「同じ関心・情熱を共有できるコミュニティは素晴らしい」-Maker Media創設者のデール・ダハティ氏が #MFT2014 で講演

オライリー・ジャパンが主催する個人によるものづくりの祭典「Maker Faire Tokyo 2014(MFT2014)」が、11月23日(日)~24日(月)の2日間、東京ビッグサイト西3ホールで行われた。23日にはMaker Media.Incの共同創設者の一人で、雑誌「Make:」を立ち上げたデール・ダハティ(Dale Dougherty)氏が講演。イベントとしてのMakeの変遷や各国の状況を伝えた。

デール・ダハティ(Dale Dougherty)氏
デール・ダハティ(Dale Dougherty)氏

各国のメイカーフェアや変遷を紹介
各国のメイカーフェアや変遷を紹介

■「メイカームーブメントはルネッサンスだ」

「メイカームーブメントはルネッサンスだ」とダハティ氏は話を始めた。renaissanceには「新たに生まれる」「更新する」という意味があり、「もともと行われていたことを新たなかたちで作り上げていくのがメイカームーブメントだ」と考えていると述べ、ものづくりとは「手を動かしていることで実際に学んでいく、物理的な学びだ」と続けた。

ダハティ氏はよく「『メイカーとはどういう意味なのか?』と定義を聞かれる」そうだ。氏は「あまり型にはめたくない」と断りつつ、「一つの考え方としては、ものを作って共有する人たちという捉え方はあると思う」と答えた。ダハティ氏は10年前にMakeを立ち上げた。物理的なものにもハッキングが必要だと考えたからだ。世の中には理由もなく色々なものを作っている人が大勢いる。そして実は他の人たちも同じように作ることができる。その説明書というのが始まりだったという。そして創刊号で、そういう人たちをMakerと呼ぶ、と書いた。それがそのまま続いている。

■13万人が参加するサンフランシスコのメイカーフェア

雑誌を立ち上げて間もないころは色んな人が色んなものを作っているのを見るのが、ただ楽しかったという。そうこうしているうちに作っている人を招いて共有してもらってはどうかと考え、イベント「Maker Faire」を企画した。まさか「電飾を付けまくった機械のキリンを持ってくる人がいるとは思ってなかった」という。だが、それが何年も続き、規模はどんどん大きくなった。

電飾を付けまくった機械のキリン
電飾を付けまくった機械のキリン

ダハティ氏は今年のサンフランシスコベイエリアで行われたメイカーフェアの様子を紹介した。参加者規模は13万人。東京も追いついてくれることを祈っているという。

https://www.youtube.com/watch?v=Wlw4qRJ5YZo

Maker Faire 2014のドローンによる空撮

2014年に行われたMaker Faireは世界全体で137回に及び、うち、アメリカ国内だけでも87回行われている。なお、実際に出展されている様々なものは、Maker Faireの公式Youtubeチャンネルで閲覧できる。

2014年に行われたMaker Faireは137回以上
2014年に行われたMaker Faireは137回以上

■これからのMakerFaireは家族が来やすいイベントに

ダハティ氏は「これからのMakerFaireはギークだけではなく、家族が来やすいイベントにしたいと思っている」という。家族連れ、すなわち子供たちが来ることで、次世代のメイカーを作りたいのだと述べて、イギリスのニューキャッスルでのメイカーフェアや、ノルウェーのオスロで行われた雪に囲まれたメイカーフェア、2日間で7万人が来場したイタリア・ローマでのメイカーフェアの様子を示した。6月にアメリカのホワイトハウスで行われたメイカーフェアでは、オバマ大統領が多くのメイカーたちと交流し、ダハティ氏も、多くのメイカーたちと共に誇りに思ったと語った。

ホワイトハウスでのメイカーフェアの様子
ホワイトハウスでのメイカーフェアの様子

米国でのメイカーフェアでは、子供たちが体験できるアクティビティとして、ワークショップ等も充実させているという。Makeでは電子機器や3Dプリンターに目がいきがち。だがそれだけではなく、段ボールにハサミでも十分、ものづくりはできる。「シンプルなものでも意義はある」と述べ、ペーパータオルの芯を使ってロボットを作った子供の作品などを紹介した。新しい技術を駆使したものだけではなく、半田ごての使い方のようなものも人気だという。

子供たち向けのワークショップも充実
子供たち向けのワークショップも充実

■同じ関心・情熱を持つ他の人と繋がる体験は素晴らしい

ダハティ氏は、「メイカーフェアに来てもらって、単に技術を消費するだけではなく、ものを作ることが楽しく満足できる活動であることに気がついてもらいたい。同じ関心・情熱を持つ他の人と繋がっていくことを体験してほしい」と語った。

また、「何かを作ることの自由を感じているのがメイカーの定義の一つだと思う。こんな時代を生きてられるのはいいことだ」と述べて、メイカームーブメントは「いかにして/どこで/何を/誰が」作るかを変えていると続けた。作り方も、作る場所も、作る対象も、作り手も変化している。アイデアさえあれば、必ずしも専門家でなくても作ることができる状況になっている。技術を単に使うのではない「ものづくり」はもちろん大変だ。だが、より、やりやすくなっている。人口も増えている。

