歴代CPUらも多数展示されたインテル「ムーアの法則50周年」記念説明会レポート~1965年にスマホやクルマの自動運転も予測

インテル株式会社は21日、東京都千代田区にある科学技術館において、ムーアの法則を祝う記者説明会を開催した。ショーケースではIntelの歴代プロセッサも展示された。

■ムーアの法則とは?

記者発表会では、インテル株式会社取締役兼副社長執行役員技術開発・製造技術本部本部長の阿部剛士氏が登壇し、ムーアの法則の歩みや経済、社会、技術に与えた影響などが紹介された。

阿部氏は、ムーアの法則の誕生が4月19日で50周年を迎えたと紹介。この日付については、Intelの共同創設者であるゴードン・E・ムーア氏の論文が掲載された米国の学会誌「Electronics Magazine」が発刊されたのが1965年の4月19日だということだ。その論文にある一節の日本語訳が紹介されたので全文引用しておこう。

「安価な集積回路の複雑性は、これまで毎年約2倍の比率で増大してきました。長期的に見て、少なくともこの先10年は、この増加率が続くと思われます」
「集積回路による電子部品の大きな魅力の1つはコスト削減であり、単一の半導体基板により多くの回路機能を実装できるよう、(半導体)技術が進化すればするほど、コスト優位性はさらに高くなっていきます」

これを見て「あれ?」と思った方もいるかもしれない。この時点の記述によれば「プロセッサの性能(=半導体の集積度)は毎年2倍のペースで増加する」ということなのだが、実はその後、1975年に「約2年で2倍」と予測を訂正しており、その「半導体の集積技術は約2年で2倍になる」が「ムーアの法則」として定着している。ちなみに、「ムーアの法則」と名付けられたのは後のことで、当時は「ムーアの予測」とされていた。

インテル株式会社取締役兼副社長執行役員技術開発・製造技術本部本部長の阿部剛士氏。ムーアの法則が世界に与えた影響やインテルの今後などについて説明した
インテル株式会社取締役兼副社長執行役員技術開発・製造技術本部本部長の阿部剛士氏。ムーアの法則が世界に与えた影響やインテルの今後などについて説明した

論文掲載時の「ムーアの予測」の内容。当時は進化のペースを年2倍としていたが、後に「2年で2倍」に訂正されている
論文掲載時の「ムーアの予測」の内容。当時は進化のペースを年2倍としていたが、後に「2年で2倍」に訂正されている

ムーアの法則によるトランジスタの進化(マイクロプロセッサの性能比較ではない)。1971年から性能は3,500倍、電力効率は9万倍、トランジスタ単価は6千分の1になったという
ムーアの法則によるトランジスタの進化(マイクロプロセッサの性能比較ではない)。1971年から性能は3,500倍、電力効率は9万倍、トランジスタ単価は6万分の1になったという

「ムーアの法則」は、米国の学会誌「Electronics Magazine」に掲載されたムーア氏の論文に含まれている。その号の発刊日が1965年の4月19日だった
「ムーアの法則」は、米国の学会誌「Electronics Magazine」に掲載されたムーア氏の論文に含まれている。その号の発刊日が1965年の4月19日だった

■1965年当時から自動車の自動制御の実現やスマートフォンの登場を予見

阿部氏は、トランジスタの進化がもたらす恩恵として「高性能」「電力効率」「低コスト」を挙げ、ムーアの法則で示されたトランジスターの進化がいかに急速なものであったかを説明するために、自動車にたとえた。仮に、1971年から自動車がムーアの法則と同じペースで進化したとすれば、今ごろは速度は時速48万2,799kmに、燃費はリッターあたり85万kmに、製造コストはわずか4セントになっていると紹介した。

続いて、阿部氏は、ムーア氏の論文の先見性について言及した。イラストとともに論文の一部(日本語訳)が紹介されたので、こちらも引用しておく。

「集積回路により、家庭用コンピューター、自動車の自動制御、個人用の携帯通信機器など、素晴らしいものが生まれるでしょう。ディスプレイだけの電子腕時計が実現するでしょう」

1965年当時の論文においてすでにハンディコンピューター(スマートフォン)の登場や自動車の自動制御ができること、Apple Watchのようなデバイスの登場も想定していた。

