80PLUSで消費電力はどう変化するのか? STANDARDからTITANIUMの電源でチェック! Text by 林 佑樹
自作PCにおいて、もっとも重要なパーツである電源。ひと昔前は、テキトーな電源を選ぶと、起動をしても負荷をかけるとシャットダウンするなどのイベントが頻繁に起きていたが、最近はだいぶいい加減に電源を選んでもそんなイベントとは遭遇しにくくなっている。高負荷時には不具合が起きることもあるので、ある程度の負荷までは、だいたいの電源はOKといった状況だろうか。
電源選びの際、コンデンサのメーカーや基板構成、各種出力をチェックする。さらにすっかり定着したものとしては80PLUSの規格がある。電力変換効率の性能を示したもので、STANDARD、BRONZE、SILVER、GOLD、PLATINUM、TITANIUMの6段階が用意されている。
いずれも80%以上の電気変換効率を満たしているため、80PLUS規格に準拠していない電源と比較すると、発熱の減少による各部への負荷減少に加えて、静音化、省エネ化が見込める。いまでは80PLUSの表記のないものを見つけるほうが難しい状況だ。なおグラフィックボード用の外部電源については、外部電源を必要とするグラフィックボードが増えたことで、地雷に遭遇する確率はかなり低くなっている。
さて、80PLUSの6グレード、それぞれの最低基準を見てみよう。下記表のようになっており、グレードが高くなるほど、電気変換効率がよくなる。BRONZEを除いて、出力50%がもっとも変換効率が高くなっており、また電源によって変換効率に差が生まれているのだが、正直なところどのグレードがベストなのか。電源選びとしては、システム全体の最大消費電力に対して、50~70%くらいが理想とされている。これは余裕を持たせた状態でPCを運用するためで、たとえば、システムの最大消費電力が300Wであれば、600Wあたりの電源を選ぶといった具合だ。
そんなわけで全グレードを揃えてテストをしてみた。なるべく統一した条件でとしたかったので、電源は750Wを基準としている。GOLDやPLATINUMなどは、それ以下では少ないのが原因。またTITANIUMはハイエンド用というのもあり、1500Wのものとなっている。システム側は以下の通り。
・検証PCの構成
マザーボード | ASRock H87 Pro4 |
CPU | Core i7-4790 |
メモリ | Crucial CT51264BA160BJ 4GB×2 |
GPU | NVIDIA GeForce 760 |
SSD | CFD CSSD-S6T128NHG6Q |
ベースはGALLERIA XT-Aで、計測をしやすいように一部構成を変更した
用意した電源の大半が750Wに対して、システムは350Wほどで、やや消費電力は少ないのだが、なるべくありそうな環境ということで選択した形だ。用意した電源は以下になる。また消費電力計測には、編集部に転がっていたラトックシステムREX-BTWATTCH1を使用している。同製品はスマホに専用アプリをインストールすることで、Bluetooth経由で消費電力などの諸情報を記録できるというもの。Bluetooth接続していない状態でもログを保存しているため、長期的な消費電力の把握にもいい。
・検証に使用した電源ユニット
STANDARD | KEIAN Gori MAX2(650W) |
BRONZE | AcBel iPower 85(750W) |
SILVER | SILVERSTONE SST-ST75F-P(750W) |
GOLD | Seasonic X-SERISE SS-750KM3(750W) |
PLATINUM | ENERMAX Platimax EPM750AWT(750W) |
TITANIUM | Corsair AX1500i(1500W) |
電源はなるべくグレードが豊富なゾーンを探した結果、750Wに着地した。STANDARDとTITANIUMのみ異なるが、参考にはなるだろう。というか、STANDARDは探すのが難しいくらいなので、本当に参考値レベルの認識でいい
チェック中の様子。REX-BTWATTCH1は、スマホでログを取れるのがやはり便利だった
チェックはアイドルを起点として、いくつかの負荷シーンを用意した。使用したベンチマークは、Cinebench、ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編、3DMARK、FurMark、Prime95。ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編は、最高品質・フルスクリーン(1920×1080ドット)、3DMARKはFireStrike Extremeを負荷チェックとして選んでいる。またあまり現実的な負荷ではないが、CPU・GPUをほぼ100%使用した状況を再現するために、Prime95とFurMarkを同時に実行もしている。
用意した電源を入れ替えつつ、各種チェックの結果をまとめた表。それぞれ10分間実行して、その平均値を掲載している
STANDARDは、全域において変換効率80%なので基準といえるだろう。(ただ、3DMARK以降のチェックでは突然のリブートがあったのだが)。まずFurMark+Prime95はSTANDARDは355W、それに対してPLATINUMは281Wで、74Wの差が生じている。この結果だけを見ると、PLATINUMを選ぶべきとなるが、市場を見るとGOLDがもっとも多い。GOLDとPLATINUMはほぼ似た結果で、価格を考えるとGOLDを選べばいいといった判断を下せる。もちろん、自作PCユーザーの多くが持つ「基本的に一番上のパーツ」気分であれば、PLATINUMを選ぶべき。
意外と好成績だったのはBRONZE。AcBel iPower85は、GALLERIAにも搭載されているものだが、250Wあたりまでの負荷ならば、GOLDと大差がない。最小限に近い環境+補助電源ナシのグラフィックスボード構成であれば、アリな選択になる。TITANIUMについては、ハイエンド向けであり、ほとんどの自作PC構成において、あまり縁がないものなので、考える必要はない……というか、そういったハイエンドな構成になった場合、必然的に着地するので、そのときに認識するくらいでもいい。
とまあ、消費電力ベースで見ると高負荷でもない限り、大きな消費電力差は生まれない結果となったが、電気変換効率が高いほど、上記したように発熱が低く、安定動作を期待できる。結果からいえることは、電源を選ぶ場合、GOLDを選んでおけばOK。迷ったら、GOLDに対応した電源からチェックしてみよう。
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