「100年後のeスポーツ界を見据えて文化を創る」~第1回全国高校eスポーツ選手権 記者発表会レポート

 11月8日(木)、東京池袋のeスポーツ施設「LFS 池袋」にて「第1回全国高校eスポーツ選手権」の記者発表会が行われた。

 全国高校eスポーツ選手権はその名の通り日本全国の高校生を対象としたeスポーツ競技会。日本全国から名乗りを上げた高校生たちがeスポーツで勝負を競う日本で初めてのイベントになる。主催は毎日新聞社でサードウェーブが共催を行っている。

 記者会見ではまず、毎日新聞社代表取締役社長の丸山昌宏氏が挨拶した。丸山氏は「毎日新聞社は今年で創刊146年を迎える」とまずその歴史に触れ、同社がこれまで選抜高校野球や高校駅伝、学生音楽コンクールなどスポーツや芸術、文化などさまざまな分野で若者を応援してきたと述べ、「一方で歴史や伝統を受け継ぎながら新しい文化を発信するのも使命」と語り、今回、高校生向けのeスポーツ大会を設立したという。

 eスポーツへの取り組みは若手社員のアイデアから始まった。社員がeスポーツ大会の運営にボランティアで参加した際、選手たちの競技にかける真摯な姿勢にうたれ「これをなんとか高校生にも広められないか」という思いが涌いてきたという。

 ちょうどその頃、同じような思いを抱いていたサードウェーブとの出会いがあり、パートナーとして本大会を開催することになったとした。

 「そうはいっても私自身どのくらいeスポーツを知っているかと言われればほとんどわかっていません」とも語り、「実際にeスポーツで使われるゲームもプレイしたがうまくは遊べなかった。しかし、実際にプレイしたことで仲間と遊ぶ楽しさはわかった」という。

 丸山氏は最後に「eスポーツにはさまざまな意見があるが、我々はこれを新しい文化として発展させたい。高校生がeスポーツを通じて仲間との絆を深め、努力し合う姿を応援していきた」として挨拶を終えた。

 続いて、サードウェーブの代表取締役社長 尾崎健介氏が挨拶に立ち「eスポーツは競技。娯楽ではないということをまず是非認識していただきたい」と力強く切り出した。

 「どんな競技にも娯楽という部分と競技という部分がある。真剣に勝敗を分ける競技はチームワークも努力も必要になり、フェアに戦える舞台も必要」と述べ、「娯楽と競技の違いを認識することで、eスポーツそのものの価値がわかってくる」と語った。

 尾崎氏は「今回の主役は選手として戦う高校生」であることを強く強調し、選手たちが最大限にパフォーマンスを発揮し、頑張れるような環境を構築する手伝いをしたいという。

 また、最後に冒頭で丸山氏が語った「文化」について「最低でも毎日新聞社と100年はやっていきたい」と語り、eスポーツを新しい文化として定着させるには長い期間が必要であることを示して挨拶を終えた。

 引き続き大会概要について毎日新聞社 eスポーツ担当の田邊真以子氏が説明した。大会でプレイされるゲームは「リーグ・オブ・レジェンド(以下LoL)」および「ロケットリーグ」の2つ。LoLは世界中で認められたeスポーツタイトルの1つであり、競技性が高い。また仲間との連携も重要であること。ロケットリーグはとにかくシンプルなルールと、eスポーツを初めて観戦する人でも楽しめることから競技種目に選ばれた。

 競技日程は12月23日(日)~26日(水)までの冬休み期間にオンラインでの予選が行われ、そこで勝ち残ったチームが翌年3月23日(土)、24日(日)に幕張メッセで行われる決勝大会に進出する。予選、決勝ともにライブ配信も行われる。

 優勝賞品は2泊3日の韓国eスポーツ旅行で、優勝チーム全員が招待される。eスポーツ先進国の韓国で、現地のeスポーツ専用施設の見学など貴重な機会が得られる。

・第1回全国高校eスポーツ選手権
https://www.ajhs-esports.jp/

 現在大会にエントリーしているチームは80チーム。内訳はLoLが58チーム、ロケットリーグが22チームとなっている。全国の高校からeスポーツ部やeスポーツ同好会などはもちろんパソコン部やIT部など日頃からパソコンに親しんでいる部活動などが応募してきているという。