阿部氏は、ムーアの法則の大きな功績として、進化のペース(2年に2倍)をセッティングしたことを挙げ、半導体業界の継続的な発展に大きな貢献を果たしたとした。

もし、自動車のすべての製造技術がムーアの法則と同じペースで進化したら……速度は、時速48万2,799km、燃費はリッターあたり85万km、製造コストはわずか4セントになっている計算になる
もし、自動車のすべての製造技術がムーアの法則と同じペースで進化したら……速度は、時速48万2,799km、燃費はリッターあたり85万km、製造コストはわずか4セントになっている計算になる


1965年のムーア氏の論文に添えられたイラスト。中央の売店の看板に「HANDY HOME COMPUTERS」という文字が見える

ムーア氏は、1965年当時の論文においてすでにハンディコンピューター(スマートフォン)の登場や自動車の自動制御の実現を予測していた
ムーア氏は、1965年当時の論文においてすでにハンディコンピューター(スマートフォン)の登場や自動車の自動制御の実現を予測していた

阿部氏は、ムーアの法則の半導体業界における大きな功績として、進化のペース(2年に2倍)をセッティングしたことだと強調した
阿部氏は、ムーアの法則の半導体業界における大きな功績として、進化のペース(2年に2倍)をセッティングしたことだと強調した

■ムーアの法則継続を支えてきた技術

阿部氏は、ムーアの法則のインパクトは、経済、社会、技術という要素があると語る。経済への影響としては、コストを強調。トランジスタあたりの製造コストとアクティブ電力が右肩下がりに進化していることを紹介した。世界のトップ20企業(2014年Interbrand社調べ)の半数が、ムーアの法則によって起きたイノベーションのうえで付加価値を生み出している(ビジネスに半導体を利用している)企業が半数を占めていることなどを紹介した。

社会的な影響としては、半導体のさまざまな機器への活用、インターネットに接続するデバイスの増加を挙げた。現在インターネット人口は25億人を超えているが、2020年には40億人に達し、全人口の過半数を超えるという予測を紹介した。

技術面の影響として、半導体の製造技術の革新を挙げる。ムーアの法則が50年継続してきた背景には、ムーア氏の先見性とともに、ムーアの法則の継続を目標として、技術革新を繰り返してきたことがある。

阿部氏はIntelのプロセス技術の歴史を紹介しつつ、その歪みシリコン、High-kメタルゲート、3Dトランジスタといったイノベーション技術を導入してきたことを紹介した。半導体製造技術を単純に微細化することで性能向上できたのは2000年頃までであり、その後はリーク電流などの課題からムーアの法則を継続することができない危機にも直面したが、これらの技術の導入によって乗り切ってきた。今後もムーアの法則継続に向けて研究開発を続けていくとした。

なお、Intelの最新プロセスルールは14nmだが、すでに次世代の10nmを開発中だ。そして「サブ10」と呼ばれる10nm以下のプロセスルールも研究段階にあることを紹介した。

ムーアの法則(半導体の集積技術向上)の直接的な利点として、トランジスタ単価の低下、アクティブ消費電力の低下を紹介した
ムーアの法則(半導体の集積技術向上)の直接的な利点として、トランジスタ単価の低下、アクティブ消費電力の低下を紹介した

世界のトップ20企業のうち半数が半導体を利用してビジネスの付加価値を生み出している。ムーアの法則にイノベーションの恩恵を受けている
世界のトップ20企業のうち半数が半導体を利用してビジネスの付加価値を生み出している。ムーアの法則にイノベーションの恩恵を受けている

ムーアの法則の社会的な影響として、半導体のさまざまな機器への活用、インターネットに接続するデバイスの増加を挙げた。2020年には40億人に達し、全人口の過半数を超えるという予測を紹介した
ムーアの法則の社会的な影響として、半導体のさまざまな機器への活用、インターネットに接続するデバイスの増加を挙げた。2020年には40億人に達し、全人口の過半数を超えるという予測を紹介した

Intelのプロセス技術の歴史
Intelのプロセス技術の歴史

微細化を可能にしてきたイノベーション。銅配線、歪みシリコン、High-kメタルゲート、FinFET(3Dトランジスタ)などが導入されてきた
微細化を可能にしてきたイノベーション。銅配線、歪みシリコン、High-kメタルゲート、FinFET(3Dトランジスタ)などが導入されてきた

最新の14nmに続く10nmのプロセス技術を開発中。「サブ10」プロセスも研究段階に入っている
最新の14nmに続く10nmのプロセス技術を開発中。「サブ10」プロセスも研究段階に入っている

