ルームスケールをもっと広く感じる仕組み「redirected-walking」をNVIDIA等が研究中、知覚できない瞬間を利用して錯覚を作る

 2018年5月26日から29日、NVIDIAは技術カンファレンス「GTC 2018」を開催した。同カンファレンスで、NVIDIAはAdobe、ストーニーブルック大学と共同でVRの「redirected-walking」に関する研究を発表した。海外ニュースサイトの「Road to VR」が報じた。

・Researchers Exploit Natural Quirk of Human Vision for Hidden Redirected Walking in VR
https://www.roadtovr.com/researchers-exploit-natural-quirk-of-human-vision-saccade-hidden-redirected-walking-vr-gtc-2018/

 redirected-walkingはルームスケールVRにおける技術で、体験者を実際よりも広い空間を移動していると錯覚させる。これまで様々なアプローチが行われており、国内でも東京大学が「無限回廊(Unlimited Corridor)」として発表している。

 仕組みとしては、現実では斜めに歩いているのにVR内では真っ直ぐ歩いているように見せかけるのが基本だ。今回の発表でも、体験者の見えている景色を少しずつずらすことで無意識に斜めに歩かせている。

 ユニークな点は、「saccade」(サッカード)を利用することだ。サッカードとは視点を動かす際に眼球が素早く動く現象のこと。サッカードの際に生じる、わずかな間の見えていない時間を使って錯覚を起こす。瞳の動きを検出する必要があるため、この仕組みを利用するにはアイトラッキング機能が必須だ。

 人の目は、ゆっくり動いているものを追っている時以外は視点を動かす際に眼球を素早く動かしている。その際、数十ミリ秒というわずかな時間ではあるが、はっきりと対象を見えていない瞬間がある。この時間を使い、VR内の景色を少しずらす。人は見えている情報を元に体を動かすため、無意識に斜めに歩いてしまう。

 1回でずらす範囲はわずかだが、繰り返すことで本人はまっすぐ歩いているつもりでも実際は壁を避けて曲がりながら歩いている、という状態を作り出せる。仮想的にルームスケールの範囲を広げることができるというわけだ。

 誘導する経路はGPUがリアルタイムで計算する。そのため、応用すればエリア内にある家具などの障害物を避けたり、後からエリア内に入ってきたものを避けたりといったこともできるようになるという。

 まだ一般的とは言い難いアイトラッキングが必要なものの、体験者が機能を一切意識せずに利用できる点、コンテンツの種類を問わず利用できる点が魅力。まだ研究段階だが、実用化すれば効果はかなり期待できそうだ。

Reported by 宮川泰明(SPOOL