【Hacknet】怪しげなメールから始まるハッキングシミュレーション 帰ってきたガレリアPCゲーム探訪記

【Hacknet】怪しげなメールから始まるハッキングシミュレーション 帰ってきたガレリアPCゲーム探訪記

公開日:2020/8/11

「私は君のことを知らない。悲しいことだが、これから先知ることもない。しかし、君がこのメールを読んでいるということは、頼れるのは君だけだということだ」

こんなメールを現実にもらったら、おそらくスパムメールとして読まずに処分するはず。Hacknetとは、その怪しげなお誘いにあえて乗ってネットの闇深くへと潜っていくゲームだ。

差出人は「Bit」、事故死したはずのハッカーだ。そのメッセージに従い、様々なハッキングの依頼をこなしながらスキルを身につけ、Bitの死の真相や恐るべき陰謀を阻止することが最終目標である。

 

伝説のハッカーBitから、ハッキング専用OSごと送られてきたメール。本当に届いたら見なかったことにすると思う……。

 

その手段は、ハッキング専用に作られた架空のOS「HacknetOS」を駆使して、ネットの海を泳いでターゲットのPCを次々とハックしていくこと。つまり、ジャンルはハッキングシミュレータだ。

ゲーム中ではジョイスティックは出番がなく、使うのはマウスとキーボードの2つ。そう、映画やアニメでおなじみ「カチャカチャ、ッターン!」と華麗にコマンドを打ち込み、狙ったPCをセキュリティ的に丸裸にしたり内部のファイルを探索して“攻略”していくのだ。

アクションゲームをやり慣れた人、あるいはシミュレーションに親しんでいる人でも、本作の画面を見ればギョッとするはず。画面がひたすら真っ暗で、黒い背景に白い文字がひたすら並んでいるのみ。グラフィック要素はわずかに下のネットマップ(自分のPCやターゲットPCなどが表示)だけで、ゲームというよりまるでメールソフトのようだ。

しかし、Windows以前のMS-DOSからPCを使ってきたベテランの人たち(今でもコマンドプロンプトはありますが)には懐かしい思いがするはず。「C:\>dir」など、キーボードからコンピュータに対する命令を打っていたアレである。

見かけがそれっぽいだけでなく、実在するUNIXのコマンドを入力することも可能だ。「ls」でフォルダ内のファイル一覧を表示したり、cat (ファイル名)で中味を表示させたり、scpコマンドでファイルをダウンロードしたりも現実さながら。知識のある人はふだん使いの感覚で、知らない人は基礎の基礎が学べたりする。

さらにハッキング専用のオリジナルコマンドもあり。PortHackという魔法の言葉を打ち込めば、たちまちターゲットPCの管理者権限が奪える……現実にこんな便利なコマンドはなく、あったとして他人が用意してくれたツールにただ乗りする(「スクリプトキディ」という言葉もある)のはどうかとも思えるが、スーパーハッカー“気分”が味わえるものと割り切ろう。

キーボードをひたすら打つべし!打つべし!

メールで依頼人から任務をもらい、指定されたノード(コンピュータ)PCをハッキングして手がかりをつかみ、任務が完了すればメールに返信して任務完了。基本的なゲームの進行は、ざっとこの通りだ。たいていメールにはターゲットになるPCのリンクが含まれ、時には任務の概要や参考資料を書いたノートが付いてくる。

基本的な進行はメールで任務をもらい、無事に成功させると組織内のランクが上がってより難しい任務がもらえるというもの。中にはヘビーな仕事もある。

 

ゲーム本編に入る前の最初のチュートリアルで「他人のコンピュータに対して不正アクセスする行為は、合衆国法典第18巻1030条によって禁止されている……」と注意書きをしている(本当にある法律だ)のが、いかにもハッカーの本場アメリカのゲームらしい。

序盤はBitからの指示を次々とこなしていくのみで、ハッキング操作を飲み込む手ほどきも兼ねている。まず最初のお仕事は、自分のPCにHacknetOSとともに仕込まれた「SecurityTracer.exe」なる自動追跡プログラムを消すこと。これほど分かりやすい名前のウイルスがあれば苦労しない気もするが。

自分のマシンに接続して操作している画面。ハッキングしたノードが多くなるほど、下のネットマップの円も増えていく。

 

