パソコン自作のススメ~「ドライバー1本で始めよう!」-その5「いよいよ組み立て! でもその前に」 Text by 高橋敏也
ついに組み立てが始まります! 「ついに組み立てか!」と思った方、本当にごめんなさい、今回は組み立てに入る前の基礎知識です。組み立て方法を解説しつつ、基礎的な知識を盛り込んでいこうとも思ったのですが、大変重要なことばかりですので、組み立てに入る前にまとめてみました。具体的な組み立ては次回以降になりますが、なるべく早急に、しかも細かくやっていきますので、どうか見捨てないでください……。
では、自作パソコンを組み立てる前に知っておきたいこと、組み立てる時に注意すべき事を見ていきましょう。
■パーツは揃っていますか?
組み立てに入る前にもう一度、全てのパーツが揃っているか確認してください。いや、もし仮に買い忘れたパーツがあったとしても、組み立てを休んで買いに行けばいいだけです。しかし、それだと話の腰を折られるというか、面白くないじゃないですか。なので作業に入る前に、パーツが揃っているかを確認してください。
ちなみにHDD用のケーブルなどは、マザーボードに含まれている場合がほとんどです。よほど大量にHDDやSSDを搭載しない限り、ケーブルが足りなくなるということはないでしょう。ネジ類に関しては、本体ケースに付属しているものを使います。こちらもよほどのことが無い限り、足りなくなることはありません。
今回使用したパーツたち。ドスパラのWebサイトコンテンツ「パーツの犬」で提案されている自作パソコンのパーツセットです。もちろんこれと全く同じセットを購入することも出来ます
なお、パーツが揃っているかどうかを確認する時は、各パーツのパッケージの中身も確認してください。マニュアルなどを見て付属品が揃っているかを確認する訳です。ごく希にケーブルが足りないとか、ネジが足りないとか、そういったこともあるからです。もし付属品に不足があった場合は、そのパーツを箱ごと、レシートや領収書と一緒にショップへ持っていって交換してもらいましょう。その前にショップへ電話をして状況を説明しておけば、よりスムーズに交換してもらえると思います。
■工具は揃いましたか?
本コーナーのサブタイトルは「ドライバー1本で始めよう!」。自作パソコンは基本的にパーツを用意し、プラスドライバー1本で完成させることができます。後述しますがもちろん、ドライバー以外の工具もあればあったで便利でしょう。ただし、どの工具もちょっと工作や機械いじりをする人の部屋なら、探せば普通に見つかるものばかり。自作パソコンを組み立てる際に使用する工具たちは、拍子抜けするほどハードルが低いのです。
組み立ての際に使用する工具、その基本中の基本であるプラスドライバーですが、もしこれから用意されるのでしたら先端の規格が「+1(No.1とか1番とか言われる場合もあります)」サイズを選んでください。プラスドライバーの先端サイズはJIS規格で定められていて、数字が多くなればなるほど太く(大きく)なっていきます。詳細は省きますが自作パソコンで使われるネジは直径3ミリ前後がほとんどで、そのサイズのネジだと+1か+2で対応できるのです。ホームセンターの工具コーナーに行けば、規格別にざまざまな製品が販売されているので、その中から手にしっくりくるものを選びましょう。
「規格とかよく分からない」ということであれば、プラスやマイナスのドライバーが複数本セットになっているものでも構いません。ドライバーセットの多くは、ごくごく標準的なサイズになっており、自作パソコンでも使用できるからです。
ちなみに私の場合はベッセル(VESSEL)というメーカーの「ボールグリップドライバー プラス1×75 No.220」というプラスドライバーをもっとも多く使います。長すぎず、短すぎず、手にもよく馴染んでくれます。また、先端が磁化されており、鉄製のネジを吸い付けることができます。細かいところにネジを入れて回す際に、この磁化された先端が大変役だってくれます。ちなみに自作パソコンは電子パーツの集合体であり、静電気や磁力は大敵です。ですがこのドライバーの先端ぐらいの磁力なら、パーツに影響を与えることはありません。というより私の経験上、そういったトラブルは今まで発生したことがありません。もしどうしても気になるということであれば、先端が磁化されていないプラスドライバーを選びましょう。
もっとも基本となるプラスドライバーが用意できたら、あると「便利かも知れない」工具も探しておきましょう(無ければ無いで構いません)。例えばやや長めのプラスドライバー、マイナスドライバー、ラジオペンチ、ハサミ、カッターナイフ、ピンセットなどが手元にあると、組み立て時に重宝するかも知れません。長いプラスドライバーは、パーツの間の奥まった場所でネジを締める時に便利でしょう(逆にうんと短いドライバーがあっても便利です)。ハサミはパーツのパッケージ(袋)を開ける時に便利でしよう。まあ、ごく一般的なものばかりですね。
あると便利かも知れない工具を並べてみました。一番左の工具に注目
