8コアとDDR4で至高のデスクトップPC環境を実現する「Core i7 5960X+X99」 Text by 笠原一輝

半導体メーカーのIntelは、8月29日(米国時間)に同社の最新製品となる「Intel Core i7 5960X/5930K/5820K」の3プロセッサと、そのチップセットとなる「Intel X99」を発表し、出荷開始したことを明らかにした。その発表を受け、秋葉原などのPC自作市場では同製品の販売が開始されており、すでに手に入れた読者も少なくないだろう。

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Intelが発表したCore i7 5960X

Haswell-Eの開発コードネームで知られる同製品は、従来の「LGA2011」を改良した新しいCPUソケット「LGA2011-v3」を採用しており、8つないしは6つのCPUコア、4チャネルのDDR4メモリコントローラ、最大40レーンのPCI Express Gen3といったスペックになっており、SLIやCrossFireといったマルチGPUソリューションにも対応可能で、ハイエンドゲーマーなどをターゲットにした製品となっている。

本記事ではそうしたCore i7 5960X/5930X/5820Xの技術的な詳細について解説していきたい。そこから見えてくるのは、まさにモンスターと呼ぶのに相応しい、超ハイスペックなプラットフォームだ。

●サーバー用プロセッサをデスクトップPC向けにリファインした“-E”製品

今回Intelが発表した3製品(Intel Core i7 5960X/5930K/5820K)は以下のようなスペックになっている。



Core i7 5960X Core i7 5930K Core i7 5820K
ベースクロック 3GHz 3.5GHz 3.3GHz
ターボ時最大 最大3.5GHz 最大3.7GHz 最大3.6GHz
コア/スレッド数 8/16 6/12 6/12
キャッシュ 20MB 15MB 15MB
PCI Express Gen3レーン 40 40 28
メモリ DDR4-2133 DDR4-2133 DDR4-2133
メモリチャネル数 4チャネル 4チャネル 4チャネル
TDP 140W 140W 140W
ソケット LGA2011-v3 LGA2011-v3 LGA2011-v3
価格(千個ロット時) 999ドル 583ドル 389ドル

表1 Intel Core i7 5960X/5930K/5820Kのスペック

ややこしいのだが、最上位の製品はプロセッサナンバーの最後に「X」がつく製品、つまりExtreme向けという位置づけがされている。下の2つはKがついているプロセッサナンバーになっており、アンロック版のCore i7という位置づけとなる。

プロセッサナンバーは5xxxと5千番台の数字が使われているので、現在デスクトップPC向けに提供されているHaswell Refreshの4千番台(例えばCore i7 4790Kなど)と世代が違うのかと思うかもしれないが、実際にはプロセッサコアのデザインは共通となっている。というのも、今回の製品の開発コードネームはHaswell-Eとなっており、基本的には現在4千番台のプロセッサナンバーがつけられている第4世代Coreプロセッサとアーキテクチャの世代は一緒なのだ。

ただし、出所は異なっている。というのも、Intelのハイエンドデスクトップは通常2ソケットサーバー向けの製品をデスクトップ向けに転用したモノがほとんどだからだ。



2012年 2013年 2014年
サーバー用製品 Sandy Bridge-EP Ivy Bridge-EP Haswell-EP?
ハイエンドデスクトップ用 Sandy Bridge-E Ivy Bridge-E Haswell-E
メインストリームデスクトップ用 Ivy Bridge Haswell Haswell Refresh

表2 Intelのサーバー向け、ハイエンドデスクトップ向け、メインストリームデスクトップ向けのCPUコードネーム
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Core i7 5960Xのリテールボックス

この表からもわかるように、基本的にサーバー向けの製品(****-EP)のEPからPを取ったコードネームがハイエンドデスクトップ用になっていることがわかる。具体的に言えば、サーバー向けの機能(例えばRDIMM/LRDIMM対応など)を削り、クライアント用にしたものが****-Eのコードネームがついている製品となる。

となると、現在のところサーバー用の「Haswell-EP」というのは発表されていないけどどうなってるの? というもっともな疑問を持つと思うが、今のところIntelからの発表はない。ただ、これまでの経緯から考えるに、当然Haswell-EPという製品が存在していても何の不思議ではないので、今後どこかのタイミングで発表されることになるだろう。

