第1回国際次世代農業EXPOレポート:IoTを地で進む

第1回国際次世代農業EXPOが10月15日~17日の日程で開催された。会場である幕張メッセでは、併催として国際フラワーEXPO、国際ガーデンEXPO、国際農業資材EXPO、国際道工具・作業用品EXPOもあり、またそれぞれのEXPOを横断しやすいのも特長で、小さなブースがところ狭しと並び、密度としてはCEATEC以上といったところだ。

さて、次世代農業EXPOとはなんだろうなぁというだけで足を運んだのだが、第1回ということもあり、センサニングを見せるブースもあれば、クラウドサービスの紹介があったかとおもえば、ジェラートが配布されていたり、バームクーヘンの製造機器のデモがあったりとけっこうカオスだった。(あと美味しかった)。それらの中で気になったのは、センサニングやネットワークを利用しての農業支援だ。IoTを活用する場として捉えているメーカーが多く、温度や湿度などの基本データのみならず、ハウスの開け閉めもリモートにするなど、ITを取り入れる農業の姿が見えた。これには若年層がITに馴染んでいるのもあるし、高齢化が進むなかでの日々の確認を楽にしたいというのもあり、急速に広まっているようだ。

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出口にあった看板。実際のところ、1日で回りきるのは難しいほど、巨大だ

2015年の出展申し込みもでかでかと行われ、見ている間にバリバリとブースが売約済みになっていった。CEATECでもやってほしい、これ
2015年の出展申し込みもでかでかと行われ、見ている間にバリバリとブースが売約済みになっていった。CEATECでもやってほしい、これ

下記でいくつか紹介していくが共通している点は、開発が現場ベースであること。操作も設置も維持も確認もスムーズな仕様になっており、開発者ありきのUX・UIが見受けられず、好感が持てた。端的にいえば、機器を設置してスイッチをオンにするだけでOKといった具合だ。

・「e-案山子」-PSソリューションズ

3G/LTEネットワークを使用してセンサニングから得られた情報をクラウド上で確認できるサービス。説明員によると日立とソフトバンクの協業だという。センサーネットワークはゲートウェイとなる端末のみにデータ通信機能があり、ノードは920MHz帯(後述するWi-SUNと思われる)でデータをゲートウェイに送信。まとめられたデータはクラウドサーバーに集約され、PCやスマホ・タブレットからチェックできるというもの。これまで農業は長い経験による「勘」に頼る部分が多かったが、若い人の農業参入ハードルを下げつつ、また高齢化する農家の負担を減らすことを第一に開発したそうだ。それもあって、センサーノードに必要なセンサーを取り付け、スイッチをオンにするだけでシステム全体が機能するようになっており、導入はもとよりデータの確認もとても容易になっている。テストケースではTVで確認することもあったそうで、このあたりの柔軟さは、現場の声から作り上げたことで生まれたともいえるだろう。

展示されていたパネル。3ステップになっているが、導入から運用までもこのステップだ
展示されていたパネル。3ステップになっているが、導入から運用までもこのステップだ

センサーノード。本体下部から伸びているのがセンサーで、本体中央にあるのはスイッチのみ。ユーザー側が設置場所に応じて必要なセンサーを取り付けるだけでいい仕様になっている。当然、防水・防塵設計
センサーノード。本体下部から伸びているのがセンサーで、本体中央にあるのはスイッチのみ。ユーザー側が設置場所に応じて必要なセンサーを取り付けるだけでいい仕様になっている。当然、防水・防塵設計

・手軽に広域センサニングを行なえる「dataSamplr」-アイ・エス・ビー

Wi-SUNと呼ばれる通信規格を使用して、広域センサニングを簡易に作り出せるのがdataSamplrだ。先にWi-SUNについて解説しておくと、次世代無線通信規格のひとつで、東京電力がスマートメーター用に準備を進めているものとして知られている。物理層としてはIEEE 802.15.4gで、Wi-SUNアライアンスにより標準化と普及が進んでいるとまで、筆者も覚えていたが、農作業用に展開しているのは驚きだった。

Wi-SUNは複数の周波数帯を使用可能だが、現時点では920MHz帯のみ。これは2012年にISMバンドとして認可されているため。そんな通信規格だが、特長としては低い消費電力とマルチホッピングだ。バッテリの交換は1年に1回程度でよく、設置したら電源を入れるだけでいいという。マルチホッピングは端末同士で通信してデータをバケツリレーのように送信できるもので、1端末あたり約500mの有効レンジを持つ。そのため、複数台で中継することで、広域なセンサニングをカンタンに構築できる。

dataSamplrはそういった手軽な構築に加えてデバイスを選ばない仕様になっており、APIを順次公開することで使用シーンが農家ごとで異なるケースに対応している。またブースではdataSamplrのAPIを利用して、ハウスの屋根を自動的に開閉させるデモも行なわれていた。データ管理はもちろんクラウドで、必要なデータだけ参照できるほか、分析にも対応。若い人を中心に問い合わせが多く届いているそうだ。説明員は「こういったセンサニングの部分は勘に頼る面が多かったが、ゲームみたいに楽しんでもらってもいい時代ではないか」と語ってくれた。

