ゾンビ達が四方八方から襲い掛かるVRガンシューティング「The Brookhaven Experiment」

 欧米では今も昔もゾンビゲームが大人気で、襲い掛かってくるゾンビを相手に銃で戦うゲームは星の数ほど存在する。「The Brookhaven Experiment」もその中の1つ……と言ってしまうのは少々乱暴に過ぎる。本作はVRの特性を活かし、ホラー的な怖さが引き立つ作品となっている。

 ゲームの舞台は、とある街中にある小さな公園。多数の遊具があるわけではなく、ちょっとした広場と言う方が近いかもしれない。あいにく時間は真夜中で、周囲には明かりになるようなものもないので、周囲の状況はよくわからない。主人公、すなわちプレイヤーは、真っ暗な公園の真ん中に1人でたたずんでいる。

 ゲームが始まると、公園の外からゾンビ達がゆっくりと近寄ってくる。公園の外というのは、前だけでなく、右も左も後ろもだ。360度あらゆる方向から、主人公めがけてゾンビ達が忍び寄る。

 公園内は真っ暗なので、そのままでは近寄るゾンビはほとんど見えない。プレイヤーは懐中電灯を使って、周囲をあちこち照らして近寄るゾンビを探す。懐中電灯は左手に持ったコントローラーで操作する。操作と言っても、手に持ったコントローラーを見たい方向に向けるだけ。現実の懐中電灯と同じだ。

 ゾンビを発見したら、右手の銃で撃退する。銃は右手のコントローラーで操作し、ゾンビに向けてトリガーを引けば弾が発射される。こちらも説明不要なほど直感的だ。もっとも、操作がわかりやすいことと、銃弾がゾンビに当たるかどうかは別。きちんと狙って撃たなければならない。

 序盤のステージに登場するゾンビは、基本的に足が遅く、ただ真っ直ぐこちらに向かってくる。落ち着いて何発か銃弾を浴びせれば撃退可能だ。余裕があれば、頭を狙って撃つとより少ない弾数で倒せる。

 足の遅いゾンビを倒すのはそう難しいことではない。問題は360度どこからでもゾンビが現れるということだ。左にゾンビを発見して銃撃して倒したと思ったら、右にはもっと近いところに別のゾンビが居て、死角から噛みつかれる可能性もある。また中にはこちらに気づくと急ぎ足で近寄ってくるゾンビもいる。見つけた順番ではなく、危ないゾンビを先に倒していく冷静さも必要だ。

 他にも危険はある。倒したと思ったゾンビが実は倒しきれておらず、這いずりながら近寄ってきて、いきなり足を掴まれることもある。視界はほぼ懐中電灯に頼っているので、周囲を確認したつもりが足元の辺りは見ていなかったということが多い。

 さらに怖いのは弾切れ。ゾンビ1体を倒すには数発の銃弾が必要だが、2体、3体と連続で相手をすることもある。冷静さを欠いて狙いを外すこともあるだろう。対して、武器のピストルに込められる弾数は決まっている。弾を撃ち尽くしたら、コントローラーにあるボタンを押してリロードできるが、1、2秒ほどの待ち時間が発生する。この僅かな間にもゾンビはこちらに迫ってくる。

 本作の素晴らしいところは、序盤のゾンビがとてもゆっくりと近寄ってくるところだ。ゲームに不慣れなうちはそうでないとやられてしまう、というゲーム的な理由ももちろんある。だがそれ以上に、真っ暗闇の中でゾンビがどこから何体近寄ってくるのかがわからないという怖さが、じっくり、ゆっくりと時間をかけてプレイヤーの心に迫ってくるのである。緊張感がどんどん高まる中、見落としたゾンビにいきなり襲われ、ヘッドフォンからいきなり大きな音がする。混乱して何の音がしていたのかも覚えていない。

 筆者は昔、ガンシューティングをやり込んでいた時期があったので、この手のゲームには自信がある。懐中電灯で素早く索敵、ゾンビを発見したら頭に1発撃ち込み、落ち着いてリロードしながらまた索敵。ゾンビに近寄らせることもなく華麗に撃退する自分に酔いしれる気持ちよさもある。

 が、ゾンビの数が増えたり、ちょっとした見落としをしたりして間近まで接近を許すと、もう大慌てである。何せゾンビがリアルで気持ち悪い。記事の画像をご覧いただければある程度は伝わると思うが、実際はこの程度の気持ち悪さではない。これほどリアルに描かれたゾンビが、現実感のある立体視でもって襲い掛かってくるのだから。

 しかしこの主人公、何を好き好んで広々とした公園のど真ん中に立ってゾンビを撃ちまくっているのか。プレイヤーとしては「こんなところに突っ立っているんじゃない! さっさと逃げるぞ!」と言いたくなる状況である。……そう言いたくなるくらい、リアルな怖さがあるゲームなのである。