【20XX】ロックマン愛あふれるローグライクアクション 帰ってきたガレリアPCゲーム探訪記

【20XX】ロックマン愛あふれるローグライクアクション 帰ってきたガレリアPCゲーム探訪記

公開日:2020/9/4

 今回ご紹介するゲームは、ロックマン風の2Dアクション×ローグライクの『20XX』。ふつうゲームを説明するとき他のゲームに例えることは禁句になるが、本作に限っては当てはまらない。

 なにしろ生みの親であるChris King氏が大のロックマン好きを名乗っており、クラウドファンディングで資金調達したときのプロジェクト名が「Echoes of Eridu: Co-optional Roguelike Megaman-style action」--要するに「ローグライクなMegaman(ロックマンの海外名)スタイルアクション」。むしろロックマンに触れない方が失礼に当たるというものだ。
 

ロックマンとゼロのような主人公2人を見つめる天才科学者たち。元ネタを全く隠そうとしていない潔さだ。

 

 そんなKing氏が2014年4月にKickstarterで目標額を達成して開発スタート、同年末には早期アクセスのPC版をSteamでリリース。それから2年半かけてプレイヤーらの声にも耳を傾けてコツコツ改良を重ね、2017年8月に製品版がようやく発売。足かけ3年、そこまで海外の人がロックマンが好きかという情熱に心動かされる想いだ。

 舞台は20XX年の未来、ヘルメットを横に置いて遠目に街の平和を見守るメカニカルな主人公たち。そこに頭のよさそうな博士が危機を知らせ、緊急出動。そんなオープニングから、すでにロックマン愛がさく裂。ゲーム本編でも細かい設定やストーリー、主人公たちが誰で博士らにどういうバックグラウンドがあるのか一切語られないだけに、純粋にロックマン作りたかったんだな!と伝わってくる。

 かたや操作システムはと言えば、攻撃+ジャンプこそは初代ファミコン版のままながら、後継シリーズ『ロックマンX』や『ロックマンゼロ』に寄った作りとなっている。溜め撃ちや高速移動でダッシュさらに長距離ジャンプ、壁に張り付いて連続ジャンプで駆け上がったりと、“本家”で鍛え抜いた技を同じ感覚で使える。操作のレスポンスは良好でキビキビと動き、引っかかりを感じるストレスは一切なし。
 

動く足場を渡り歩き、ギリギリのジャンプを求められる緊張感は横スクロールアクションの王道。ひたすら「死んで覚えろ」だ。

 

 そして左からスタートしてザコを蹴散らし、右端に各ステージのボスが待つゴールが位置しているのもおなじみの構成だ。最後にはゲートがあり、そこを一度通過すれば後戻りはできず、待ち受けるボスを倒して先のステージ進むかやられてゲームオーバーになるかのどちらかだ。

 

キャラクターを強化していく面白さ

 本作と「ロックマン」シリーズが決定的に違うのは、「ローグライク」の要素だ。この連載でも何回か取り上げた「ローグライク」とは、「毎回ステージが自動生成されること」と「敵やアイテムの配置が遊ぶたびに変化し、手に入れたアイテムをやりくりして難局を切り抜ける」、そして「途中でやられたら、入手したものは没収されゼロからやり直し」を特徴とするジャンルだ。

 ちなみに本家『ローグ』(『風来のシレン』シリーズのご先祖となったコンピュータゲーム)では「プレイヤーが行動するたびに時間が経過し、主人公が動くと敵も動く」ターン制を採用しており、こちらの要素を受け継いだゲームも多い。

 ローグライクはじっくり考えられるものが多いが、本作は「ロックマン」要素が強いため、反射神経的にシビアな作りとなっている。まず一定レベルの腕前、最低限「足場を連続ジャンプで渡り歩ける」程度をこなせることが前提にあり、プラットフォームアクション(足場から落ちないよう進めるゲーム)に不慣れな人はまともに遊ばせてもらえない。

 ともあれ、ローグライクの面白さを大きく左右するのはアイテムの多様さだ。まず分かりやすいのが、特殊武器の「パワー」。これは各ステージボスを倒すと入手できる、ロックマンの仕様を引き継いだもの。使うたびにエネルギーを消費することや、特定の武器が特定のボスに絶大な効果を発揮する(4倍ダメージ)も本家を意識しているようだ。
 

遊ぶたびに毎回取れるアイテムが異なるのはまさに「ローグライク」。苦労して集めたパワーアップも、やられたら全て没収される。

 