ネットマップ上にある緑色の円をクリックすることが、すべての始まり。自分のPCに接続してフォルダ構造を確認し、問題のプログラムが潜んでいる場所を探す。キーボードから「ls」を打ち込んで確認してもいいし、マウス操作で「View FileSystem」を実行してもかまわない。Windows PCを触ったことがある人なら、exeファイルのあるフォルダと言えばbinだろうと大方の見当が付くはずだ。

やっぱりあった!ということで、「rm」コマンドによりサクッと削除。本来は「rm SecurityTracer.exe」と打ち込むところだが、長いファイル名などは最初の数文字をタイプしてからTABキーを押すと残りを補完してくれるのが便利だ。むしろ後半はこれなしでやってられない。

セキュリティとソーシャルハックの基礎が学べる

次はBitの友達Viperのマシンに忍び込み、ハッキングに使える実行ファイルをダウンロードしてくる任務。これ以降、ほとんどは次のような作業のくり返しとなる。

まず「nmap」コマンドでポートをスキャンし、どういった種類があるかを調べる。ポートとはコンピュータが外部とデータ通信をする出入り口であり、忍び込むのに使える抜け道を探すわけだ。しかる後に各ポートに対応したツールを起動して攻撃してこじ開ける。そして必要な数のポートが確保できたら、Porthackを走らせて管理者権限を奪い取る。

さらにガードを固めたマシンであれば、「プロキシー」と「ファイアウォール」が仕掛けられている場合がある。前者は内部と外部のネットワークを中継するサーバーで、後者は防火壁すなわち「火災(不正な侵入)を最小限に食い止める」しくみのことだ。

ゲームが終盤になるほどマシンのガードも固くなり、プロキシー+ファイアウォール+ポート6つを時間内に解除しなければいけないことも。

 

プロキシーが設定されている場合は、管理者権限を持ってる(ハッキング済みの)コンピュータでシェルl (OSに直接命令する)を立ち上げ「Overload」で攻撃させる。複数のマシンを使えば攻撃速度を上げることもできたりする。

かたやファイアーウォールは解除キーを探すことになるが、こちらは「analyze」を何度も実行するうち文字列の関係ない文字が「0」に置き換わっていく。最終的に残った文字を「solve」で打ち込めばカギが開けられる。セキュリティ的に丸裸にして管理権限も乗っ取ったあとは、「Scan」して接続してるマシンを検索し探索範囲を広げることもある。

慣れてしまえば単純作業そのもの。でも、敵もやられっぱなしじゃなくカウンターハックを仕掛けてくることもある。逆探知されてしまい「緊急リカバリーモード」なる物騒な画面が表示され、制限時間内にISPルーティングサーバーに侵入して新しいIPアドレス(インターネットでの住所)を割り当てさせろという時限爆弾的な展開には焦ったものだ。

その後もプロキシーに攻撃しかけた瞬間からカウントダウンが始まり、時間との闘いになることもたびたび。nmapでセキュリティ状況を調べ、SSHやSMTP、HTTPをクラックしていくと、残り10秒切ってる!なんてピンチもしょっちゅうだ。タイプ速度とともに、ハッキングツールは同時に2つ走らせたり、Overlordを複数のマシンから仕掛けたりとダンドリ力が求められるのだ。

カウンターハックを仕掛けられ、画面いっぱいに「WARNING」と表示。「緊急用リカバリーモード」という言葉は心臓に悪い……。

 

シナリオに沿って遊びながらネットワーク(ハッキング)の基礎が学べる本作だが、ストーリーと関係ないファイル漁りこそが本当の楽しみ。高価なツールを買うために父親に2000ドルをせがむハッカーのメール(下書きというのが切ない)を見た後、そのツールを他のマシンから無料で手に入れたり。

そうやってブラブラと探索をしているうち、思いがけず目当ての情報が手に入ることもあり、単なる技術よりも人の言動から秘密を探り出すソーシャルハック最強という真理(?)まで学習できるのだ。

上司が出て行くのを待っていたずらを仕掛けるため、やり取りしてる2人のチャットログ。ファイルから他人の人生がかいま見えて楽しい。

Steam公式サイト

Steam:Hacknet