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1億円で「ロンギヌスの槍」を本当に月面に刺すプロジェクトが始動!~「エヴァンゲリオン」20周年記念イベント。長さは24cm、予定時期は2015年末~2016年末

1月30日、『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』実行委員会は、アニメーション作品「エヴァンゲリオン」の20周年を記念し、作品の名シーンの再現を目指した「ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト」を作品公式プロジェクトとしてスタートすると発表し、東京・渋谷で記者会見を行った。

「ロンギヌスの槍」を持つ加藤夏希さんと宇宙飛行士の山崎直子さん
「ロンギヌスの槍」を持つ加藤夏希さんと宇宙飛行士の山崎直子さん

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月面に刺す予定の「ロンギヌスの槍」は24cm
月面に刺す予定の「ロンギヌスの槍」は24cm。これはレプリカ

月面に刺す「ロンギヌスの槍」はチタン合金製でサイズは24cm。重さはおよそ30g。プロジェクト実施予定時期は2015年末~2016年末。

「エヴァンゲリオン」は1995年にスタートしたアニメーション作品。今年20周年を迎える。そこで記念すべき20周年という節目に、作品中でエヴァ零号機によって投げられた「ロンギヌスの槍」が月面に到達するシーンの再現を目指す作品公式プロジェクトを発足させた。

エヴェンゲリオン初号機と「ロンギヌスの槍」
エヴェンゲリオン初号機と「ロンギヌスの槍」

『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』実行委員会とは、株式会社グラウンドワークス、株式会社グレートワークス、株式会社サニーサイドアップ、株式会社kiCk、株式会社スティーブンスティーブンら有志メンバーからなる組織。主幹事はエヴァンゲリオンの版権管理会社である株式会社グラウンドワークス。

今回のイベントは「エヴァンゲリオン」の象徴的なアイテムである「ロンギヌスの槍」を「月に刺す」という形で、アニメ作品と月面とが“物理的に”接触する史上初の試みとなるとしている。

シンボルマークのデザインは山下いくと氏
シンボルマークのデザインは山下いくと氏

■資金調達にはクラウドファンディング「READYFOR?」を利用

月面への輸送に必要な資金の調達には、国内最大手のクラウドファンディングサイト「READYFOR?」が協力する。日本のクラウドファンディング史上最高額である1億円の調達を目標とする。「READYFOR?」での本プロジェクトのサイトはこちら。実施期間は1月30日から4月5日23時まで。

クラウドファンディング「READYFOR?」を利用
クラウドファンディング「READYFOR?」を利用

なお支援者には1万円コースではイメージビジュアルポスター等、5万円コースでは名前がロンギヌスの槍と一緒に月に届く権利、10万円コースではレプリカ、1,000万円コースでは刀匠によるロンギヌスの槍(ヱヴァンゲリヲンと日本刀展特別協力)が送られる。1,000万円コースは限定1名のみ。詳細はサイト参照のこと。

1万円コース
1万円コース

5万円コース
5万円コース

1,000万円コース
1,000万円コース

そのほかの特典
そのほかの特典

今回のプロジェクトについて、「エヴァンゲリオン」の原作・総監督である庵野秀明氏は、以下のコメントを寄せている。

空想、妄想の世界を描いたアニメ作品の表現が、現実の世界で本気の遊び、エンターテイメントとして再現される計画に、驚きと喜びと感慨と深い感謝を覚えます。成功を祈ります。

■会見には宇宙飛行士の山崎直子さん、女優の加藤夏希さんも登場

会見にはプロジェクト実施開始を記念し、宇宙飛行士の山崎直子さん、エヴァンゲリオンファン代表として女優の加藤夏希さんが登場した。

宇宙飛行士の山崎直子さんは「1kgを軌道上に運ぶのに1億円くらいかかる」と宇宙への輸送の難しさを紹介。また「日本人にとって月は愛でる対象。そこに着陸させるのはものすごい試み。宇宙も手に届くものになってきた」と語った。

加藤さんは「アニメのシーンが本当に実現するのはすごい」と述べ、「成功したら教科書に載せてほしいですね」と語った。

女優の加藤夏希さん(左)と宇宙飛行士の山崎直子さん(右)
女優の加藤夏希さん(左)と宇宙飛行士の山崎直子さん(右)

加藤夏希さん。エヴァンゲリオンファンとして知られる。
加藤夏希さん。エヴァンゲリオンファンとして知られる。

http://youtu.be/d1W1nKNC9ng

月面に刺す予定の「ロンギヌスの槍」を持つ加藤夏希さん

■月面への打ち上げ・輸送、「ロンギヌスの槍」の射出はチーム「HAKUTO」が技術協力

月面への打ち上げ・輸送、「ロンギヌスの槍」の射出に関しては、株式会社ispaceが運営する日本初の民間月面無人探査プロジェクトチーム「HAKUTO(ハクト)」が技術協力する。

