【Night In The Woods】滅び行く田舎町での閉塞感、青春のもどかしさを描くアドベンチャー 帰ってきたガレリアPCゲーム探訪記

公開日:2020/5/14


舞台はとある田舎町のポッサム・スプリング。とある事情で大学を中退して帰ってきた主人公のメイは20歳の女子で、地元の友人とバンド練習をしたり、いたずらしたり、パーティーに参加したりと楽しくも刹那的に過ごしていく……と公式サイトに紹介されている『Night in the Woods』のあらすじ。

一見して可愛らしい絵柄。その見かけと上で説明された退廃的なストーリーのギャップはどう埋めるの?と首をかしげるが、主人公を操作していくくうちに自分の中で馴染んでいくのが「体験するメディア」であるゲームの強みだ。

主人公のメイは黒猫で、この街は動物が人間のように暮しているところ。別に主人公だけに見えている幻覚というわけではなく「そういう世界」であり、ますむら・ひろし氏のマンガ版『銀河鉄道の夜』や『けものフレンズ』などが好きな人にはすぐしっくり来そうな感じではある。
主人公のメイは2Dアクションゲームのような動きは出来るが、「戦う」ことはない。ただし、電線の上を歩いたりあちこち探索していると、思わぬ発見がある。
パッと見は横スクロールのアクションゲームのようで、メイは左右に移動やジャンプもできる。しかし通行人を攻撃したり金やアイテムを奪ったりもできず、戦闘もない。そもそもポッサム・スプリングは生まれ故郷で、道行く人たちも知り合いや近所の人々であり、「倒す」と事件になってしまう。町中を走り回って様々なキャラクターと会話をして話を進めていくアドベンチャーゲームなのである。

しかし始めたばかりは、誰しもが戸惑うはず。ただ主人公は大学を辞めて故郷に帰ってきただけ、スタート直後には事件も何も起こっていない。勉強するでもなく、働きたくもない。たとえ働きたくとも、このポッサム・スプリングは全盛期をとっくに過ぎた鉱業都市。炭鉱が閉鎖してから10年が経ち、若者の働き口もなく、ゆるやかに死にゆく街である。

主人公に何かを積極的にやろうという気もなく、取り巻く環境が目的意識を持つことも許さないーーこんなゲームは、そこそこ(数十年)ゲームをやってきた自分にとっても初めてのことだ。
印象に残ることが起きると、メイは日記を付ける(手書き文字まで日本語化しているローカライズの素晴らしさ!)。面白おかしいようで、「精神科医に治療のために付けるよういわれている」というヘビーな設定あり。

会話の面白さ

ひさびさのわが家を飛び出して出てみると、街の人々との会話がいきなり面白い。「おめーはな、いつか町を出てお偉いさんになるか、逆に何もしねーで一生いるか……」とホウキを持ったヤギに言われてグサリ。プレイヤーにとっては初対面でも、メイにとっては子供の頃から知られたご近所さん。それとともに、大学に行くことがすごくハードルが高くて周囲から期待ややっかみが集まる町という状況まで分かるセリフの深さだ。
愛らしいヤギさんに軽い気持ちで声を掛けたら、主人公の過去を知ってる知り合いでした。「昔はよくできる子だったのにねえ」と言われるの辛いよね……。
バイトしてる旧友のグレゴリー(グレッグ)に会いに行けば、第一声が「大学行って死ねばよかったのに」。このドキッとする憎まれ口、遠慮ない物言いをしていい関係性、遠くへ行ってしまった友達が帰ってきて一気に距離を詰めようとする心の動き。もともと海外ゲームでキャラクターは動物、なのに胸に湧き上がる共感はなんだろう。
前はメイと馬鹿やってたが、今は社会人として働いているグレッグ。こう見えて、自分は恋人のアンガスに釣り合ってるのか?と悩める青年である。
地下で営んでる食堂に行けばシルエットだけのおじさん料理人に「しょーもねー穴でしょーもねー50年間おめでとうさん!」と憎まれ口を叩き、たちまち始まる罵り合いの応酬。でも、これも「前にあったこと」のくり返しであり、いがみ合い小競り合いも人間関係の一部ということ。隣の部屋に誰が住んでるのか、何をやってるのか分からない都市生活の反対側にある「誰も出て行かない、いつも同じ顔ぶれ」の故郷の煮詰まり方がセリフ中に凝縮されている。

わが家もまた町の一部。お父さんが「まぁ、「うち」があるうちに存分に楽しんでおきなさい」……つまり「うち」がいつまであるか分からない境遇ということ。絵本のようなキャラクターたちが、触れれば血が噴き出るような生々しい言葉を投げかける。彼らはたしかにこの世界に生きているのであり、しかもプレイヤーが見ていない過去をメイと一緒に過ごして何かを夢見て、裏切られて傷だらけになっている。

