パソコン自作のススメ「ドライバー1本で始めよう!」-その2「パーツ選びは遠足前夜(前編)」 Text by 高橋敏也

前回、「自作パソコン」とは何かを解説しました。そこで自作パソコンとは「パーツを選んで買い集め、自分で組み立てる」ものだと紹介しました。なるほど、自分で組み立てるから自作パソコンなのか。ここまでは分かっていただけと思います。そこで今回は「パーツ選び」の基本をご紹介したいと思います。この「パーツ選び」はパソコンを自作する「最初の大きな楽しみ」であり、「最初の大きなハードル」でもあります。

そこで最初に書いておきますが、迷って迷ってどうしてもパーツを決められない場合は、ショップに頼ってください。ショップでは「自作キット」というような形で、パソコンのパーツをセットで販売しています。これを買ってきて、付属のマニュアルなどを参照すれば、誰でも簡単に自作パソコンを完成させられます。また、ショップで店員さんにアドバイスをもらうのもいいアイデアです。「自作にチャレンジしてみたいのだけど、パーツ選びがよく分からなくて」といった感じです。ですがまあ、そういった場合は多くの店員さんが「自作キット」を勧めてくるでしょうが。

さて、自作パソコンのパーツ選びでは「軸」をどこに置くかが重要になってきます。完成させたいパソコンが「性能重視」なのか、「見た目重視」なのか、はたまた「価格重視」なのか。まず方向性を決めてから、具体的なパーツ選びに入ると、比較的スムーズに進むことができます。性能重視ならハイエンドなCPUに大容量メモリといったところは外せないでしょう。ですからCPUが軸になります。見た目重視なら真っ先に選ぶべきはもちろん本体ケースです。自分好みの本体ケースを選び、その本体ケースに合うパーツを選んで行けばいいのです。買い物には予算というものがある訳ですから、その予算がパーツ代の上限となります。予算をやり繰りして、いかに自分好みのパソコンに仕上げられるか? これも自作パソコンの醍醐味と言えるでしょう。

ちなみにCPUを決めるとマザーボードの選択範囲が絞られ、マザーボードを決めるとメモリや本体ケースの選択範囲が絞られてきます。ただ漠然とパーツを見ていても、なかなか決められるものではありません。ですから最初に「軸」を決めてください。そうするとある程度はスムーズにパーツ選びが行えると思います。

さて今回は、そんなパーツ選びのお手伝いができるような内容にしてみました。あれこれ書くことが多いので、何回かに分けて自作パソコンを構成するパーツを紹介して行きたいと思います。

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ドスパラの【パーツの犬 完全監修】第1弾 自作フルコンプリートキット。自作PCに必要なパーツやOSなどすべてがセットになったもので、今回はこのキットをベースに説明をしていきます

■Intelか、AMDか、CPU選びは二択

パソコンにとっての頭脳、それがCPUです。ショップに行くと分かるのですが、現在市場には驚くほどさまざまな種類のCPUがあります。ですがメーカーに注目して見ると、実は2社しかないのです。IntelとAMD、この2社が市販されているCPUのメーカーです。もちろんCPUを製造しているメーカーはほかにもありますが、市販されていて、なおかつ自作パソコンに使うCPUとなるとこの2社の製品ということになります。従ってCPUを軸にパーツ選びを進めるなら、どちらかのメーカーを選ぶのが最初の作業になります。Intelか、AMDか。これは自作パソコン派にとって、大変悩ましいところです。ですのでここではメーカーに関わらず、CPU選びのポイントを紹介して行きます。私個人としては、ポイントさえ押さえておけば、どちらのメーカーを選んでも幸せになれると思っています。
(注:AMDではグラフィック機能を搭載したCPUのことを「APU=Accelerated Processing Unit」と呼びますが、APU=CPUと思っていただいて結構です)

