早稲田大学、世界最高耐圧・耐熱性能の「ダイヤモンド・パワートランジスタ」を開発~SiCやGaNを超える高性能省エネパワーデバイスとしての活用を目指す

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早稲田大学理工学術院 川原田洋教授らは、ダイヤモンド半導体を使った世界最高耐圧・耐熱性能のパワートランジスタを開発したと発表した。熱伝導が物質中最高であるダイヤモンドを半導体として用いることで、自動車、電車、ロボットなどエネルギー消費が大きい動力系において消費電力を大幅に下げることができる可能性があるという。米・サンフランシスコで12月15日~17日(現地時間)に開催された「国際電子デバイス会議(IEEE International Electron Device Meeting; IEDM)」にて発表した。

早稲田大学理工学術院 川原田洋教授
早稲田大学理工学術院 川原田洋教授

ダイヤモンドは物質中、最も高い絶縁耐圧と最も高い熱伝導率を持つ。つまり高電圧をかけても壊れにくく、電流を流したときの熱を逃がしやすい。これは特に熱が発生する電力制御用パワーデバイス材料としては極めて優れた特性だ。

ダイヤモンドは炭素が結晶構造を作ったもので基本的に絶縁体だと思われている。だがホウ素を含んだブルーダイヤモンドは電気が流れるp型半導体である。また、ダイヤモンド結晶の最終端面は水素か酸素で覆われており、実は表面の1原子層が水素終端なら電気が流れるが、酸素終端だと電気が流れない。電気が流れるのは表面だけで、その下は絶縁体だ。つまり、絶縁体上で表面を改質するだけで半導体領域と絶縁体とを分けられる、すなわちデバイスを作り込める。

今回開発された高耐圧高温ダイヤモンドトランジスタは、ダイヤモンド表面にある正孔を制御して半導体として用いるもので、20マイクロメーターのゲート・ドレイン間隔で1,600V耐圧性能を実現した。これまでは産総研のグループが開発した1,500V耐圧が最高だっったが、オフ状態での耐圧1,600Vのダイヤモンドトランジスタは世界初となる。また素子サイズも4割減少した。

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最大電界は3.6MV/cmで、シリコンカーバイドや窒化ガリウムの降伏電界を超えている。室温から400度で安定動作し、現在利用されているシリコントランジスタの耐熱温度約180度Cを大きく超えた性能を持つ。ダイヤモンド表面に正電荷を引き寄せ、表面を保護する役割を持つアルミナ膜を、原子層で高温で形成する技術を開発し、それをトランジスタの構造に形成する技術に発展させて実現した。次世代半導体のライバルであるシリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも立体化や3次元化においては有利だとしている。

事前に行われた記者説明会で川原田教授は「400度で1,600Vが出る材料は他にない」と話を始めた。現在、電力システムにおいて効率化が必要とされている。電力制御に不可欠なのがパワーデバイスだ。特に高電圧・大電流の動力系で効率が上がると大きな効果がある。

現在の半導体材料はシリコンだ。新しいデバイスを作るために、シリコンカーバイドや窒化ガリウムなど、パワーデバイス半導体材料が探究されている。ダイヤモンドはそれをさらに上回ることができる可能性があるという。

インバーターは直流を所望の周波数の交流電力に変換することができるが、そのときにスイッチするトランジスタの性能で電力の損失が変わる。トランジスタに電流が流れているオン状態のときに損失が起こるので、その時間を短くすることが省エネに繋がる。高電圧をかけてかつ電流も下げなければならない、相反する要求を満たすことが求められているのがパワートランジスタだ。

これまで使われて来たシリコンはもう材料の限界まで研究が進められていて、シリコンよりも絶縁破壊電界の高いSiCやGaN、そしてダイヤモンドの可能性が探索されている。

川原田氏はダイヤモンド表面を改質して作る電界効果トランジスタの開発を行っている。以前は空気中だと不安定だったが、保護膜の形成に原子層堆積法という手法を使うことで安定化させることができるようになった。なお1,600V耐圧だが、実用的には1,000Vくらいだと考えているという。温度依存を持たず、低温でも高温でもトランジスタ性能がほとんど変わらないことが他の手法に対する利点だという。

また、パワーデバイスとして縦型として実装するときにも利点があると述べて、「シリコンカーバイドや窒化ガリウムと互角かそれ以上のものができた。ダイヤモンドと窒化物を組み合わせるのが理想ではないか。加工しやすいということを最大限の利点としてやっていきたい」と語った。

なお、材料である単結晶ダイヤは、メタンと二酸化炭素から合成することができる。

Text by 森山和道

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