「死に戻り」というジャンルの豊穣な魅力【死に戻りゲーム総論】

公開日:2020/7/13


本連載の前身となる「ガレリアPCゲーム探訪記」でご紹介したインディーズゲーム「INSIDE」。同じスタッフが開発した前作の「LIMBO」とともに、筆者は「死に戻りゲーム」と呼びました。

 

INSIDE:モノクロ世界で淡々と繰り広げられる超鬱“死に戻り”ゲーム|ガレリアPCゲーム探訪記 第5回

 

「死に戻りゲーム」とはどういう要素を備えたゲームなのか。デジタルのゲームは一般的に「死んだら時間が巻き戻され、再びやり直しになる」が共通していますが、その中でも「死に戻り」というジャンルは際立った特徴をいくつか持っていたりします。

 

死に戻りゲームの代表作である『Limbo』。全てがモノトーンの世界の中で、少年が離ればなれになった妹を探しながら冒険する。容赦ない死の描写が話題を呼んだ。

 

1つには「死んだら、すぐに直前のセーブポイントに戻る」こと。はるか手前に戻され、何個もの難所をやり直すゲームはありがちですが「死に戻りゲーム」はすぐ前の地点に帰ってくるだけ。データのロードも速やかで、ストレスもほとんどありません。

第2に「死にどころ」も1つに絞られていて、それを見つけて切り抜ければいいし、クリアできなければ絶対に先に進ませてもらえない。アクションゲームは1ステージにいくつか難所があり、そのうち1つに引っかかっても残り9つを凌いだり、体力まかせでゴリ押しできるものが多いですが、こちらは1つの難所に死ぬまで(死んだ後もありますが)取り組むことになります。

そして最後の1つが「主人公は“死に戻り”以外の特殊能力を持たない」ということ。モノを引っ張ったりジャンプはできるが、平凡な身体能力しかなく、巨大な岩を持ち上げたり、空高く飛び上がったり、銃を撃ったり目からビームを出すことも無理。ただ「死ぬまでの出来事を覚えていて、再挑戦できる」だけを手がかりにして困難に立ち向かっていくわけです。

 

 初見には必ずと言っていいほど引っかかる罠の数々。たとえ死んでもすぐに直前からやり直せるためストレスはほとんどないが、「死」に感覚が慣れていくのが怖い

 

何度も何度も無惨な死を重ねて、死地を乗り越えても次の死地が待っているだけ。それがとてつもなく魅せられるエンターテイメントになっているのは、ゲームの「死」が豊かで美しいからです。

ここ10年ほどのアクションゲームは2Dといえども物理演算処理を導入しているものが珍しくはなく、つまり「現実さながらに死ねる」ということ。高いところから墜ちれば全身の骨がバキバキに折れ、大きなトラバサミに挟まれればカラダが砕け散る。

しかも昔のドットゲームのように用意したパターンが表示されるのではなく、一回ごとにCGが生成され、一回ごとに違う「死」がポッと生まれる。それが短いロード時間、すぐやり直せる快適なローテーションとあいまって、次はこんな死に方をしたい……と生と死の欲望が裏返ることが病みつきになるのです。

「LIMBO」と「INSIDE」はどちらも白黒の世界とされており、首が折れようが四肢が切断されようが、血しぶきが飛び散ろうがすべてモノクロ。背景のアーティスティックな雰囲気に飲み込まれて、何もかもが一幅の絵のように美しく見える。「バラエティに富んだ無数の死をエンタメに変えた」のが、これら2作を開発した会社Playdeadのオリジナリティであり、恐ろしさです。

 

「死に戻り」はいかに生まれ、成長していったか

 

「死に戻り」はゲームに限ったことではなく、「INSIDE」と同時期にアニメ版が人気だった(あれから4年経ちました)「ライトノベル「Re:ゼロから始める異世界生活」ほかでも親しまれている概念です。

そもそも「死ぬ前まで時間を遡って人生を再挑戦する」というアイディアは古くからあり、ジャンルとして確立したのはケン・グリムウッドの小説「リプレイ」と言われます。誰しも今の知識を持って過去をやり直したい、その分だけ他人の優位に立ちたいと思うのは当たり前ですし、その延長に最近の異世界転生ものでの「現代知識チート」(刀しかない世界で銃が作れれば最強)があるのかもしれません。

海外映画でも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「バタフライ・エフェクト」など名作がありましたが、それがゲームに定着していったのが1990年代半ば~2000年代初めのこと。もともとコマンド選択方式+複数の結末があるマルチエンディング式のアドベンチャーゲームは事実上「死に戻り」といえたものの、はっきりと「時間を遡る(旅する)」というシステムにしたのが「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」(1996年)あたりでしょう。様々な時間軸を巡り、たった1つの真実(トゥルーエンド)にいたる作りです。