IntelのCPU「Core i5 4460」のパッケージ
IntelのCPU「Core i5 4460」のパッケージ

CPUの表側
CPUの表側

CPUの裏側
CPUの裏側

まず基本的に同じメーカーのCPU同士を比較した場合、異なるのはモデル、対応するCPUソケット、そして動作周波数です(値段……と書く必要はないですよね)。モデルに関してはIntelだとPentiumシリーズやCore i3、Core i5、Core i7などがあり、AMDではAthlonシリーズやAシリーズ、FXシリーズなどがあります。CPUソケットに関してはIntelであればLGA1150やLGA2011-v3、AMDであればSocket AM3+やSocket FM2などがあります。同じモデル(シリーズ)でCPUソケットが異なる場合もありますし、グレードによって動作周波数が異なります。まあ、ズバリ言ってしまうと高価になればなるほど高性能になるのがCPUです。いわゆる「速いパソコン」を組みたいなら、より高性能なCPU(すなわち高いCPU)を選ぶことをお薦めします。もちろん予算の範囲内ということですが。ちなみにCPUの性能を比較する時は、動作周波数だけでなく、内蔵するコアの数やキャッシュメモリのサイズなども比較してください。

さらにポイントとなるのが「CPUに内蔵されているグラフィック機能」の比較です。Intel、AMD共にグラフィック機能を内蔵したCPUを発売しており、そのグラフィック機能も価格によってグレードがあります。ちなみにAMDはビデオカード(グラフィックカード)のメーカーでもあり、AMDのCPUが内蔵するグラフィック機能は優れていると感じる人も多いようです。また、グラフィック機能を内蔵したCPUを選ぶと、ビデオカードを使わなくて済むというメリットもあります。

また、特殊な例として「マザーボードにCPUが最初から搭載されている」ものがあります。コンパクトなMini-ITXマザーボードなどで多く見られるのですが、これですとCPUを別途用意する必要がありません。さらにグラフィック機能も搭載されているモデルなら、ビデオカードも不要となります。市販されているCPUオンボードの製品は、機器制御などに使用することを前提としているものが多く、用途的には限られています。ですが面白い製品ですから、是非一度調べてみてください。

■CPUクーラー

CPUは動作する際に熱を発生させるため、その熱を逃がしてやらなくてはなりません。そこで使用するのがCPUクーラーです。一般的なCPUクーラーはヒートシンクと呼ばれる金属部分と、そのヒートシンクに風を当てる電動ファンで構成されています。また、電動ファンを省いたファンレスCPUクーラーや、熱の移動に循環液を使用する水冷CPUクーラーなどもあります。CPUクーラーはCPUに同梱されている場合もありますが、CPUのモデルによっては別売りになっていたりもします。また、CPUクーラーが標準付属になっている場合でも、別途高性能なものを購入して使用する人もいます。

CPUクーラーがCPUに標準付属している場合は、それを使用すればいいだけです。ですが市販のCPUクーラーには「より効率よく熱を奪う(よく冷える)」、「標準品よりも静か」といったような特長があります。特に冷却性能の高さは、OC(オーバークロック、CPUを定格以上の周波数で動作させること)に影響したりもします。また、静音性に関してもCPUクーラーはパソコンの電源が入っている時は常時動作していますので(例外あり)、かなり影響します。

IntelのCore i5 4460に標準で付属するCPUクーラー
IntelのCore i5 4460に標準で付属するCPUクーラー

ちなみに市販のCPUクーラーを選ぶ際は、TDPと対応するCPUソケット、そして「取り付け可能かどうか?」という点に注意してください。TDPは「Thermal Design Power」の略称で、日本語では「熱設計電力」などと言われます。難しいことを抜きにするとTDPというのは「CPUが最大動作した際に必要とする消費電力(大ざっぱに説明するとですが)」で、単位は「W(ワット)」を使用します。例えばCore i7 5960XというIntelのCPUは、TDPが140Wとなっています。一方、市販のCPUクーラーにもTDPが表記されている場合があります。もちろんCPUクーラーの対応TDPより、CPUのTDPは下回っていなくてはなりません。TDPが書いていないCPUクーラーでは「対応CPU一覧」が表記されている場合がありますので、CPUに合わせたものを選んでください。