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 しかし、eスポーツの選手を同じ高校から集めるのが意外と大変であるという。元々ネット上で行われる競技であるため、お互いの出身にかかわらずプレイしていることが多く、同じ学校でプレイしているプレイヤーを知らないケースが多いそうだ。そのため、大会に出るために様々なアプローチで声をかけ、仲間を見つけながらチームを作っているところが多いという。大会があるからこそ新たなコミュニケーションが発生したといえる。

 続いて、サードウェーブが実施している「eスポーツ発足支援プログラム」について同社取締役副社長の榎本一郎氏が説明した。

 同プログラムは全国高校eスポーツ選手権開催アナウンスと同時に発表されたもの。プログラムの内容は大会へのエントリーを前提に、先着100校、最大5台ずつのパソコンを3年間無償レンタルする。本記事を執筆している11月8日時点では56校が申し込みを行っている。締め切りは11月16日(金)23時59分まで。

・eスポーツ発足支援プログラム
https://www.dospara.co.jp/5gamepc/cts_esports_shien

 貸し出ししているパソコンはゲーミングパソコン「GALLERIA GAMEMASTER」シリーズのデスクトップ×3台とノートPC×2台。通常店頭で販売しているものと同じモデルが提供される。デスクトップPC用のディスプレイも貸し出しされる。

 しかし、「パソコンをあげるのは簡単だ」と榎本氏は語る。その裏には高校で新しい活動を始めて部活や同好会を立ち上げる難しさがあるという。

 実際多くの学生は高校で既存の部活に入るのがほとんどで自分で部活動を立ち上げたという経験を持つ人は少ない。これは教師も同じで新たに部活動を立ち上げ顧問となる教師というのは珍しい。このため、発表以来毎日のように何らかの問い合わせが来たという。

 それでも現時点で56校からの申し込みがあり、機材を提供しているが、榎本氏は「子供たちが学校に部活動を作るというところから文化が始まっている。また、先生方のご尽力も大きい。学生たちの熱い思いを受け止め、一緒に部活を作り上げてきた先生に感謝したい」とし、困難ながらも活動を開始した学生や教師らに感謝を述べた。

 大会で使用される応援ソング「ナミタチヌ」も披露された。作詞作曲に当たったのはTVアニメ「ハイキュー !! 」や銀魂などにも楽曲を提供していることでおなじみの「BURNOUT SYNDROMES」。11月12日(月)よりBURNOUT SYNDROMESのYouTube公式チャンネルで一部公開が開始され、12月に楽曲配信が開始される予定。

 会場にはメンバーである熊谷和海氏、石川大裕氏、廣瀬拓哉氏の3名が登場し、今回の曲への思いを語った。

写真は左から廣瀬拓哉氏、熊谷和海氏、石川大裕氏

 3人は曲を作るにあたり実際にeスポーツに参加している大学生らにインタビューを行い、それらから得られた着想を元に歌詞を作っていったという。イメージは「高校生プレイヤーがゲームという電子の深海で力を養い、日の当たるステージに出てくる」というストーリーだという。

 作詞を担当した石川氏は「この曲をゲームをイメージした歌にするか迷っていたが、結局ゲームというよりも道を究める人たち、武道家としての意識を歌うような歌詞をイメージして作った。それは正しかったと思う」と述べた。波風立てずに生きるのではなく、養った情熱を武器に戦う姿をイメージしていることから「ナミタチヌ」というタイトルになった。

 3人は元々ゲーマーでもあり、自分たちが高校生のころに大会があったら「絶対に出場していたし、参加するためにメンバーが増えていたかも」と冗談交じりながら半ば本気で答えていた。

 なお、現在「ナミタチヌ」を本当の意味で「完成させる」ために高校生のコーラス参加を募集している。この曲を完成させるために本大会に出場する現役高校生の声を使いたいということで、急遽募集が開始された。募集期間は11月8日(木)から11月18日(日)までの短い期間で詳細は下記のとおり。レコーディングは11月下旬を予定している。

 会見終了後に行われた質疑応答では、丸山氏に「選抜高校野球の甲子園をイメージするような展開を考えているのか?」と質問がされ、同氏は「イメージとしては同じイメージ。初めての挑戦でもある。先ほど尾崎氏に100年続けたいといわれたが、とにかくやって、声を聞きながら育てていきたい。高校生が一つのゴールを目指すところは野球などと変わらない」などと答えた。最後に「100年後にはどのような大会になっていてもらいたいか?」と問われると「選抜のように誰が聞いてもわかる大会になってほしい」と大会への希望を述べた。