 そしてステージ上の箱を壊したりショップで買って入手する強化アイテムが「オーグ」。能力の強化や2段ジャンプ/ホバーなど移動の補助もあったりと多彩。メリットばかりではなく、代償に攻撃力やライフが下がることもあれば、スピードアップを取り過ぎて制御できなくなることもある。

 3つ目がキャラクターの追加パーツである「コア」。頭、胴、腕、足の4箇所に付けられる、RPGでいう装備である。こちらも「ロックマンX」シリーズの仕様に近く、経験者にはすんなり受け入れられるだろう。

 最後にお金代わりの「ナット」を貯めておけば、ショップで買い物ができる。これら偶然に左右される手札と相談しながら、ステータスを上げたりコアを集めてキャラクターの基礎能力を底上げしていく……のだが、やられたらゼロからやり直し。当然コンティニューもなく、キャラクターを強化しているほど喪失感はデカい。

 

ゲームオーバー時には到達ステージやタイム、敵に与えた総ダメージなどが表示。からかいのコメントは結構カチンとくる(笑)

 

 アイテムが全没収されるなかで、唯一持ち帰れるのが「ソウルチップ」だ。ゲームオーバー後のセーフハウスで、これを消費して新たなオーグや武器などをアンロックしていく。難易度が3段階あるうち「オマージュ」(3機設定。最も易しい)と「ノーマル」では、ゲームがグッと楽になる永久アップグレードを利用でき、初めは激ムズに思える局面もしだいにヌルくなっていく。腕に自信がない人であれ、しばらくガマンを重ねれば上手くなったと錯覚できるしくみだ。
 

楽なステージが出るまでやり直すべき

 最初のステージは完全にランダムで、ボスクリア後には次に進むステージを3つのうちから1つ選べる。本家「ロックマン」の序盤は複数ステージの中から自由に選べたが、こちらは運まかせの色合いが強い。

 主人公はライフ制で、ボスまでの道中は足場を踏み外してもミスとはならず、HPが1つ減って直前の足場に戻されるだけ。ずいぶんユーザー思いの優しい仕様のようだが、それは甘い。

 何しろ初見では、とても渡りきれるとは思えない足場の間隔の広さ。どこにも階段がないのにどうやって上に登るんだ……と途方に暮れるはず。ゲーム中では何の説明もないが、いきなり「ダッシュジャンプと壁蹴りジャンプを使いこなすことありき」の設計となっているのだ。ジャンプ時にダッシュボタン押しっぱなしは基本である。


各面のボス達も大きな顔面やメカコウモリ、昆虫コンビなど個性派ぞろい。しかしステージ道中が厳しいので、ゴリ押しでなんとかなりやすいボスは安らぎかも。

 

 しかも「ロックマン」で多くの人を苦しめた、消える足場や滑る足場が出てくる割合がかなり高め。各ステージには灼熱やジャングル、極寒の冬山などテーマはあるはずだが、そんなの関係なしに多くの面に出張してくる。まだゲームに慣れてないうちに「空中の足場を渡り歩き、重力反転する場所で天井に張り付き、滑る足場を連続ジャンプして壁蹴りで駆け上る」が必須科目になっているスパルタぶりだ。

 何度も死んで上達してくれば難所も「ピンチを切り抜ける楽しみ」に変わってくるが、敵の配置によっては詰んでしまう事態もありうる。煮えたぎるマグマの上を渡っているときに飛んでくるザコや、死角からジャンプを邪魔する砲撃など。足場も「すり抜けられるもの」とそうでないのが混ざってるのも厄介で、同じ場所でミスを繰り返して残りライフがゼロになるのもありがち。

 それが遊ぶ人の心を思いやったりせず、ステージを自動生成するローグライクの無情さ。どうしても無理なときは無理だと見切りを付けて、易しめのステージが生成されるまでやり直すのが心の健康にとってもいいだろう。

 長らく「ロックマン」から遠ざかっていた筆者にとっては初めこそ辛い戦いだったが、数時間プレイして操作感覚が蘇ると、スラスラ進めるようになった。ネットを通じて友だちと一緒にプレイすればさらに簡単になり(ミス時に先に進んだ友だちの場所までワープできる)、逆に難易度を最高にした上で不利な条件「スカル」を設定した上級者向けプレイもできる。なによりローグライク×ロックマンという新境地を、幅広い層の人たちに体験してもらいたいと思える力作だ。

 

Steam公式サイト 

Steam:20XX