チーム「HAKUTO」
チーム「HAKUTO」

「HAKUTO」は、Google による賞金総額3,000万ドルの国際宇宙開発レース「Google Lunar XPRIZE」に挑戦するチーム。日本からは唯一の参加チームである。

HAKUTO開発の月面探査ローバー「Moonraker」と「Tetris」
HAKUTO開発の月面探査ローバー「Moonraker」と「Tetris」

月面探査ローバー「Moonraker」と「Tetris」を開発しており、振動試験、熱真空試験、フィールド走行試験などの宇宙環境試験の実施を経て、先ごろ(米国時間2015年1月26日)に行われた「Google Lunar XPRIZE」中間賞授賞式で、モビリティサブシステム中間賞を受賞し、賞金50万ドルを獲得した。参加18チーム中上位5チームに入っていることが認められたかたちだ。また、株式会社IHI、ジグソー株式会社とスポンサード契約を結んでいる。

概要図。着陸船(ランダー)に付いている黒い箱に槍が付けられている
概要図。着陸船(ランダー)に付いている黒い箱に槍が付けられている

射出装置
射出装置

「ロンギヌスの槍」の射出は、基本的には別プロジェクトだが、HAKUTOのローバーが探査を行う際に、ほぼ同時に行う予定だ。射出装置はローバーを月面に下ろすランダーか、ローバーを覆うエンベローブに取り付けられ、槍はそのまま射出される。重さは槍込みでおよそ600g~700gとなる予定。現在は基本設計段階で、詳細はこれから。射出の機構や初速をどのくらいにするかなどは検討中。

なお、クラウドファンディングで調達できた金額が大きくなればなるほど、射出装置そのものに追加機構を加えたり、予備の槍を装備したりすることができるようになるため、成功確率を高めるためにも、より多くの資金があるほうがありがたいという。

HAKUTOは2月にもう一度記者会見を行う予定があり、そのときには「Google Lunar XPRIZE」への挑戦について、より具体的な話が紹介される予定だ。

■国内最大金額のクラウドファンディング

実行委員会代表の平井真貴氏は「最初は冗談みたいな感じだったが、有志が集まり、実現可能性を探っていくなかで、HAKUTOと出会った」と経緯を語った。そこからコスト調達などに話を進めて、クラウドファンディングで調達となったという。

『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』実行委員会代表の平井真貴氏と森脇氏
『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』実行委員会代表の平井真貴氏と森脇氏

同プランナーの森脇氏は、「エヴァンゲリオンは元々ファンの手によって盛り上げられたものなので、今回もファンの手で盛り上げてもらう、一緒に楽しんでもらうことがふさわしいのではないかと考えて、クラウドファンディングという手法を取った」と語った。

チーム・ハクト代表、株式会社ispace代表取締役社長 袴田武史氏
チーム・ハクト代表、株式会社ispace代表取締役社長 袴田武史氏

チーム・ハクト代表、株式会社ispace代表取締役社長 袴田武史氏は、HAKUTOと「Google Lunar XPRIZE」について紹介。このプロジェクトでは月面輸送と、月面への発射機構の開発を担当する。発射機構にはカメラが付いているので、発射する瞬間やその後の様子を捉えることができるという。袴田氏は、このプロジェクトについて「宇宙や月を身近な場所にするプロジェクトだ」と語った。

READYFOR株式会社 代表取締役 米良はるか氏
READYFOR株式会社 代表取締役 米良はるか氏

READYFOR株式会社 代表取締役 米良はるか氏は、「一緒に成功まで歩んでいきたい」と述べ、クラウドファンディングの仕組みを紹介した。「READYFOR?」は総支援額10億円。プロジェクト掲載数は約2,000。達成率は65%。今まで最高調達額は2,200万円だったという。65日以内に1億円の資金調達を目指すこのプロジェクトは大きなものになる。このプロジェクトを通じてクラウドファンディングの発展を目指していきたいと述べた。

■クラウドファンディングを体験するデモも

加藤さんは実際にクラウドファンディングを体験するデモを行った。デモにも関わらず加藤さんは熱心に応援商品を選んでいた。

クラウドファンディングを体験する加藤夏希さん
クラウドファンディングを体験する加藤夏希さん

http://youtu.be/WASRGUEB7AI

クラウドファンディングを体験する加藤夏希さん

加藤さんはクラウドファンディング体験を通して「ファンは会ったことがなくても同じ目的を共有できて共感できる」と語り、「ファンとしてはとても嬉しい。これからもエヴァンゲリオンを応援したい。65日しかないので悩んでいる暇はありません。お財布から『サービス、サービス!』して頂きたい」と続けた。

山崎氏は「HAKUTOとエヴァンゲリオンがコラボして壮大な夢を実現してもらいたい。月は日本人にとって大事な象徴。『ロンギヌスの槍』が地球と月を繋ぐ絆になってもらって、平和な世界を構築してもらいたい」と述べた。

金額が集まれば集まるほど、様々なオプションが可能になるという
金額が集まれば集まるほど、様々なオプションが可能になるという

(c)カラー
イラスト:山下いくと

Text by 森山和道


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