「パーツの犬 完全監修」キットに付属する市販CPUクーラー「DEEPCOOL ICE BLADE 100」
「パーツの犬 完全監修」キットに付属する市販CPUクーラー「DEEPCOOL ICE BLADE 100」

なお、CPUを取り付けるソケットにはさまざまな種類があると書きましたが、CPUクーラーはそのソケットに対応したものを選びましょう。CPUクーラーの中にはユニバーサルタイプ、すなわち現行のCPUソケット全てに対応しているものもあります。取り付けステーが複数用意されていて、それを使い分けることによってさまざまなCPUソケットに対応するというものです。「取り付け可能かどうか?」に関しては、メモリと干渉するかどうか、そして本体ケースに入るかどうかがポイントとなります。大きなCPUクーラーを選ぶ際は特に注意が必要です。メモリソケットはCPUソケットの近くにある場合がほとんどで、背の高いメモリを搭載すると、それがCPUクーラーと干渉してしまうのです。大きなCPUクーラーは高さもありますから、本体ケースに収まらないといったこともあります。

先ほども書きましたが、最近では簡単に取付可能なCPU用の水冷キットもあります。以前は水冷というと「難しい」、「メンテナンスが大変」といったイメージでしたが、最近のものは取り付けも簡単ですしメンテナンスフリーのものがほとんどです。ちょっと変わったことにチャレンジしたいというのであれば、水冷キットによるCPUの冷却はピッタリでしょう。

■マザーボードのポイントは「サイズ」

現在、市販されているマザーボードのほとんどが台湾メーカー製です(もちろん生産国は主に中国ですが)。主要メーカーだけでも10社前後あり、それぞれのメーカーが目的別に大量のモデルを販売しています。なので自作パソコンのパーツショップに行くと、売り場のかなりの部分をマザーボードコーナーが占めていて、そのラインアップの豊富さに驚くと思います。

さてそのマザーボードですが、CPUを決めればそのCPUに対応したものを選ばなくてはならないので、選択範囲をグッと絞ることができます。マザーボードには機能をコントロールするため、チップセットという部品が搭載されているのですが、このチップセットはCPUとコンビを組んで仕事をします。このためCPUを決めれば、対応するCPUソケットで、対応するチップセットを採用したマザーボードを選ばなくてはなりません。

CPUで絞り込まれたといっても、マザーボードに関しては選択肢が豊富すぎるほどあると思います。なのでまずは予算から、さらなる絞り込みを行いましょう。基本的に多機能、高機能なマザーボードは高く、シンプルなものは安い傾向にあります。自分の予算に合った価格帯から、自分の必要とする機能を持つマザーボードを選べばいい訳です。そしてその際、注目して欲しいのがマザーボードのサイズです。マザーボードのサイズは規格化されており、その大きさは拡張性に影響します。ですが重要なのは「小さな本体ケースに大きなマザーボードは入らない」ということです。後ほど紹介しますが例えばMicro ATX以下のサイズのマザーボードに対応した本体ケースには、Standard ATXマザーボードは入りません。逆にStandard ATXマザーボードに対応した本体ケースには、Micro ATXマザーボードが入ります。要するに本体ケースとの組み合わせを含めて、サイズでマザーボードを見るのです。

そんな訳で、ここでサイズ別の規格を見ていきましょう。

●サイズ別マザーボードガイド

・UCFF
Intelが提唱する新しいコンパクトパソコン、NUC(Next Unit of Computingの略、ナックと読む)のために用意された規格です。4インチ角、すなわち101.6×101.6mmという超コンパクトなマザーボードで、ACアダプタから電源を確保します。CPUはほとんどの場合オンボード、コンパクトですから拡張性は高くありません。UCFFマザーボードを購入する人は特殊な用途に使う場合が多く、どちらかというとベテラン向けのマザーボードと言えるでしょう。なお、Intelも含めて各社からベアボーンパソコン(後述)としても販売されており、そちらも人気になっています。なお、ほとんどの場合「UCFFマザーボード」とは呼ばず、「NUCマザーボード」と呼ばれるようです。