「Free to Make」を語るダハティ氏
「Free to Make」を語るダハティ氏

■もの作りは自己表現

ただ、ものを作り始めると他人からすれば「馬鹿だなあ」と思われるようなものを作ってしまう。なぜこんなものを作ってしまったのか、他人からは全く分からないものを作ってしまう人が大勢いる。だが、それを接点として人と繋がることができる。そういう意味では意義がある。つまりものづくりは自己表現の一つでもあるのだ。「自分たちが作りたいものを作ることが意義もあるし、楽しいのだ」とダハティ氏は述べた。

自己表現としてのものづくり
自己表現としてのものづくり

また、メイカームーブメントのもう一つの特色としてコードや作り方を共有するオープンソースであることを挙げた。科学哲学者カール・ポパーによる「人生は問題解決だ」という言葉を挙げて、「問題解決に絶えず挑み、間違いを訂正することが最も良い学習方法。みんなにものを作ってみせるとフィードバックがもらえる」と語った。

経験と間違いから学ぶ
経験と間違いから学ぶ

■「おならセンサー」を販売する13歳の少年メイカー

また、一部のメイカーたちは、自分たちの活動を商業化している。「全体の2割くらいが商売をしているのではないか」と考えているという。ダハティ氏は、下半身付随で車いすで移動しているJoe Olson氏を例として示した。車椅子のジョイスティックは手が置きにくいが、彼は手も不自由なので、自分自身の手が置きやすい握りを作った。もともと機械工学をやっていて、デザインもできる人だったためスキルがあったのだ。最初は3Dプリンティングで樹脂で作ったが、そのあとに金属で3Dプリンティングしなおしたものを使っており、今では同様の問題を抱えている他の人のために、インターネットで販売している。

自分が乗る車椅子のジョイスティックを自作したJoe Olson氏
自分が乗る車椅子のジョイスティックを自作したJoe Olson氏

このほか、足ぴったりのサイズの靴を3Dプリントで作っている女性や、心臓のMRIスキャンをして、3Dプリントで模型を作って、手術前の手順を準備する小児科外科の医師の例を紹介。さらに若い13歳のメイカーQuin Etnyre氏にローマで会ったという。彼は11歳頃から電子機器を作るようになり、今はウェブサイト「QtechKnow」で自作キットを販売し、ワークショップで大人に教えたりもしている。ダハティ氏は、彼が作ったものの一つ「おならセンサー」を紹介しつつ、「誰だって作ることができるという良い例だ」と語った。

「おならセンサー」も販売
「おならセンサー」も販売

■Additive Innovation

また、追加型のものづくりとして「Additive Innovation」という概念を紹介。他の人が作ったものに付加することで新しいものを作るというものだ。さらにメイカーたちにはコミュニティの力があり、これが最終的なメイカーの強みだと考えているという。「共有することが最大の資産。技術や個人単体ではなく、サポートしあうことが一番」と述べて、クラウドファンディング「KickStarter」でのプロジェクトを続けて紹介した。

9月にニューヨークで行われたメイカーフェアでは、89のプロジェクトがKickstarterのプロジェクトになっていて、出展者のおおよそ1割が支援を受けたという。合計金額では1700万ドルにもなった。

メイカーフェアに出展されたもののなかから89プロジェクトがKickstarterに
メイカーフェアに出展されたもののなかから89プロジェクトがKickstarterに

■メイカーが持っている価値観自体がバリュー

ダハティ氏自身が自分の会社でやりたいと思っていることは「メイカーを繋ぐこと」。「他のメイカーに会うことで学ぶことが多い。世界中に仲間がいる。共有することでみんなで学んでいきたい」と述べて、プロジェクトやメイカーを繋いでいくための場所「MakerSpace.com」の活動を紹介した。

メイカーを繋ぐ
メイカーを繋ぐ

メイカーが持っている価値観自体がバリューだとダハティ氏は語った。過去のものづくりは囲い込みや秘密が多かったが、メイカーには比較的、オープンな人が多い。また組織よりも個人型であることもメイカーの特徴だ。昔は組織でないとできなかったことが今は個人でできてしまう。競争より共同する「コラボレーション」、「理論だけではなく実践」というのもそうだ。他人任せではなく「自分が主体になってやる」という価値観もある。

メイカーたちが持っている価値観自体がバリュー
メイカーたちが持っている価値観自体がバリュー

■パーソナルでソーシャルなメイカー・ムーブメント

ダハティ氏は再度「すべての子供はメイカーだ」「フェアをファミリーが来やすいものにしたい」と語って子供たちの話を強調。「ものを作るのが一番の学習だということを子供たちは知っている。自然な好奇心が教育には重要だ。興味があればもっと学びたくなる。子供にはチャレンジさせるべきだ。教育にはコラボレーションが重要だ。それがメイカームーブメントにはちりばめられている」と教育論を語った。

全ての子供たちはメイカーだと強調
全ての子供たちはメイカーだと強調

最後に「メイカームーブメントはパーソナルな活動でありつつ、ソーシャルなもの。本当の意味でのイノベーションだ。積極的に取り組み、自分たちがメイカーだと認識することで、ものづくりに注目することが重要だ。それによって人生もよりよくなるし、コミュニティもよりよくなると思う」と講演を締めくくった。

パーソナルでソーシャルなメイカー・ムーブメント
パーソナルでソーシャルなメイカー・ムーブメント

TEDでのダハティ氏の講演

Text by 森山和道

ニュース

ページトップへ