さて、上の写真の一番左にある工具、もしかしたら見慣れないものかも知れません。これはナットドライバーなどと呼ばれるもので、「ボルトとナット」のナットを締めるためのものです。多くの場合、マザーボードを本体ケースに固定するのに真鍮製のスペーサーを使用します。このスペーサーを締め付けるのに、ナットドライバーがあると便利なのです。もし無い場合はラジオペンチ、ペンチなどで代用できますし、最近の本体ケースでは多くの場合、あらかじめスペーサーが取り付けられています。ちなみにサイズは5ミリです(注:ごくまれに特殊なスペーサーもありますが)。
工具を紹介したついでに、組み立ての時、せっせと回すことになるネジの方も見ておきましょう。基本的に自作パソコンで使用するネジは2種類、インチネジとミリネジです。ネジ山の間隔がインチ(ヤード・ポンド)規格になっているか、ミリ(メートル)規格になっているかの違いで、例えばHDDの固定にはインチネジを使用しますし、光学ドライブやSSDの固定にはミリネジを使用します。本体ケースのパネルなどの固定では製品によって異なります。ネジの頭が大きくなっていて指で回せるタイプのネジもありますが、これもインチネジとミリネジの両方があります(ローレットスクリューなどと呼ばれる場合もあります)。ネジの太さは基本的にインチネジが約3.5ミリ、ミリネジが3ミリ(M3)です。
ですが電動ファンを取りつけるために使用するネジなどでは、いわゆる木ネジタイプのものありますし、本体ケースの中には独自仕様のネジを使うものもあります。まあ、基本的にはプラス溝のインチネジかミリネジを使うのですが。さて、ここでコツを一つ。インチネジとミリネジの見分け方ですが、ネジ山の間隔が広い方がインチネジ、狭い方がミリネジです。ネジ山が異なるネジ2つを並べて比較してみてください。そしてインチネジの穴にミリネジを入れようとするとスカスカになり、インチネジをミリネジの穴に入れようとすると、入らないか大きな抵抗があります。ミリネジをインチネジの穴に入れた場合は「あ、間違えた」で済みますが、インチネジをミリネジの穴に無理に入れてねじ込むと、ネジ山を潰したり、ネジが抜けなくなって大変です。ネジを回した時に妙な感覚があった場合は、よく確認してください。そう「無理はしない」が鉄則です。
左からインチネジのローレットスクリュー、インチネジ、ミリネジ。ネジ頭はさまざまな形状があります
左がインチネジ、右がミリネジ。ネジ山のピッチに注目してください
■組み立ての際に注意すること
さて、組み立てに入る前に、いくつか注意事項があります。といってもさほど面倒なものではありません。このあと細かく注意事項を紹介しますが、要するに何が言いたいかというと「慌てず、無理をしない」ということです。初めての自作ということであれば、右も左も分からないのは当たり前。自分が今やっている作業に関して「果たしてこれでいいのだろうか?」と疑問に思うこともあるでしょう。また、面倒なので適当になってしまう場合もあるでしょう。
基本的に自作パソコンは正しく組み立てれば、ごく普通に動きます。もし動かなかったとしたら、それは組み立て作業のどこかでミスをしている可能性が高いのです(パーツ自体の不良というのは、ごくまれなケースです)。しかもケーブルの差し込みが浅かったとか、そういった凡ミスの場合がほとんどです。最終的にコンセントにつなぎ忘れたので動かなかったなどという話も、本当にあったりします。
組み立て作業は慣れている人なら、1時間もあれば終わります。それからOSのインストールや、マザーボードやビデオカードなどのセットアップを行いますが、のんびりやってもトータル3時間ぐらいでしょうか? ただしこれが初めての自作ということであれば、余裕を見て半日ぐらいはかかると思ってください。考えようによっては半日、自作パソコンの組み立てを楽しめるということです。そういう気持ちで、取り組んで欲しいと思います。
では注意事項を見ていきましょう。
●怪我に注意!
自作パソコン黎明期には、製造過程の仕上げが大ざっぱな本体ケースというのがよくありました。要するにクオリティがあまり良くない本体ケースということですね。こういった本体ケースの場合、パネルの切断面が鋭くなっていて、そこで手を切ってしまうというトラブルがあったのです。このため黎明期には「作業を行う際は、必ず軍手などで手を保護しましょう」と解説されることもありました。
しかし最近のパーツ、例えば本体ケースなどは一定のクオリティが確保されているため、手を切るようなトラブルはほとんど発生しません。なので多くの人が素手で作業を行うようです。また、マザーボードやビデオカード、メモリの基板でも同様のトラブルが発生することもあります。さらにマザーボードやビデオカードの基板、その裏には基板に搭載されている電子パーツのピンが飛び出して、それで指を刺すといったトラブルもあります。くれぐれも怪我には注意して、楽しく組み立てを行ってください。
マザーボードの裏側などは鋭利なピンが飛び出しているので取り扱いには注意が必要です
●無理は厳禁!
