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ゲームが生み出す一歩前へ出る力-愛知県立 城北つばさ高等学校昼間部 eスポーツ同好会~第1回全国高校eスポーツ選手権出場校インタビュー【その3】

■第1回全国高校eスポーツ選手権

 高校生対象に特化した初めてのeスポーツ大会『第1回全国高校eスポーツ選手権』が毎日新聞社主催、サードウェーブ共催で開催される。

 ゲームタイトルは5対5で行う対戦型PCゲーム「リーグ・オブ・レジェンド(LoL、ロル)」と、3対3で行う対戦アクション「ロケットリーグ」。LoLでは93チーム、ロケットリーグでは60チームが予選に出場する。

 予選の日程は2018年12月23日(日)~26日(水)、試合はインターネット上で開催される。本戦は2019年3月23日(土)~24日(日)、幕張メッセで開催される予定だ。

 優勝チームはメンバー全員が『2泊3日の韓国eスポーツ体験旅行』に招待され、「eスポーツ先進国」である韓国で、プロリーグの試合を観戦できる。

 PCショップ「ドスパラ」を展開し、ハイスペック ゲーミングPCブランド「GALLERIA(ガレリア)」をリリースしているサードウェーブが「全国高校eスポーツ選手権』」を毎日新聞社と立ち上げた理由は、全世界で巻き起こっている「eスポーツ」のムーブメントを日本にも広く浸透させ、新時代を象徴する「新しい文化」として育み、発展させていくため。

 サードウェーブでは大会開催に併せて「eスポーツ部発足支援プログラム」を展開した。各高校に「ガレリア」とBenQのディスプレイを最大5台までレンタルし、eスポーツを楽しむ高校生の裾野拡大を後押ししている。

 今回、同選手権にエントリーしたいくつかの学校を訪問し、プレイヤーである高校生たちと顧問の先生から現状について話をうかがった。

■愛知県立 城北つばさ高等学校昼間部 eスポーツ同好会インタビュー

(目次)
■「生徒の居場所」としてのeスポーツ同好会
■先生手作りのプリントでポイントを押さえる
■今大会での目標は「とりあえず一勝」
■ゲームでのコミュニケーションから大きな声が出せるように
■チームプレイが生み出す「前へ出る力」

■「生徒の居場所」としてのeスポーツ同好会

 城北つばさ高等学校は2017年4月に開校したばかり。旧愛知県立愛知工業高等学校の校地を再利用して開校した学校で、「単位制による定時制課程」をとっている。

 通常の定時制の高校は4年間で卒業するのが一般的だが、「単位制かつ定時制」の場合は、1日4時間の授業のあと、午後の「選択の時間」の授業を積極的に受講すれば、卒業に必要な74単位を履修取得することで、3年間での卒業が可能になる。

 eスポーツ同好会は2018年9月にスタートした。言い出したのは実は校長の金子悟先生だった。「夏休みに中学校訪問をしていまして、ある中学校の校長先生とざっくばらんに色々な話をしていたんです。色々なアイディアを持っている方なんですが、その先生が、『最近注目が集まっているので、高校でeスポーツをやられると面白いんじゃないですか』と言ってくれたのがきっかけです」。

愛知県立 城北つばさ高等学校の金子悟校長先生

 金子校長は学校に戻ったあと、昼休みの時間に早速、職員室にいた理科の鈴木先生や情報科目の先生たちに「eスポーツというのがあるみたいだけど、部活にしたら面白くない?」と声をかけた。最初は「eスポーツ」にこだわらず「コンピュータゲーム部」でも良いのではないかと思っていたという。

eスポーツ同好会顧問の鈴木佑哉先生

 後に顧問となった鈴木佑哉先生は31歳と若いがゲームにはほとんど興味はなく、特にPCを使うオンラインゲームは1回もプレイしたことがなかった。だが、確かに面白そうだし我が校の生徒にも相性が良さそうという面では、すぐに共感したという。だが部活動で行うとなると、設備面がネックになる。

 そのとき、インターネットでたまたま見つけたのが今回の『第1回全国高校eスポーツ選手権』とサードウェーブの取り組みだった。「何より5台パソコンを借りられるというのが魅力で、すぐに飛びつきました」。

 金子校長は「eスポーツは生徒の居場所にもなりそうだ」と思ったのだという。

「生徒たちは部活動を一生懸命にやれてきた子供ばかりではないんです。むしろそうではない大人しい子供達、自分のやりがいを従来の学校の活動のなかでは発揮できにくい子たちも多いんです。我が校の生徒たちにゲーム好きな子たちが多いのは知ってましたので、学校に残って、友達と一緒にゲームをやれれば、それだけでも良い居場所になるんじゃないかなと思いました」