貧しさとしがらみに捕らわれた住人達はしゃれたセリフをいってるようで、裏にはどうしようもない諦念が見え隠れしている。望んでもいない仕事を生活のために耐え忍んだり、明日なき町のよどみの中であがき続けるのに疲れ果ててもいる。

「世の中」ってのはどこか遠くにあるワケじゃない……とは「世の中」に巻き込まれ切ってる境遇から絞り出されている言葉だ。そんなセリフを吐くキャラクターたちと、どこかもの悲しいBGMや寂しい秋のふんいき、ポップなようでよく見ればボロボロの町があいまって、ディスプレイの中に実感あふれる「世の中」を出現させているのだ。
ポッサム・スプリングを守る婦人警官。メイの叔母さん的な立場でもあり、胸にグサリと突き刺さることをよくいう。

メイと友人達

様々なしがらみに捕らわれている住人のなかで、メイだけは自由に生きているようだ。朝起きれば町をほっつき歩き、高低差があるなかでジャンプで屋根や電線の上に登り、あちこち散策する。

日がな一日座り込んで誰にも関わらない相手に声を掛けて、その次の日も翌々日も声を掛けて……と続けていけば、そのキャラクターが驚くようなことをしたりもする。そうした些細な付き合いが他人の生き方を変えるのはゲーム的でもあり、意外と本当にあることかもしれない。

メイの自由さは、孤独の裏返しでもある。大人でもなく子供でもない、大学を中退した20歳。周囲から何にも期待されない、何も求められない。メイの親はそううるさくは言わないが、大学進学のために家を担保に入れて借金しており、それが中退のために全く無駄になり……つまり「家(親)から逃げている」面もあるわけだ。
内心ではコンプレックスまみれのメイ。鏡の中の冴えない自分にウンザリ、それでも友人との交流で徐々に立ち直る……だけでなく七転八倒します。
そんなメイにとって唯一の居場所は、3人の旧友たち。いつも思慮深くて憂鬱そうなベアトリス(ビー)、はっちゃけたグレッグ、その彼氏で物静かなアンガスらは、前やってたようにバンド活動を再び始め、メイと損得抜きの付き合いをしてくれる。
旧友のグレッグやビー、アンガスらと再会して、またバンドの練習をするメイ。しかし、そこにはもう1人の親友・ケイシーがいなかった。
しかし、メイと3人との時間はすでにズレている。彼らはそれぞれに仕事を持ち、事情を抱え、人格を確立しつつある「大人」だ。それでもメイと一緒に馬鹿やってくれたりするが、決して昔には帰れない。

たとえばビーは父とともに商店を営んでいたが、母親が亡くなってから父はノイローゼに近い状態となり、今や家計はひとりで支えている。「私が頑張らなければ家族は終わる」というギリギリの崖っぷちだ。それでも「ふつう」を取り戻そうとパーティーに参加するが、メイのせいでぶち壊し……。帰りの車で淡々と「大学なんか行かせてもらえたら死んじゃってもいいわ」と怒りをぶつけるのもしょうがない。

メイはメイで、大学を中退した裏には心の闇がある。ポッサム・スプリングに帰郷してからも闇は消えず、それは夜な夜な見る夢のかたちで現れる。人っ子ひとりいない町を走り回り、あり得ない積み重なり方をした家の屋根を跳びはね、背景には巨大な魚が泳ぐーーアートのような美しさで、敵を倒したり攻撃を避けたりもないが(4人の楽団を探す探索はある)これは「心の闇との戦い」だ。

メイ本人もとてつもなく苦しい。が、それを相手してささやかな救いを台なしにされるビー達はたまったもんじゃない。それでもなお友達でいようとする彼らは、「麗しい友情」とか薄っぺらな表現に収まらない関係だ。
ときどき挟まるミニゲーム。簡単なリズムゲームだが、そもそも譜面を知らないので難しい……。
バラバラ殺人事件を目撃した辺りからストーリーは動き始め、3人の友人達との「スタンド・バイ・ミー」ばりの冒険っぽいことが繰り広げられる。

そこに至るまでは正直チト辛いが、「魔王を倒す」という目標もなく先行きの見えないなかで生きていく青春のもどかしさを、年齢を超えて体験できる唯一無二のゲームではある。周回プレイもでき、隠し要素を探す楽しみもアリ。
Reported by 多根 清史

steam公式サイト

Steam:Night in the Woods


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