※ベアボーン
半完成状態のパソコンを「ベアボーン」と言います。具体的にはCPUとメモリ、ストレージ(HDDやSSD)、OSが入っていない状態で組み立てられていて、足りないパーツはユーザーが好みのものを選んで組み込むパソコンです。ほかにもメモリとストレージ、OSだけを用意すればいいものなどもあります。

・Mini-ITX
コンパクトなパソコンを作るための規格です。170×170mm角の正方形で、拡張性はあまり高くありませんが、パワフルなCPUやビデオカードを使用することで、高性能なパソコンを組み立てることも可能です。また、CPUがオンボードの製品も多く見られます。最近、コンパクトなパソコンを組むことが注目されており、Mini-ITXマザーボードの人気も高まりつつあります。

・Micro ATX
次に紹介するStandard ATXの一辺を短くした規格です。サイズ的には244×244mmの正方形で、普通に使うなら充分な拡張性を持っています。ただし一辺が短くなっている、すなわち面積が小さいため、拡張スロットの数はStandard ATXより少なくなっています。コストパフォーマンスに優れており、本体ケースも豊富に用意されているので、自作パソコン向きでもあります。

・Standard ATX(ATX)
もっとも標準的なマザーボードの規格です。自作パソコンの世界でもこの規格が標準ですから、対応する本体ケースも驚くほど豊富に用意されています。マザーボードのサイズであれこれ迷ったら、この規格を選んでおけばまず大丈夫! というほど標準的な規格なのです。サイズは305×244mmですから、形としては長方形になります。先ほど「Micro ATXは一辺を短くしたもの」と紹介しましたが、確かに244mmの辺は長さが同じですね。ちなみに244mmの辺を少し短くしたものもあります。

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「パーツの犬 完全監修」キットに付属するマザーボード「ASRock H97 Pro4」はStandard ATXとなります

・その他、やや大きめのマザーボード
ほかにもメーカーのオリジナル規格や、特殊な仕様のマザーボードがあります。例えばStandard ATXよりやや大きめに作られたExtended ATXや、XL ATXなどはハイエンドなゲームパソコンを作ったり、サーバーやワークステーション用途に使用されます。Standard ATXよりも小さな規格としては、Flex ATXやPICO ITXなどがあります。

先ほども書きましたが「迷ったらStandard ATXマザーボード」というのは、自作パソコンの基本です。これから自作にチャレンジしようという人は、ユニークな製品ではなく「一番の売れ筋」商品を選ぶのが無難でしょう。また、拡張性に関してはMicro ATXかStandard ATXを選ぶ限り、あえて気にする必要はありません。どちらもよほど特殊なモデルでない限り、充分な拡張性を持っているからです。

なお、マザーボードの中にはCPUをあらかじめ搭載している、いわゆるオンボードCPUのモデルがあります。NUCやMini-ITXに多く見られるモデルですが、もちろん搭載しているCPUは交換できません(かなり高い技術を持っていれば話は別ですが)。また、NUCの場合は選べる本体ケースが少ないという点も気に留めておいた方がいいでしょう。さて、CPUとマザーボードが決まれば、パーツ選びはどんどん加速します。頑張って行きましょう!

(その2に続く)

・パソコン自作のススメ「ドライバー1本で始めよう!」バックナンバー
その1「ドライバー1本で始めよう!」
その2「パーツ選びは遠足前夜(前編)」
その3「パーツ選びは遠足前夜(中編)」
その4「パーツ選びは遠足前夜(後編)」
その5「いよいよ組み立て! でもその前に」
その6「ついに組み立て!(前編)」
その7「ついに組み立て!(中編)」
その8「ついに組み立て!(中編2)」
その9「ついに組み立て!(後編)」

・記事で使用した機材
【パーツの犬 完全監修】第1弾 自作フルコンプリートキット

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