分散リアルタイム制御用コントローラを用いた液冷式大出力脚ロボットが「ET2014」に出展

■分散リアルタイムシステム用ディペンダブル SoC/SiP/コントローラ

11月19日~21日の日程でパシフィコ横浜にて行われた組込み機器展「ET2014」。科学技術振興機構(JST)ディベンダブルVLSI研究領域のブースでは、リアルタイムプロセッシングコア(RMTPU)の研究を行っている慶應義塾大学 理工学部 情報工学科教授の山﨑信行氏が研究代表者として研究を進めた「分散リアルタイムシステム用ディペンダブルSoC/SiP/コントローラ」と、その実際の組込み応用例として、共同研究をしている東京大学・稲葉雅幸研究室の大出力脚ロボットと筋骨格ヒューマノイド・ロボットの体幹部分が出展されていた。

単軸ロボットの制御デモを行う慶應義塾大学教授 山﨑信行氏
単軸ロボットの制御デモを行う慶應義塾大学教授 山﨑信行氏

I/O Core SiPと大出力駆動基板H8-17Dを用いた単軸ロボット
I/O Core SiPと大出力駆動基板H8-17Dを用いた単軸ロボット

「ディペンダブル」とは単に信頼性が高いだけでなく、大規模なシステムにおいて環境変化に対しても頑健な特性を持つことを意味する。出展されていたのは組込みリアルタイムシステム(特に分散制御システム)の構築をターゲットとしてディペンダブルなSoC(System on Chip)とSiP(System in Package)の設計・実装・評価を行う研究の成果。理論的に定められた時刻までに処理や通信を完了することを保証する「ハードリアルタイム」性を実現できる。時間粒度を細かく制御することができるこのシステムを使うことで、通常のロボットでは制御周期1msec程度のところ、そのさらに1/1000、μsec単位で制御できるという。

モータ制御基板
モータ制御基板

車やロボットなど分散処理システムにおいては、それぞれのチップ間のリアルタイム通信も重要だ。そこで山﨑研究室では「Responsive Link」という並列・分散処理用の実時間通信規格を研究開発している。パケットに優先度を付けることで高優先度パケットは低優先度パケットを追い越す事ができる機能や、パケットの加減速ができる機能がある。また様々なエラー訂正符号を通信環境にあわせて動的に選択できる。国際標準化もされている(ISO 24740:2008)。

開発された制御用コントローラ
開発された制御用コントローラ

■アプリケーション:大出力脚ロボット

東大稲葉研究室 大出力脚ロボット
東大稲葉研究室 大出力脚ロボット

ヒューマノイドロボットの研究で知られる東大情報システム工学研究室(JSK)稲葉研究室の研究用の大出力脚ロボットにはこのプロジェクトで開発されたSoCのプロトタイプ「D-RMTPⅠ(Dependable Responsive Multithreaded Processor)」というチップを使った、分散リアルタイム制御用コントローラがモータードライバーとして用いられている。

搭載されているD-RMTP SiP
搭載されているD-RMTP SiP

ロボットへの実装
ロボットへの実装

「実時間動的電圧周波数制御(RT-DVFS)」機能を内蔵して省電力化しているが、発熱量が多いので液冷式を採用している。使われているのは車の不凍液用のエチレングリコールだが、実際にはただの水でも構わないという。

モーターの制御基板として用いられている
モーターの制御基板として用いられている

エチレングリコールを緑色に着色して冷却液にしている
エチレングリコールを緑色に着色して冷却液にしている

 

筋骨格ヒューマノイドにもI/O Core SiPとResponsive Link等の研究成果が用いられている
筋骨格ヒューマノイドにもI/O Core SiPとResponsive Link等の研究成果が用いられている

人が多い場所でもあり、会場で行っていたデモンストレーションは屈伸するだけと地味なものだったが、横に置かれたモニターでは、ハイジャンプしたり、蹴られてもこけないという、以前の研究成果がアピールされていた。

https://www.youtube.com/watch?v=e75e7Z7tkBI

なお会場で流されていた動画の「蹴られてもこけない脚ロボット」は今回出展されていたロボットの前モデルにあたり、研究室内では「ウラタレッグ」と呼ばれていた(HRP3L-JSK)。その後、研究者の浦田順一氏は、同じく東大助教だった中西雄飛氏と一緒に脱東大ベンチャー「SCHAFT」を起こしDARPAロボティクス・チャレンジに出場。その直前にグーグルに買収された。現在の脚も研究者の名前をとって「ヨシトレッグ」と呼ばれているとのことだった。

なお他にも多くの東大情報システム工学研究室のOBが現在、Googleに籍を置いている。グーグルを退社したアンディ・ルービン氏に代わって、現在、同社のロボット開発チーフになったと報じられているジェームズ・カフナー(James J. Kuffner)氏もその一人だ。

ロボットは屈伸しているだけだったのでモーターはひんやりしていたが、コントローラを冷やしている冷却液のチューブを触らせてもらうと、ラジエーターを通る前のチューブははっきり分かるくらい温かくなっていた。冷却液はポンプで循環している。

冷却液のポンプとラジエータ
冷却液のポンプとラジエータ

循環して冷やしている
循環して冷やしている

ロボット脚部を後ろから
ロボット脚部を後ろから

研究分担は、慶應義塾大学が基盤ソフトウェアと基盤ハードウェア、NEC アクセステクニカが基盤パッケージ、東京大学がアプリケーション担当となっている。

基盤パッケージはNECアクセステクニカ
基盤パッケージはNECアクセステクニカ

Text by 森山和道

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