ここで言う「無理」とは、以下のようなことを意味しています。
・ネジが回りにくいので無理矢理回したら、今度は抜けなくなった
・ネジを無理矢理回したら、穴の中で切れてしまった
・ネジ……(以下略)
・コネクタを差し込もうとしたが刺さらない。無理矢理押し込んだらピンが曲がった
・メモリをスロットに差し込もうしたが固い。無理矢理押し込んだら「バキッ」という音がした
・ビデオカードを差し込もうとしたが……(以下略)
自作パソコンのパーツは、基本的に精密機器であり、電子機器です。これらの機器に対して「力業」は禁物ということです。ネジにしろ、コネクタにしろ、メモリやビデオカードにしろ、正しい向きと位置で差し込めば、さほど力を必要としないものです。もし力を込めても入らない、刺さらない場合は向きが違うといったミスが考えられます。いったん作業を中止して、よく確認してみましょう。例えばメモリモジュールには、端子の部分に切り欠きがあります。この切り欠きはメモリソケットと合うようになっています。間違えた向きで刺そうとすると、切り欠きが合わずに刺さらないということです。
メモリに限りませんが、パーツには取り付け方向が決まっているものがあります。「入らない」と思ったら無理に押し込まずもう一度取り付け位置を確認しましょう
メモリを差し込む際に向きを間違えるといったミスは、自作パソコンのベテランでもよくあるものです。マニュアルをしっかり確認し、パーツやコネクタに関しても向きなどをしっかり確認して作業しましょう。インチネジとミリネジに関しても同様です。無理をせず、慎重に組み立てを楽しんでください。
●静電気と水気に注意!
人体や衣服には、驚くほど静電気が貯まるそうです。ドアノブに触れようとした時、「パチッ」という音がして小さな光が見えるのは静電気の放電です。ドアノブの「パチッ」は多少痛いぐらいで済みますが、その放電をマザーボードやメモリ、ビデオカードに対してやってしまうと、時として大変なことになってしまいます。「運が悪いと」電子パーツは身体からの放電だけで壊れてしまうのです。
ですが、静電気によるトラブルを防ぐ方法はあります。静電気を除去するブレスレットや手袋を使う方法もありますが、もっとも簡単なのは作業の前に、机やラックなどの金属部分に手を触れるという方法です。要するに作業前に、身体の静電気を放電してしまうのです。冬場は空気が乾燥し、静電気が発生し放題なので注意してください。
静電気だけでなく、電子パーツは水気も嫌います。こちらは普通に注意していれば大丈夫だと思いますが、飲み物などはパーツから少し離れた場所に置くようにしましょう。
●箱、レシート(領収書)、付属品に関して
パーツの箱や梱包材などは、自作パソコンが組み上がってしまえば、ただのゴミとなります。もちろんマニュアルやソフトウェアのメディア、余ったケーブルやネジなどは保管しておくと思います。というか、それらは捨てないで大切に保管しておいてください。ですが箱や梱包材となると、邪魔なので捨ててしまう人も多いようです。ですが保管する場所があるようでしたら、しばらく保管しておくことをお薦めします。
まず一つには初期不良などがあった時は、交換してもらう際に必要となる場合が多いということ。さらに修理を依頼する時など、メーカーへ送付する際に便利だということ。本体ケースの箱や梱包材は、引っ越しなどで自作パソコンを移動する際に使えます。捨てるのはいつでも出来るのですから、しばらくは保管しておきましょう。
あと忘れがちなのがレシートや領収書です。これはマニュアルやソフトのメディアと一緒に保管しておくといいでしょう。初期不良への対応、保証期間中の修理依頼などでは「どこで買ったか?」が重要になります。くれぐれも捨ててしまわないように注意してください。
■組み立ての順番に関して
さて、ここまで来たら後は、実際の組み立て作業に入りましょう。いくつか書き忘れたことがあるような気はしますが、思い出したら組み立て手順の中で取り上げて行きます。何度でも繰り返しますが、自作パソコン組み立ての鉄則は「無理しない」です。その上で日曜大工やプラモデルのように、組み立てを楽しんでください。
次回から具体的な組み立てに入りますが、なるべく早く最後まで進めるようにします。それにはちゃんと理由があって、基本的に自作パソコンの組み立てには「これ!」という順番は無いのです。例えばマザーボードを中心としたパーツを組んでから、本体ケースやドライブ、電源ユニットがらみの作業を行う人もいれば、その逆もあるからです。メモリの取り付けを最後にする人もいれば、さっさとマザーボードに取り付けてしまう人もいます。順番は人それぞれで自由、慎重に間違えないようにすればいいのです。
ということですから、次回から解説する組み立て作業の順番は、言うなれば「高橋方式」という訳です。ですから組み立て作業を最後まで見ていただき、自分なりの順番で組み立ててもまったく問題ありません。なので「なるべく早く最後まで」という話になったのです。では次回、お楽しみに!(急いで書きます!)
・パソコン自作のススメ「ドライバー1本で始めよう!」バックナンバー
その1「ドライバー1本で始めよう!」
その2「パーツ選びは遠足前夜(前編)」
その3「パーツ選びは遠足前夜(中編)」
その4「パーツ選びは遠足前夜(後編)」
その5「いよいよ組み立て! でもその前に」
その6「ついに組み立て!(前編)」
その7「ついに組み立て!(中編)」
その8「ついに組み立て!(中編2)」
その9「ついに組み立て!(後編)」
*掲載内容は公開当初の情報のため、現在の情報とは異なる場合があります。
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