さらに「高機動幻想ガンパレード・マーチ」(2000年)では人類全体が絶滅にいたる時間のループに閉じ込めている存在があり、それを撃破することが最終的な目標(の1つ)となります。世界全体を「死に戻り」させ、少年少女たちが無限ループを抜けるために死闘するという物語は、ゲーム全体においてフォーマットとして根づいた感があります。トム・クルーズ主演で映画化された小説「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2004年)も、本作が着想のきっかけになったとの逸話も語られていました。

その後に現れたのが、一世を風靡した「ひぐらしのなく頃に」(2002年~)シリーズ。選択肢がない一本道、過去に戻っても別のキャラの視点から……という異色さですが、これさえ成立するのがゲームというエンタメの懐の深さでしょう。

 

自分にフィットした「死に戻りゲーム」の選びかた

 

自らの死と向き合い、そこに至る原因や因果の積み重ねを分析して絶望のループを抜け出す。己の屍の山を越えていく「死に戻り」ゲームは、あの時こうしていたら……と過去を振り返りがちな人間の本性と響き合いやすいのか、今では豊富なバリエーションが揃っています。

しかし、人の好みの傾向の数だけ「死に戻り」ゲームの方向性もあり。「LIMBO」や「INSIDE」もその1つにすぎず、死に戻る(ように見える)からといって安易に手を出していては後悔することになりかねません。

最近のインディーゲームを見渡せば、非常に厳しい難度の壁が立ちはだかって「死んで前に戻される」的なゲームが人気ジャンルとなっています。たとえば壺から現れた上半身ムキムキの男がハンマーを振り回して山を登る壺男こと「Getting Over it」が、その代表例です。プレイごとに様々な失敗の道のりがあるため、自分のやられっぷりを観客に楽しませるゲーム実況に向いてるという事情もあるのでしょう。

しかし、これらの超高難易度ゲームは、実は意外と死にません。例えば壺男では、スタート地点から戻ったところ(操作ミスでよく戻る)の貯水池で水没して死ぬ以外は、生きたまま前に戻されるだけです。死んでいれば先に進んだ状態からやり直せたのに……。死んで楽にさせてやらんという強い意志が伝わってきます。

ちょっとした操作ミスで数時間、ときに数日かけて登ってきた高さから最下層まで転げ落ちさせ、また同じ苦労を強いる。「死に戻りは救済」だと自覚しているから、あえて生き地獄を味わわせているわけですね。これも精神を「死なせ」て「戻す」ということで、広い意味での「死に戻り」に入るかもしれません。

 

『Limbo』のトラップは直ちに主人公を殺害してくれるため、長く生き地獄を苦しまずに済む親切設計。「何回も死んで、自らの死因を分析」はゲームにしかできないことだ。

 

「よく死ぬ、すぐ直前からやり直せる」に最も近いものといえば「Celeste」でしょう。マデレンという少女がセレステという山の頂上を目指して、死んで死んで死にまくるジャンプアクションゲームです。海外でも高い評価を受け、いくつもの賞を受賞しています。

しかし、こちらは主人公の身体能力がとても高く、ジャンプ、素手で壁にしがみつき、空中ダッシュ……普通の人間のはずですよね? そうした操作性の自由度が高いため、求められる制御もハイレベル。まず壁につかまり、落ちる前に斜めに空中ダッシュして別の壁に飛び移り……と連続アクションが成功するまで何十回でもやり直し。その反面で死にざまの描写はなきに等しく「死の瞬間を楽しむ」とは対極にあります。

そう考えていくと、「LIMBO」や「INSIDE」と同類の死に戻りゲームは意外とありません。その本質が試行錯誤を通じてゲームの作者と対話し、死を一部とした世界の美しさを楽しむことにあるとすれば、おそらく最も近いのが上田文人さんの「ICO」や「ワンダと巨像」(どちらもPS4でプレイ可能)でしょう。

 

ものいわず矢を撃ってきたり、陰険なトラップを仕掛けて逃げていく住人たち。その意図を何回も「死に戻り」して解いていくのはコミュニケーションかもしれない

 

一切のメッセージが言葉では語られず、ただ少女と手を繋ぐことや巨像のたたずまいから物語が伝わってくる。そんなあり方が似ていると思ったら、実際にPlaydeadの開発者が「ICO」に影響を受けたことを語っていました。

参考:上田文人×Arnt Jensen対談 『ICO』×『INSIDE』説明のないゲームはこうして生まれた - ファミ通.com

Playdead作品における「死に戻り」は、1回の人生で全てを知るには世界は豊かすぎるということ。その希有な要素を持っているから、「LIMBO」や「INSIDE」はプレイヤーの心を捉えて離さないのかもしれません。

Reported by 多根 清史

steam公式サイト

Steam:LIMBO

 

“死に戻り”ゲーム「INSIDE」のレビューはこちら!


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