●8コア+DDR4という現時点では最高峰のスペックになっている

昨年発表された「Ivy Bridge-E」こと「Core i7-4960X」などの3製品は、一昨年にリリースされた「Sandy Bridge-E」こと「Core i7-3960X」と同じプラットフォームになっており、チップセットは共通の「Intel X79 Express」で、同じマザーボードを利用することができた。しかし、今回の製品ではチップセットはIntel X99チップセットという新しいチップセットに切り替わっているほか、CPUソケットがLGA2011-v3というピン数こそ同じだが、ピン配置などが従来のLGA2011とは異なるモノに切り替わっている。このため、従来のIvy Bridge-EベースのCore i7-3960XはX99マザーボードでは利用できないし、その逆にHaswell-EをX79では利用できないので注意したい。

今回のHaswell-E+X99の組み合わせと、従来製品となるIvy Bridge-E+X79の違いをまとめると以下の表のようになる。



Haswell-E+X99 Ivy Bridge-E+X79
CPUコア 8コア/6コア 6コア/4コア
LLC 20MB/15MB 15MB/10MB
PCI Express Gen3 40レーン(28レーン) 40レーン
PCI Express構成 2x16/5x8 2x16/4x8
メモリ 4チャネル/DDR4-2133 4チャネル/DDR3-1866
TDP 140W 130W
CPUソケット LGA2011-v3 LGA2011
SATA(6Gbpsポート数) 10(10) 6(2)
USB 8xUSB2/6xUSB3 14xUSB2
チップセット側PCIe Gen2 8レーン 8レーン

表3 Haswell-E+X99とIvy Bridge-E+X79の比較

大きな改良点としてはCPUコアが最大6コアから8コアに増やされた。ここ近年のIntelプロセッサは、プロセッサコアあたり2.5MBのLLC(Last Level Cache、L3キャッシュのこと)を搭載しており、8コアの製品は20MB、6コアの製品は15MBのLLCを搭載している。

次の大きな変更点としては、新しいメモリデバイスとなるDDR4に対応したことが上げられる。DDR4は、DDR3の次世代メモリとして開発されてきたメモリデバイスで、駆動電圧がDDR3の1.5Vから1.2Vに下げられており、より高いクロックで動くのに消費電力が下がっているのが特徴となる。今回のHaswell-EではこのDDR4を2133MHzで、288ピンの新しいDIMMを利用して最大4チャネル構成が可能になっている。

従来のメモリの進化(例えばDDR>DDR2、DDR2>DDR3)では、プリフェッチと呼ばれるメモリデバイス内のセルにアクセスする単位が2ビット(DDR)から4ビット(DDR2)ないしは8ビット(DDR3)へと進化することで、帯域が向上してきた歴史がある。しかし、今回のDDR4ではプリフェッチは8ビットのままで、内部バンクを8分割から16分割にすることで、高速化を実現している。

プリフェッチのビット数を上げると製造が難しくなるが、DDR4はDDR3と同じプリフェッチであるのでDDR3の延長線上の技術で製造でき、量産化が進めばDDR3と同程度のコストになると考えられている。ただ、新しいメモリデバイス登場時の宿命として、当初は高コストになると考えられるが、普及が進んでいけば、徐々に価格はDDR3と同じレンジまで落ちていくことになると予想されている。

また、チップセットの強化点としてSATAポートが6ポートから10ポートに増え、かつ全ポートが6Gbpsに対応したことは特筆に値する。従来製品では6ポートのうち2ポートまでしか6Gbpsで利用できなかったので、より多くのストレージを接続したい場合には要注目と言える。また、USBも従来製品ではUSB 2.0が14ポートだったのに対して、X99ではUSB 2.0が8ポート、USB 3.0が6ポートという構成で合計14ポートになっている。全ポートUSB 3.0ならさらに良かったが、前の世代ではUSB 3.0に対応していなかったことを考えれば、ここは嬉しい強化点と言えるだろう。

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Haswell-Eのダイ写真

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Core i7 5960XとX99のプラットフォーム

●価格差はあるが、他にはない8コア+DDR4を評価するのであればアリ

今回発表されたIntel Core i7 5960X/5930K/5820Kを利用できるX99搭載マザーボードは、ASUS、ASRock、GIGABYTE、MSIなどから発売されており、すでに秋葉原などでは流通が始まっている。価格は3万円前後からと、マザーボードとしてかなりハイエンドな製品となる。CPUの価格も最上位モデルが999ドルと日本円で10万円前後、もっとも廉価なモデルでも389ドル、日本円で4万円弱と決してコストそのものは安価ではないのは事実だ。

しかし、今のところクライアント向けのプラットフォームとしては唯一DDR4が使える点、さらに8コアという現時点ではクライアントPC向けのプラットフォームではもっとも多いコア数を搭載している点などが評価できれば、LGA1155ではなく、こちらを購入するという選択肢は充分ありだろう。

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