プロフォトグラファーが体験 - BenQのフォトグラファー向けカラーマネジメントディスプレイ「SW2700PT」小澤忠恭氏のスペシャルインタビュー

── 普段、レタッチで使用しているディスプレイについて教えてください。

EIZOとMacで、ともに27インチのディスプレイを使っており、モニターキャリブレーションツール「Spyder」を使用してカラーマネジメントを行っています。リバーサルフィルムで撮影していた時代は原版があるからよかったのですが、デジタルデータの場合はどこにも正解がありません。ですから、紙媒体の仕事では必ずプリントを色見本として付けています。このプリントを作る際に、ディスプレイの表示とプリントが同じ色で出てくることがとても重要で、普段の環境ではキャリブレーションをしたディスプレイを微調整し、プリントと差が出ないようにしています。敢えてプリンターは出荷時の設定から手を加えず、ディスプレイの微調整のみで対応できるようにしているんです。もちろん、展示用の作品制作においても、カラーマネジメントされたディスプレイは必須ですね。

小澤忠恭氏スペシャルインタビュー

── 2台のディスプレイの使い分け方法は?

レタッチをするディスプレイはインターネットに接続せず、スタンドアローンで使用するようにしています。つまり「確認機」ですね。これがインターネットに繋がっていると「窓」になってしまいます。ちょっとしたこだわりでしょうか。

── SW2700PTを使ってみての最初の印象はいかがでしたか?

ディスプレイに求めるのは「細密さ」「ディテール表現」「眼にやさしいか」の3つなんです。例えばこの風景写真ですが、雲のディテールはしっかりと出ていますし、ハイライトの中でももっとも明るいハイエストライトのある木の幹が白飛びせずに出ています。もちろんディープシャドウも潰れていない。それらが見えていないことにはレタッチのしようがないですよね。

小澤忠恭氏の作品

── 画素密度109ppi、14-bit 3D LUTによる厳密な色再現が特徴です。

「3D LUT」というのは、つまり広大な色情報からより最適な色情報を使うということですから、ディープシャドウからハイエストライトまでしっかり出てくれるのだと思います。「眼にやさしいか」というのは、何もブルーライトなどの話しではなくて、見えづらいと食い入るように画面を見てしまい疲れてしまいます。そういうことが必要ないディスプレイだと感じました。

── ハードウェアキャリブレーションに対応しています。

キャリブレーション前にプリントをしたのですが、もう何も問題ないレベルで、工場出荷の段階でかなり高精度で調整されていると感じました。ハードウェアキャリブレーション後は、画面モードを「校正」にして「カラー調整→色相」で微調整が行えます。僕の場合はプリントとの差異をなくすことが大前提ですから、今回も長年のクセのようなものに合わせるために、わずかに赤みを抜くような調整をしました。

小澤忠恭氏スペシャルインタビュー

── 独自の設定を記憶させ、OSDコントローラーでワンタッチで切り替えることも可能です。

まだ設定は登録していないですが、例えばペーパーの種類でも仕上げ方は変わるので、さまざまな設定を登録しておくのはいいと思います。先ほども触れたハイエストライトの部分は、ペーパーの色がそのまま反映される部分でもあるわけです。また、モノクロモードにもワンタッチで切り替えられますが、モノクロモードはとてもリッチな階調表現で素晴らしいと思います。これはまさに「3D LUT」の恩恵でしょうね。また、モノトーンというのは白黒のことだけではなく、単色であればモノトーンですから、さまざまな色相のモノトーン用に設定を作るのもいいかもしれません。

小澤忠恭氏スペシャルインタビュー

── エルゴノミクスデザイン(高さ調整、ピボットなど)の使用感はいかがでしょう。

縦位置の写真をレタッチする際には、ピボットで簡単にディスプレイを回転できるのはいいですよね。最近はインターネットに対応するために横位置の写真が主流となっていますが、写真家である以上、縦位置というのも大切にしたいものです。

── ブルーライト軽減モードも搭載されています。

レタッチをすると、僕は平気で徹夜をするんです。驚くほど長時間作業しますね。疲れたときはFacebookなどで気分転換をします。本当は散歩をしたりしたいけれど、眼を一度屋外の光に慣れさせてしまうと、休憩をする前にレタッチした写真と差が出てきてしまう恐れがあるので、インターネットやSNSを楽しむようにしているんです。そういうときだけブルーライト軽減モードにするのも有効でしょうね。優れた写真は少々色が変わったところで評価が覆るようなものではないと思うけれど、作業場は光の影響を受けづらい北側の部屋にしたり、一定のこだわりはあります。過去、偉大なアーティストのアトリエはみんな北側だと言うじゃないですか。

小澤忠恭氏スペシャルインタビュー

── SW2700PTはコストパフォーマンスに優れているディスプレイです。

カメラにしてもディスプレイにしても、進化すれば使い手が望まなくても新機能が付いてきます。これをいかに利用し、創作の幅を出すか、ですよね。僕自身、ディスプレイはここのところ買い換えていなかったので、SW2700PTを使うのはとても良い機会でした。やはり進化をするものですね。この高性能で10万円を切るというのは大変優れていると思います。デジタル時代においては、ディスプレイは2台目のカメラ、というくらいの存在だと思うんです。黒潰れや白飛びがなく、見えなければいけない部分がしっかりと見えると、ディスプレイで見返した時に撮影の感動を再び味わうことができます。SW2700PTは、写真の編集を楽しくしてくれるディスプレイです。

小澤忠恭 作品集

小澤忠恭氏

小澤忠恭

写真家、日本大学芸術学部映画学科中退。1981年 「僕のイスタンブル」「ブエノスアイレスの風」でデビュー。以後、「作家の貌」(さっかのかお)などの人物写真、「MOMOCO写真館」などのアイドル写真、旅や料理の写真で、雑誌、CMと幅広く活躍。ヌード、ポートレイトで定評を得る。
現在、 週刊ポストにシリーズ《日本の重心を巡る》を 連載中。

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