50周年を記念して作成されたムービーが上映された
50周年を記念して作成されたムービーが上映された

ムーアの法則はテクノロジーの進化を推進するとともに、膨大な経済的な価値を生み出し、社会の発展にも大きく貢献した
ムーアの法則はテクノロジーの進化を推進するとともに、膨大な経済的な価値を生み出し、社会の発展にも大きく貢献した

■パッケージ技術、プラットフォームの進化を振り返る

阿部氏に続いて登壇したインテル株式会社執行役員技術本部本部長の土岐英秋氏は、Intelの歴史を紹介し、パッケージ技術の進化を紹介。開発コードネーム「Tillamook」と呼ばれたモバイル向けMMX Pentiumに採用されたTCP(Tape Carrier Package)の思い出などマニアックな話題も展開された。また、プラットフォームやユーザーインターフェイスの進化などについても振り返った。

今回の説明会が行われた科学技術館において、今年の夏期休暇期間(時期未定、約2週間)にムーアの法則 50周年記念展示を行う予定も明らかにされた。ムーアの法則にちなんだショーケース展示やビデオの上映、担当者による説明コーナーなどが用意される予定で、具体的な日程などは追ってインテルのWebサイトで公開される予定になっている。

モバイル向けに開発した非常に薄いTCPパッケージを手にするインテル株式会社執行役員技術本部本部長の土岐英秋氏。特に思い入れの強いパッケージだという
モバイル向けに開発した非常に薄いTCPを手にするインテル株式会社執行役員技術本部本部長の土岐英秋氏。特に思い入れの強いパッケージだという

Intelは1968年、ロバート・ノイス氏とゴードン・ムーア氏の2人により、創設された
Intelは1968年、ロバート・ノイス氏とゴードン・ムーア氏の2人により、創設された

当初はメモリビジネスからCPUビジネスへと戦略を転換。微細化とともにパッケージも進化してきた。DIPから、PGA、LGAへと進化した
当初はメモリビジネスからCPUビジネスへと戦略を転換。微細化とともにパッケージも進化してきた。DIPから、PGA、LGAへと進化した

最後にゴードン・ムーア氏の言葉が紹介された。Intel社員の心の支えとなっているという
最後にゴードン・ムーア氏の言葉が紹介された。Intel社員の心の支えとなっているという

会場内には、ムーアの法則50周年を祝う展示が用意された
会場内には、ムーアの法則50周年を祝う展示が用意された

世界初のマイクロプロセッサ4004
世界初のマイクロプロセッサ4004

8086は、NEC-9801シリーズの初代モデルに採用された
8086は、NEC-9801シリーズの初代モデルに採用された

マルチタスクを可能にした80286、Intel386は32bitのアーキテクチャを採用した
マルチタスクを可能にした80286、Intel386は32bitのアーキテクチャを採用した

Intel 386の後継として多くのIBM互換機、およびPC-9801シリーズに採用されたIntel 486
Intel 386の後継として多くのIBM互換機、およびPC-9801シリーズに採用されたIntel 486

Pentiumは、Windows 95とともに爆発的なヒットを記録し、Intelブランドを確固たるものとした。Pentium Proはパッケージ内にCPUコアと2次キャッシュを統合していた
Pentiumは、Windows 95とともに爆発的なヒットを記録し、Intelブランドを確固たるものとした。Pentium Proはパッケージ内にCPUコアと2次キャッシュを統合していた

Pentium II、Pentium IIIは、「S.E.C.C.(Single Edge Contract Cartridge)」と呼ばれるカートリッジで提供された。マザーボードとのインターフェイスには「Slot1」と呼ばれるスロットが採用された
Pentium II、Pentium IIIは、「S.E.C.C.(Single Edge Contract Cartridge)」と呼ばれるカートリッジで提供された。マザーボードとのインターフェイスには「Slot1」と呼ばれるスロットが採用された

マイクロアーキテクチャを大きく転換したことで話題となった初代Pentium 4
マイクロアーキテクチャを大きく転換したことで話題となった初代Pentium 4

Core 2 Duoから、マイクロアーキテクチャレベルで電力効率を強く意識するように転換。以来、性能とともに電力効率も向上めざましい
Core 2 Duoから、マイクロアーキテクチャレベルで電力効率を強く意識するように転換。以来、性能とともに電力効率も向上めざましい

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