骨太なパネル。足を止める人は若い人ばかりだった
骨太なパネル。足を止める人は若い人ばかりだった

Wi-SUNの解説パネル。通信速度は50/100kbps。数値データの送信が主なので十分な帯域といえる。また低解像度のカメラ映像を送信することも可能なのだそうだ
Wi-SUNの解説パネル。通信速度は50/100kbps。数値データの送信が主なので十分な帯域といえる。また低解像度のカメラ映像を送信することも可能なのだそうだ

会場でデータを取得しているデモも
会場でデータを取得しているデモも

各種センサーの展示もあった。加速度センサーから見えているのは単3乾電池で3〜4本で1年は動作するそうだ。またスイッチを入れるだけでOKなところもいい
各種センサーの展示もあった。加速度センサーから見えているのは単3乾電池で3〜4本で1年は動作するそうだ。またスイッチを入れるだけでOKなところもいい

・Android搭載の「スマート野菜工場」-SERAKU

発表自体は2013年となるが、かっこよかったので紹介しよう。スマート野菜工場はAndroidをOSとして採用し、のぞき窓に各種メニューが表示され、それをタッチ操作することで管理できるものだ。コンパクトな工場として成立しており、人工照明と水耕栽培で野菜を育てることができる。コンパクトな工場と表記したように現時点では大規模ではなく、ハイエンドな家庭菜園や飲食店へのプッシュを進めているという。またAndroidはセンサー情報の確認のほか、ネットワークに接続することで出先から状況を確認したり、SNSに投稿したりといった機能もある。

Samsung製の赤外線タッチパネルと透明液晶を採用している。メニューや情報がレイヤー表示されていて、けっこうかっこいい
Samsung製の赤外線タッチパネルと透明液晶を採用している。メニューや情報がレイヤー表示されていて、けっこうかっこいい

椅子と比較するとわかるが、意外にも小さい。制御としては日長、光の波長、水温、風量に対応。またカメラを接続すればその様子をFacebookにも投稿できる。外部からの操作はブラウザ経由で対応しているそうだ
椅子と比較するとわかるが、意外にも小さい。制御としては日長、光の波長、水温、風量に対応。またカメラを接続すればその様子をFacebookにも投稿できる。外部からの操作はブラウザ経由で対応しているそうだ

現時点ではやや大型だが、小型化は可能だそうで、よりコンパクトなものも要望次第で開発が実現するかもしれない
現時点ではやや大型だが、小型化は可能だそうで、よりコンパクトなものも要望次第で開発が実現するかもしれない

・そのほか気になったもの

さて、国際次世代農業EXPOでブースを見るほとんどの人がジェラートやバームクーヘン、野菜などをもぐもぐしながらIoTや太陽光パネルをチェックという、なんか不思議な空間だったのだが、気になったものを見てみよう。太陽光発電パネルは高効率なものが多く展示されていたが、いずれもシェア前提。複数の農家での導入や自治体レベルでの導入を狙う動きが目立った。意外なものとしては、オンラインショップ向けの展示だろう。農家でそのまま撮影してオンラインで販売するのはすっかり当たり前で、そうなると製品の撮影がネックになる。その部分を簡略化できるものとしては、ライトバンクの低価格化で需要の高さがわかるだろう。そんな展示はないだろうと思っていたら、大手量販店でも見かけるフォトラのブースがあった。

フォトラ。面光源と開いたパネルでさらに上からの光を当てられるため、コンパクトながら光を回しやすい。持っている読者もいそうだ
フォトラ。面光源と開いたパネルでさらに上からの光を当てられるため、コンパクトながら光を回しやすい。持っている読者もいそうだ

世界初として売り出していたのは、ワインボトル撮影対応モデル「ボトラ」。フォトラにアクリルパネルとアクリルパネルの固定部材などをセットにしたもの
世界初として売り出していたのは、ワインボトル撮影対応モデル「ボトラ」。フォトラにアクリルパネルとアクリルパネルの固定部材などをセットにしたもの

「ボトラ」一式。知識があればDIYできるものだが、そうでもない人が圧倒的に多いそうで、こうすればOKなキットを考えた結果だという。実際のところ、すごく撮影しやすく、スマホで撮っても映えるように部材を選んだそうだ
「ボトラ」一式。知識があればDIYできるものだが、そうでもない人が圧倒的に多いそうで、こうすればOKなキットを考えた結果だという。実際のところ、すごく撮影しやすく、スマホで撮っても映えるように部材を選んだそうだ

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国際道工具・作業用品EXPOで見かけたHaiLan 気化式冷風機/HPシリーズ。24インチスタートの巨大な扇風機だ。ある程度、距離を取れば水分の付着はだいぶ抑えられるのでPCの冷却ネタによさそうだった

 

 

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