【VRパラダイス ゲームレビュー】
操作は目線だけ。謎の少女と一緒に挑むVR謎解きアドベンチャー
「星の欠片の物語、ひとかけら版」

Reported by 石田賀津男

 VRゲームにおいて、仮想空間があたかも現実空間のように感じる“没入感”は、ゲームの面白さを作り出すために欠かせない要素だ。そのためには、プレイヤーが仮想空間を歩いて移動したり、置かれているものに触れられたりという、仮想空間に触れるかのようなインタラクティブ性が重要になる。

 ……というのは一般論だと思うが、今回ご紹介する「星の欠片の物語、ひとかけら版」は、あえて違うアプローチを取った作品となっている。プレイヤーは歩かず椅子に座ったままで、コントローラーを持つことすらなく、目線だけでゲームをプレイする。それでいて、実にVRらしさを感じられる作品となっている。

 ゲーム内容について語る前に、1つお伝えしておきたい。本作の「星の欠片の物語、ひとかけら版」というタイトルを見て「体験版かな?」と思い、2,800円という価格を見せられて困惑する方が多いと思う。実際のところ、本作は最後までプレイするのに数時間はかかるボリュームがあり、断じて体験版ではないのでご安心いただきたい。また本作はPlayStation VRで発売された後、SteamにてHTC VIVE向けに発売された。今回はHTC VIVEでプレイしている。

 本作は、小さな星に取り残されている謎の少女と、力を合わせて謎を解いていくアドベンチャーゲームだ。ゲームが始まると、プレイヤーは小さな星に現れ、銀髪の少女に話しかけられる。

 彼女はたどり着いた星が何らかの理由で砕けてしまい、今いる星である“星の核”に取り残されている。元々の星には何かの力があったのだが、砕けたために失われた上、彼女の知識や知恵も砕けた星のかけらの方に持っていかれている。そのため、まずは“星の核”の周囲を回っている“星のかけら”を元の星に戻したい。しかし、知識や知恵を失った彼女には、その方法がわからない。

 プレイヤーは「別の世界を覗き見る装置」で、たまたま別世界とつながっている。彼女の姿を見たり、声を聞いたりはできるが、プレイヤーの方から話しかけたり触れたりはできない。プレイヤーができるのは、見ることだけ。

 そこで少女は、プレイヤーに“フォーカスロック”という力を与えてくれる。プレイヤーが特定のオブジェクトを一定時間注視すると、それが少女に伝わり、少女がオブジェクトを調べてくれる。どうすれば“星のかけら”を“星の核”に戻せるのかをプレイヤーが考えて、少女に目線で指示していく。逆に言えば、プレイヤーが少女に伝えられるのは、何を見たかという情報だけだ。

プレイヤーは「フォーカスロック」を使って少女に意思を伝える

 “フォーカスロック”が使える場面では、画面の中央に赤いターゲットが表示される。例えば、落ちている箱状のオブジェクトにターゲットを合わせる(注視する)と、少女はその箱を持ってプレイヤーの前に来てくれる。箱に何か仕掛けがないかじっくり見ることもできるし、その状態で他のオブジェクトに空いている穴を注視すれば、箱を持った少女が穴に箱を入れる、といったこともできる。

 あまり仕掛けを具体的に語るとゲームの面白さを損なうので控えるが、特定の手順、場所、タイミングなどが正しければ、仕掛けが次へとつながっていく。もし仕掛けと関係ないオブジェクトを注視したり、正しい仕掛けを見つけるのに時間がかかったとしても、ゲームオーバーに至るようなペナルティはない。

 オブジェクトの数はそれほど多いわけではないのだが、ノーヒントで解くのは難しい。ヒントは星のあちこちに落ちているフォルダ(文字などが書かれたファイル)に書かれている。落ちているフォルダを注視すれば、少女が持ってきて目の前で開いてくれる。フォルダの文字は日本語で書かれており、異世界の住人である少女には読めないが、プレイヤーにはわかるという設定だ。

 本作はゲーム的観点からは、ひたすら謎解きをやっていくことになる。自分が直接手を使わないで、あくまでも少女にやってもらうというのは、脱出ゲームのようでありながら、ある種の箱庭ゲームのようでもある。

 そして見逃せないのが、少女というキャラクターだ。プレイヤーの視線に従い、狭い星の中をちょこちょこと走り回る姿を見ているだけで結構楽しい。見た目は少女なのに、喋り方がおばあちゃんのようで、ちょっと間の抜けた感じもあり(本人は知識や知恵が失わせているせいだと主張する)、かなりの癒し系キャラクターである。

口癖は「のじゃ」

 ゲーム的に言えば、プレイヤーが直接手を使えないことや、少女のリアクションがいちいちスローペースだったりすることで、1つ調べるだけでも時間が取られてしまうことをストレスに感じるかもしれない。特に次の仕掛けの見当が付かない時は、あれこれ試したいのに少女の動きがのんびりしていて、もどかしく感じるのは事実だ。

 それでも、本作の魅力の半分ほどは、この癒し系少女が持っていると思う。少女とコミュニケーションを取る(といってもプレイヤーは喋れないので、少女が一方的に喋る形なのだが)間も、さまざまな表情やしぐさを見せてくれる。自分が歩き回れず、何にも触れられないからこそ、手の届く距離にいる少女の存在感がより強く立ち上がる。自分の没入感ではなく、少女の実体感を高めるという方向性だ。これはこれでとてもVRらしい作品になっている。

 本作は座ったままプレイはできるが、システム的にはルームスケールに対応していて、ある程度は移動が可能。少し移動しないと視線が通らない場所にオブジェクトがあったりすることもあるので、キャスター付きの椅子に座りながらプレイすると少々の移動や回転もしやすく快適だ。なお近くに来た少女を好きな角度から眺めることは可能だが、接触するほど近づいたり、特定の角度から見ようとすると、映像にノイズが走って見えなくなる。

 最後にストーリーについて。冒頭でも書いたように、「ひとかけら版」というタイトル名は「ちょっとだけ」という意味ではなく、本作のストーリーの中できちんと意味がある。しかし最後までプレイしてみると、決してボリューム不足と感じる内容ではなかったが、物語にはまだ続きがあるかのような終わり方になっている。今後の展開はまだ明らかにされていないようだが、ぜひとも続編に期待したい。

・星の欠片の物語、ひとかけら版
https://anos.jp/vr/ (公式サイト)
https://store.steampowered.com/app/930850/Tale_of_the_Fragmented_Star_Single_Fragment_Version/ (Steam)