「はやぶさ2」は何事もなくすべて順調~JAXA、小惑星探査機「はやぶさ2」初期機能確認期間の運用状況を報告

独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、1月28日、小惑星探査機「はやぶさ2」初期機能確認期間の運用状況を報告する記者会見を行った。JAXA 月・惑星探査プログラムグループ はやぶさ2プロジェクトチーム プロジェクトマネージャの國中均(くになか・ひとし)氏は、「たいへん順調。探査機の状態は万全」と語った。

■小惑星探査機「はやぶさ2」とは?

小惑星探査機「はやぶさ2」(Hayabusa2)は、2014年12月3日にH-IIAロケット26号機で打ち上げられた探査機で、太陽系の起源・進化と生命の原材料物質を解明するために、岩石質の小惑星で有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられている差し渡し900m程度のC型小惑星「1999JU3」を目指している。

「はやぶさ2」は、2010年6月に地球に帰還し、S型小惑星「イトカワ」のサンプルを持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)の後継機にあたる。始原的な天体であるC型小惑星から採取したサンプルを分析することで、太陽系初期に原始太陽系星雲にあった有機物や水の状態を理解することが目標だ。それらがどのように相互作用してきたかを探ることは、生命の起源にも関わる問題だという。

技術的には、「はやぶさ」で実証した技術をより発展させて深宇宙探査技術を確立することを目標としている。そのため基本構造は「はやぶさ」とほぼ同じだが、いくつか異なる点がある。例えば「はやぶさ」ではお椀型だったアンテナが「はやぶさ2」では平面アンテナになるなど、「はやぶさ」以降に進展した技術を導入している。また、イオンエンジンの電流を130mAから170mAまで増強させ、推力も7mNから10mNに向上し、長寿命化している。キセノンガスを供給する部品なども、よりきめ細やかに制御して安定供給できる部品などを用いることができているという。

到着予定は2018年半ば。1年半ほど小惑星に滞在して2019年末頃に小惑星から出発し、2020年末頃に地球に帰還する予定となっている。

JAXA 月・惑星探査プログラムグループ はやぶさ2プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 國中均氏
JAXA 月・惑星探査プログラムグループ はやぶさ2プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 國中均氏

月・惑星探査プログラムグループ はやぶさ2プロジェクトチーム ミッションマネージャ 吉川真氏
月・惑星探査プログラムグループ はやぶさ2プロジェクトチーム ミッションマネージャ 吉川真氏

■初期機能確認 いずれも正常に終了

現在、「はやぶさ2」は、探査機の初期機能確認期間にあり、搭載機器と地上システムの動作確認を順次実施している。実施機関は約3ヶ月で、2015年2月末頃までが予定されている。

現在までに確認された探査機の状態は正常。順次、初期機能確認を実施している。今後1ヶ月の初期機能確認期間で、「定常運用移行に向けた複数機器の連係動作等の機能確認」を実施する予定としている。


これまでの実施項目

主な試験実施項目については以下のとおり。

まず4機のイオンエンジンの試運転を2014年12月23日~26日にかけて1台ずつプラズマ点火と推力の発生を実施し、稼働を確認。軌道上で推力(7~10mN)を発生させた。

2015年1月5日~10日にかけては、深宇宙Ka帯通信を確立した。日本の探査機としては初めてとなるもので、これにより、探査機とNASA深宇宙ネットワーク各局との間での精密な位置決定のための測定(レンジング)などの機能が正常であることを確認した。なお日本国内にはKa帯受信設備がない。

なおKa帯通信は小惑星近傍に滞在するときのミッション運用時において、観測データ伝送用に使用される。Ka帯では32KBbpsの通信が可能であり、これまで用いていたX帯通信に比べて4倍の大容量データ伝送量となり、より確実な運用に繋がるという。

