VR空間ならではのブロック崩しが楽しめる「Cyberpong」

 「Cyberpong」というタイトル名から「PONG」を連想できれば、なかなかのゲームマニアだ。およそ45年前に登場したビデオゲーム「PONG」は、上下に動くラケットにボールを当てて返しあうだけの、今見ればシンプルな対戦ゲームだった。「Cyberpong」はラケットでボールを返すという点は同じながら、VRならではのゲームに進化している。

 ゲームをスタートすると、プレイヤーの前方に直方体の空間が現れる。プレイヤーが両手に持ったコントローラーは、VR空間ではラケットの形状に変化。手にしたラケットで直方体の空間を跳ね返るように飛ぶボールを打ち返す。

 ゲームモードはシングルプレイとマルチプレイが用意されている。シングルプレイでは、空間の奥からブロックが現れ、少しずつプレイヤーのいる方へと迫ってくる。プレイヤーはボールをラケットで打ち返し、次々と現れるブロックを壊していく。ブロックを一定距離まで接近させてしまうとゲームオーバーになる。

 ゲームのルールは、いわゆるブロック崩しに近いが、プレイ感は格段に奥深い。まずラケットがボールに当たる角度によって、ボールの弾かれる角度が変わる。また腕を振ってボールを強くヒットすると、ボールのスピードも増す。近づいてきたブロックを的確に壊せるよう、強さと角度を調整しながら打ち返していくという、体を使ったアクション性がVRならではの面白さを生んでいる。

 またブロックにも色によって特別な効果がある。緑のブロックを壊すと新たなボールが発生する。複数のブロックを同時に返すのは大変だが、多数のブロックを素早く壊すためには重要な要素になる。赤いブロックは破壊すると爆発し、周囲のブロックにもダメージを与える。水色のブロックは他のブロックよりも堅く、1発では壊せない。立体的に迫ってくるブロックに対して、どれから先に壊すかを考えるパズル的な要素もある。

 さらにプレイヤーは4種類の特殊な能力を使える。ラケットのサイズが巨大化する「BIG PADDLE」、ラケットが銃の形に変わり、レーザーを撃ってブロックを壊せる「LASER GUN」、飛んでいる全てのボールを吸い込むように手元に引き寄せて再び撃ち出す「GRAVITY GUN」、画面内のブロックを一度に吹き飛ばす「ROCKET LAUNCHER」がある。方向パッド部分の操作で、任意のタイミングで能力を発動できる。

 特殊能力はいずれも強力だが、弱点もある。「BIG PADDLE」以外の能力は、ラケットとしての能力を失ってしまう。うっかり両方を武器にしてしまうと、ボールを返せなくなってしまうので要注意。また使用回数には制限がある。紫色のブロックを壊した時に出てくる青いエネルギーボールを回収する(ラケットで触れる)ことで使用回数が増える。エネルギー切れを起こすと何もできなくなるので、これも注意が必要だ。

 マルチプレイは他のプレイヤーとの対戦モード。相手のプレイヤーが直方体のフィールドの向こう側に立ち(実際にはインターネットを通した別の場所である)、1つのボールを互いに打ち合う。ボールを返しきれずに後方の壁に当ててしまうと相手にポイントとなる。要はボールを取りこぼさずに相手に打ち返すという、「PONG」らしいルールである。

 こちらは対戦相手が必要なので今回は体験できなかったが、ラケットで強く叩くことでスピードが増したり、角度をつけて打てたりすることからも、かなり激しい勝負になりそう。インターネット越しの対戦を想定しているはずだが、本当に向かい合った空間で対戦できればもっと面白そうだ。

 このほか、プレイヤーキャラクターはパドルの形が異なるものが用意されている。プレイ感がかなり変化するので、これだけでもゲームが単調にならない。VR空間でのブロック崩しゲームは比較的メジャーなジャンルではあるが、本作はサイバーなVR空間の描写も美しく、マルチプレイも搭載するなど、全体の完成度が高い。ルールも単純なので、VR初心者向けの体験コンテンツとしても優れた作品だ。