する技術が「リコメンデーション(推奨:レコメンデーション)」です。
すでに身近なサービスにもなっており、「検索履歴や閲覧履歴を分析して利用者に好まれそうなWeb広告を表示する」といった技術に応用されています。
ディープラーニングやAIを導入するか見極めるポイント
ディープラーニングは幅広いビジネスシーンに取り入れられてきています。
中にはディープラーニングに強く興味を持っている方もいるかもしれません。
ディープラーニングを始めるには「AIを使って何がするのか」というイメージをはっきりとさせなければなりません。
しっかり考えた上で「◯◯の事業をディープラーニングを使ってAI化したい!」とイメージが固まった場合、AIを導入したい事業についてのデータや、ディープラーニングが稼働するワークステーションを揃える必要があります。
しかし、ワークステーションの購入費や膨大なデータの収集を踏まえると、初期~継続コストが大きく膨らんでしまうのも事実です。
ディープラーニングを導入する前に、以下のポイントをしっかりとおさえておきましょう。
- AIを導入することで、事業における費用対効果がどの程度生まれるのか
- 業務の効率化ではどの程度の時間コストを抑えられるのか
- ディープラーニングに必要な膨大なデータを用意できるのか
- 開発技術は十分に持っているのか
- 既存業務においてAIを導入する定義は決まっているのか
もし上記のポイントであやふやな認識を持ってしまうと、ディープラーニングやAIの導入による効果を見いだせないかもしれません。
ディープラーニングやAIを導入する見極めのためにも、必要なコストや技術を明確にしておきましょう。
まとめ
近年では自動車運転技術や顔認証技術など、AIが目まぐるしいほどの進化を遂げています。
そのAIの発展を大きく手助けしているのがディープラーニングの存在です。
今までの機械学習では処理できなかった複雑なデータも取り扱えるため、より高度なAIが育ちつつあるのです。
そのため、今後は人間が行っていた業務の一部をAIが取って代わるともいわれています。
ディープラーニングは、今後の社会の仕組み自体をも変える可能性を持った技術だといえるでしょう。