 そのような居場所を学校が提供するのはとても大切だという。

「学校は勉強だけの場ではないんです。勉強以外の場所で見せる彼らの表情のほうが良い場合があります。事実、今回、eスポーツ同好会のキャプテンになった子は――キャプテンになった瞬間に、ころっと変わりました。授業中の声も大きくなりましたし、挨拶もちゃんとできるようになりました。もともと良い子だったんですけど、大人しかったのが、すごく大人になったんです。キャプテンとして自分がまとめなくちゃいかんという気持ちもあるのかもしれません。あれは、我々の予想を超えた効果でした」

 eスポーツ同好会の結成は、結成したこと自体で、既に大きな効果を上げていた。

■先生手作りのプリントでポイントを押さえる

 部員は全員2年生。エントリーしているのは11人だ。活動は月水金。午後は選択授業制なので、授業がない子は午後1時半くらいから。午後の授業がある子は5限が終わったらスタートしている。

 昔は工業高校の職員室だったという部屋を掃除して綺麗にし、部室代わりにしている。そこにパラパラと集まってきて、全体が集まるのが3時くらいで、そのあと最終下校時間の4時半から5時くらいまでやってるというかたちだ。

 鈴木先生が最初に「やるよねえ?」と声をかけたのが、部長の徳田信忠さんだ。「ちょうど自分の教えてる授業に徳田君がいたんです。他の教員から徳田君がオンラインゲームの大会に出ていて、名古屋地区の大会では表彰されるくらいだということは聞いていましたので、まずは徳田君から声をかけてみたんです」。

eスポーツ同好会部長の徳田信忠さん

 スタメンのうち、残りの4人も徳田さんが声をかけた。あとの6人はeスポーツ部の活動を聞いて集まってきたゲーム好きだ。教頭の鳴澤由紀子先生が言うには「ちょっとずつ輪が結びついて11人になったかたち」だという。

鳴澤由紀子教頭先生

 どこの部活も同じだが、最初は互いに知らない相手もいたので壁があったが、「一度負けてもいいから」とポジションを変えたりシャッフルを繰り返し、今まで喋ったことがなかった相手ともコミュニケーションを取るようにした。すると互いに話すようになったのは当然だが、チームとしても強くなったという。

 eスポーツ同好会は鈴木先生以外にも佐藤祐斗先生と土本昭宏先生の合計3人体制で指導している。

佐藤祐斗先生

 特に非常勤の土本先生は、もともと3年前から「LoL」をプレイしていて、経験を積んでいた。土本先生は月曜日しか来れないものの、初心者が押さえておくべき内容をまとめたプリントを作って配布。プレイ中はもちろん、プレイ後の反省会でも、「終盤戦の動きを確認しよう」とか「一試合ごとにテーマを決めてプレイしよう」と、まさにコーチとして生徒たちを指導していた。

土本昭宏先生

土本先生によるLoL入門プリント

黒板にもLoLの用語がズラリ

「私の経験が生徒の役に立てばなと思っています。それにゲームなので『こういうふうにやるといいよ』とか、攻略方法を教えあったりすると、やっぱり自分も楽しいです。それが良いサイクルになればいいなと思っています」(土本先生)

 生徒が頑張っていると、教えるほうも力が入るとのこと。「私が指導に入ってまだ間もないですけど、本当にメキメキと腕をあげているので、本番が本当に楽しみです」。

取材当日も生徒を「指導」しながら一緒にプレイしていた土本先生

■今大会での目標は「とりあえず一勝」

 さて、「ばりばりオンラインゲームをやっていた」という徳田信忠さんたち部員の話を聞こう。対戦・格闘ゲーム「機動戦士ガンダム・フルブースト」などで、地区では1位の成績を取っていた徳田さんは、「LoL」のプレイは初めてだったが、今はハマっているとのこと。

 チーム全体も、最初はAIにも負けるくらいだったが、土本先生の指導やプレイ動画を見て勉強したこともあって、どんどんうまくなっているという。

 徳田さんたちは取材にも同席してくれたKさん、Oさんの2人と、いつも3人組で行動しており、鈴木先生から誘われたときにも3人でいた。2人とも「自信を持ってゲーマーと言えるほどではないがゲームはやっていた」とのこと。そこで3人で残り2人のメンバーを誰にするか考えて、まずeスポーツ同好会結成となった。

 城北つばさ高校eスポーツ同好会ではチームが1軍と2軍のようなかたちで別れている。後から参加したSさんは最初は2軍だったが、腕を上げたことから今では1軍で活躍している。

​​​​​​​徳田さんとは元々仲のよかったeスポーツ同好会のKさん

 プレイの中心になっているのもやはり徳田さん。徳田さんは「うまい人とそうじゃない人とでは戦略が違うし考え方も違う。うまい人と下手な人の違いはそこにあると思う」と語る。

