フラッシュメモリの仕組みについて、フラッシュメモリであるSSDとHDDの違いなども解説
フラッシュメモリは様々な用途で使われています。「データの保存が早そう」などのイメージがあると思いますが、実際はどのような仕組みなのでしょうか。
この記事では、フラッシュメモリのデータ保存の仕組みや詳細な用語、フラッシュメモリであるSSDとHDDの違いなどについて詳しく紹介します。
もくじ
フラッシュメモリとは?
フラッシュメモリは、データの読み書きができる記憶媒体の一種です。
記憶したデータは電源を切ってもそのまま消えずに残り、データの消去が一瞬でできることから、カメラのフラッシュをイメージしたフラッシュメモリと名付けられました。
フラッシュメモリにはNAND(ナンド)型とNOR(ノア)型があるのですが、一般的にフラッシュメモリはNAND型のことを指します。
フラッシュメモリのデータ保存の仕組み
フラッシュメモリへデータを記録する最小単位は「セル」と呼ばれています。
セルでのデータ保存のイメージをNAND型フラッシュメモリの例で説明します。
以下がフラッシュメモリの「セル」の構造の一部図解です。
データは「フローティングゲート」に記憶されます。
「フローティングゲート」に電子を蓄えたり放出したりすることでデータを記録・保存します。
「フローティングゲート」にデータを書き込んだり消去したりするときに、電子が「トンネル酸化膜」を突き破って移動するため、「トンネル酸化膜」が劣化します。
「トンネル酸化膜」が劣化してくると、「フローティングゲート」から電子が漏れてしまい、正しいデータを記憶できずに寿命を迎えるのです。
フラッシュメモリ個々のセルの寿命としての目安は、書き込みと消去の回数が1千から1万回程度と言われています。
フラッシュメモリにおけるNAND型とNOR型の違い
多くの電子機器でも使われているフラッシュメモリには型や種類がいくつかあります。
お互いの違いについて解説します。
NAND型フラッシュメモリ
NAND型フラッシュメモリは不揮発性記憶素子の半導体で東芝が1987年に開発しました。
各セルが直列に接続されていて、セル単位ではなくブロック単位でアクセスするため1ビット単位での読み取りはできません。
ランダムアクセス(直接アクセス)の読み取りは低速ですが、書き込みは高速です。
NAND型は高集積化できるためSSD(Solid State Drive)として使われています。
NOR型フラッシュメモリ
大容量化には向いておらず容量あたりの価格がNAND型よりも高額です。
各セルが並列に接続されているため、1ビット単位の読み取りが可能。
ランダムアクセス(直接アクセス)読み取りは高速ですが、書き込みは低速です。
NOR型はデジタルカメラ、プリンター、ルーター、スマートフォンなどで採用されています。
NAND型フラッシュメモリに使われる4種類の記録素子について
NAND型フラッシュメモリは、記録素子として大きく4種類あります。
SLC(Single Level Cell)
SLC(Single Level Cell)は、1つの記録素子に1ビットのデータを書き込むもので、耐久性が非常に優れているため企業向けに販売されているものが多く高価です。
MLC(Multi Level Cell)
MLC(Multi Level Cell)は、1つの記録素子に2ビットのデータを書き込むもので、耐久性に優れていることから、ハイエンドユーザー向けのものが多くSLCよりは価格が低い傾向がありますが、それでも高価です。
TLC(Triple Level Cell)
TLC(Triple Level Cell)は、1つの記録素子に3ビットのデータを書き込むもので、実用上は十分な耐久性があるため、一般向けに販売されていて安価です。
QLC(Quad Level Cell)
QLC(Quad Level Cell)は、1つの記録素子に4ビットのデータを書き込むもので、耐久性は劣るものの、実用上は使えるために一般向けに販売されていて、価格は安価な傾向にあります。
フラッシュメモリが使われている主なメディア
NAND型フラッシュメモリはさまざまな電子機器、電化製品でも使われていますが、具体的にどういったところで使われているのでしょうか。
フラッシュメモリの使用例をいくつか紹介します。
SSD
SSDはHDDと同じ記憶媒体ですが、HDDのように高速回転するディスクに磁気ヘッドでデータの読み書きをしないため、高速処理が可能で省電力で衝撃や振動に強いという利点があります。
小型軽量のためノートパソコンやスマートフォンに使われています。
USBメモリ
パソコンに外付けして使い、持ち運ぶ必要があるのでしたらUSBメモリが便利でしょう。
USBメモリはUSB端子が付いていて、USBポートに接続することでデータの読み書きを行う記憶媒体です。
規格としてはUSB Type-Aが一般的ですが、スマートフォンに採用されているUSB Type-BやUSB Type-Cがあります。
SDメモリーカード
SDメモリーカードはSD規格によるカード型の記録媒体です。スマートフォンやデジタルカメラ、携帯ゲーム機、パソコン、テレビなどの電子機器で使われています。
サイズはSDカード、microSDカードがあり、規格はSD、SDHC、SDXCがあります
フラッシュメモリであるSSDはHDDとどう違うのか?