1月19日~20日にはイオンエンジンの複数台・長期運転を実施。まず2台のエンジン(A、D)による長時間連続稼働を実施し、探査機のエンジンシステムが地上からの監視なしで自律制御できることを確認した。A、C、Dの3台の運転は1月16日に実施し、28mNの推力が発生し、正常に稼働していることを確認した。当面はBをバックアップとして運用していくという。

イオンエンジン24時間連続自立運転を達成し、喜びに沸く管制室
イオンエンジン24時間連続自立運転を達成し、喜びに沸く管制室

今後はイオンエンジン(IES)のジンバルの向きを変えて推力の方向を微妙に調整することで、姿勢制御用リアクションホイールの回転数を安定化させる「IESアンローディング」などのテストを行う。リアクションホイールは推進材を用いずに姿勢変更ができるが、適正な回転数に抑えるためにモーメントを放つアンローディングという作業を行う必要がある。これをイオンエンジン(IES)を用いて行うのがIESアンローディングだ。

イオンエンジンは推力方向を調整できるジンバルがついている。本来は重心を押すようになっているが、それをわざとずらすと、回転力が発生する。これを利用して、リアクションホイールの回転数を一定のところに合わせることができる。ただし、IESアンローディングでは、Y軸まわりとZ軸まわりの回転数を調整できるが、X軸まわりは調整できない。だからそこはスラスタを使ってアンローディングする。

軌道決定に関わる精密な制御を行うためには、探査機に関わる力を精密に測定する必要がある。探査機の表面の反射率や形状に依存する太陽の輻射の力は、宇宙に出てみないと測定も難しいという。だから探査機の姿勢を変えるなどして、微小な力を計測する必要があるという。そのような測定も今後行っていく。

またリアクションホイールは4台搭載している。宇宙機では「スキュード」という四角錐の4つの斜辺に沿ったかたちでリアクションホイールを搭載するのがセオリーなのだが、今回はZ軸方向に2機のリアクションホイールを搭載している。「はやぶさ」の知見を活かしたものだ。イオンエンジンの運転がない場合は、Z1軸だけで姿勢制御を行い、また輻射圧を利用した姿勢制御を行っていきたいと思っているという。

■今後

今後は3月くらいを目処に巡航運転フェーズに入る予定。2015年12月頃に地球に再び接近し、地球の引力を使って加速する地球スイングバイを行って、小惑星への遷移軌道に乗る予定。

また、オフライン系の仕事としては、小惑星に接近し観測を行い、小惑星からサンプルを採取するときのための計画をより詳細に詰める。國中氏は「より戦略的・計画的に小惑星の資料採取を行いたい。どういう順番で観測するか段取りを決める計画、ソフトウェアツールの開発などを本年度から着手する予定。小惑星観測に向けての作り込みを行っていきたい」と述べた。また、キュレーション設備のための充足、サンプル分析するためのフレームワークの取り組みも始めているという。平行して、着陸予定地であるオーストラリア政府との話も詰めていく。


「はやぶさ2」の航行位置


回転座標系による位置

「はやぶさ」のときは初期調整の段階で1基のスラスターの推量が安定しないというトラブルが発生し、残りの3つを使って小惑星に向かう軌道変換に入った。冗長系を組んだが早々にそれが機能しなくなったわけで、危ない状態にあった。今回は4基とも安定して動いている。

イオンエンジンは真空やガス濃度が安定でないとうまく動かないという。特に打ち上げ直後は探査機自体から揮発するガスがあり、それも安定しない理由になるという。今回はガスを十分に揮発させる必要があるという知見を活かし、ガスを揮発させるためにヒーターや太陽光を使って温度を上げる「ベーキング」という作業に時間をかけた(12月19日~22日)。そういった工夫をした上でエンジンの運転に取りかかった。國中氏は「『やったな』という感覚でおります」と感想を述べた。

また、探査計画全体のシステム作りの課題として、ハードウェアだけではなく、人を育てて準備するという課題もあると述べた。

(写真提供:JAXA)

Text by 森山和道

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