 同好会では「LoL」、「ロケットリーグ」共にエントリーしているが、どちらかとしては「LoL」での勝ちに重きを置いている。だが「厳しいかも」とも感じている。練習試合ではランキング上位校相手では「手も足も出なかった」そうで、思い知られたそうだ。

 今大会での目標は「とりあえず一勝」だ。

■ゲームでのコミュニケーションから大きな声が出せるように

 サードウェーブの「eスポーツ部発足支援プログラム」によって提供された「ガレリア」の感想を伺うと、「速いです」「くそ速いです」と性能には大いに満足しているとのことだった。他には「スピーカーがないのでヘッドセットが欲しい」という意見も。

 支援プログラムによって提供しているPCは合計5台のゲーミングパソコン「ガレリア」。内訳はデスクトップが3台、ノートPCが2台で、いずれもGeForce GTX1060を搭載している。ハイエンドモデルではないがゲーム用のパソコンとしては十分な性能である。自宅にパソコンを持っているという子でも、ゲームに使える高性能PCを持っているとは限らないのだ。

「パソコンの性能が良いので、家でやるよりは集まったほうがいいです。PCを持ってない子も普通にいるので、持ってない子でも、ここに来たらやれるよというのは良いですよね」(徳田さん)

 他の部員たちも「通話よりもコミュニケーションがとりやすい」「表情が見える」「知らない人とも仲良くなれた」と、部活としてeスポーツをやることの意義を上げた。

 顧問の鈴木先生も「ゲームは家でもできるかもしれませんが、表情を見てコミュニケーションをとることで、相手の気持ちを察することにも繋がります。今まで喋ったことがなかった子ともゲームがきっかけでコミュニケーションをとって友人関係が作れるので、学校のなかで部活動としてやる意義は大きいと思います」と評価する。

 生徒たちとはほぼ毎日接しているという佐藤先生も「生徒たちの1日1日の成長を感じる」という。「みんな、よく喋るようになりました。ゲーム内だけではなく普段もよく喋るようになり、声もしっかり、聞き取りやすくなり、成長が感じられました。これが学校で部活としてやる意義かなと思いました」と語る。

 部長の徳田さんも「部活動だと仲良くなりやすい」という。

 活動は大会後も続ける予定だ。来年は後輩も入ってくるかもしれない。課題は知名度向上だ。

「この学校に、eスポーツ部があることを知らない人もまだいると思うんです。ホームページには載ってるんですけど、学校全体には行き渡っていないので。噂に聞いて知ってる人もいますけど、知らない人も多いと思う」(徳田さん)

 顧問の鈴木先生は、たとえば体育祭の種目などにeスポーツを取り入れられないかと考えているそうだ。

■チームプレイが生み出す「前へ出る力」

 城北つばさ高校は「様々な事情を持つ、学習意欲を持つ子供たちを受け入れる学校」として設立された。先生たちはみんな、受け入れた生徒たちを「自分できちんと生きていけるようにしていきたい」と思っているという。

 eスポーツ同好会のメンバーに「将来何がしたいか」と聞いてみると、就職か専門学校とのことだった。部長の徳田さんは「一つのことをずっとやるような仕事をやりたい」という。ゲームでいえばレベル上げのような作業だ。積み上げ作業が好きなのだという。

「僕は『臨機応変』みたいなのは向いていないっぽいので、一つのことをひたすらやるような仕事に就きたいです」

 このほか、「ゲームを作るための勉強をしたい」というメンバーもいた。

 鳴澤教頭は「人と関わりあいながら、困ったときに、もう一歩前へ、きちんと踏み出していける子たちに育ってほしいなと思っています。中学校のときは踏み出せずに家にいたり、悩んじゃったりしていた子たちもいるんですけど、ここで少しずつ乗り越えていく経験を積んでほしいです。社会に出ても色々と大変なことはあるじゃないですか。それでも諦めずにやっていける子になってほしいなと思います」。

 顧問の先生たちは、他の教員たちからも「eスポーツがスタートしてから、生徒たちの表情が良くなっている」と言われるそうだ。「そんなときには、eスポーツ同好会を作ってやっぱり良かったなと思いますし、生徒のために少しは力になれているのかなと実感しています」。

 金子校長は「何よりも5人1組がよかったです。チームじゃないですか。声をかけながら、コミュニケーションをとりながらやっているんです。ただ一人でやるよりはずっといいです」という。

 チームプレイによって生徒達のプラス面が引き出され、それが指導する先生たちにとっても励みになっている。ゲーム、eスポーツによって友人関係も広がり、今まで繋がりがなかった相手とのコミュニケーションも生み出されている。さらに新たな輪が繋がり、広がっていくことを期待している。

・愛知県立 城北つばさ高等学校
http://www.johokutsubasa-h.aichi-c.ed.jp/

Reported by 森山和道

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