従来からパソコンに使われているHDDとフラッシュメモリのSSDは同じサイズ、接続端子が使用できるものがあります。
それはHDDと同じ用途でフラッシュメモリであるSSDを使うために、接続端子や設置場所を使うために、HDDの規格に寄せてSSDを設計しているからです。
次にSSDのメリット、デメリット、SSDとHDDの違いを紹介します。
SSDのメリット
SSDはHDDとは違いモーターで駆動しないため、データの読み込みや書き込みが速く、省電力です。
衝撃や振動にも強く故障しにくいため、持ち運ぶことが多いモバイルパソコンに向いています。
フラッシュメモリであるSSDのデメリット
SSDでは最大でも8TBほどまでですが、HDDの容量は10TB以上のもあります。
またSSDの方が容量あたりの価格が高い傾向にあります。
SSDとHDDの違い
SSDとHDDの違いを表で比較してみます。
SSD | HDD | |
---|---|---|
容量 | ○ | ◎ |
速度 | ◎ランダムアクセスに優れている | ○アクセス性能は頭打ち |
価格 | △高性能タイプは単価が高い | ○低価格、大容量化が進んでいる |
省電力 | ◎駆動しないため省電力 | ×駆動するため電力を使い発熱する |
サイズ重量 | ◎チップのため小型軽量 | ×駆動部分があるため重く小型化しにくい |
耐衝撃性 | ○駆動部分がなく故障しにくい | ×駆動中は衝撃や振動に弱い |
フラッシュメモリであるSSDの規格やインターフェイスについて
SSDはHDDに比べてメリットが多いですが、規格やインターフェイスがいくつかあります。
同じSSDの中でも互換性が無い場合もありますので、SSDを選ぶ際に注意が必要です。
SSDの規格についていくつかの例を紹介します。
mSATA
mSATAはモバイルノートパソコンで使われていて、Serial ATA規格の小型版です。
M.2(エムドットツー)SSD
M.2(エムドットツー)は、2014年に登場したintel9シリーズ以降のマザーボードに採用された新しい規格で、基板がむき出しになったような形をしています。
mSATAの後継として開発された規格で、PCIeやSATA3.0、USB3.0といった端子が含まれており、通信機能やストレージなどの機能が追加できます。
SSD側に搭載されたNVMeコントローラによる高速データ転送ができるSSDとなっており、約4500MB/sを超える高速のデバイスもあります。
M.2を採用したSSDで高速なものを使いたい場合は、NVMeタイプを選ぶと良いでしょう。
M.2のSSDでも「SATA接続のM.2SSD」と言うものもあります。
2.5インチのHDDや2.5インチSATA SSDよりは圧倒的に小さく、本体を小型化しやすいと言うメリットがあります。
2.5インチSATA SSD
内臓HDDや2.5インチSSDの接続に使用します。
マウンタを使えば3.5インチベイのデスクトップパソコンにも使えます。
2.5インチSATA接続のSSDの場合は、古いパソコンなどでも使用が可能なことが多いです。
デスクトップパソコン用のマザーボードであれば、よほど古くなければ、接続可能と考えて良いでしょう。
まとめ
フラッシュメモリについて、仕組みや用語を詳しく紹介してきました。
身近なところで活躍していたフラッシュメモリですが、その中でもSSDは今後もさらに大容量化と低価格化が進んでいくと思われます。
実際にノートパソコンではHDDからSSDへといった流れが主流であり、自作PCにおいてもHDDからSSDへ換装するカスタマイズも行われています。
HDDからSSDに交換や増設し、SSDのメリットを体験してみてはいかがでしょうか?