VR作品「無限回廊 Unlimited Corridor」も体験可-第20回文化庁メディア芸術祭受賞作品展が開催中

受賞者による記念撮影

 「第20回文化庁メディア芸術祭受賞作品展」が新宿・初台にあるNTTインターコミュニケーションセンター[ICC]と東京オペラシティ アートギャラリーにて開催されている。会期は9月16日(土)〜9月28日(木)までの13日間。入場料は無料。

 アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門で世界88カ国・地域から寄せられた4,034作品のなかから選ばれた受賞作品と功労賞受賞者の功績が紹介されている。

 今回のアート部門大賞はRalf Baecker氏の「Interface 1」。192個のモーターを使ったキネティック・インスタレーション作品だ。

Ralf Baecker氏「Interface 1」

© 2016 Ralf Baecker

 モーターは環境放射線を計測するガイガー=ミュラー計数管と直結しており、その結果によって動き、他の糸やゴムの伸縮とからみあって、全体のかたちが決まる。

 エンターテインメント部門大賞は庵野秀明氏、樋口真嗣氏による「シン・ゴジラ」。会場では、本編抜粋映像やスケッチ、造形雛形などが展示されている。

「シン・ゴジラ」造形雛形などが展示されている

© 2016 TOHO CO., LTD

 アニメーション部門は新海誠監督作品「君の名は。」 会場では、本編抜粋映像が展示されている。

「君の名は。」展示の様子

© 2016 TOHO CO., LTD. / CoMix Wave Films Inc. / KADOKAWA CORPORATION / East Japan Marketing & Communications, Inc. / AMUSE INC. / voque ting co., ltd. / Lawson HMV Entertainment, Inc.

 マンガ部門大賞は石塚真一氏「BLUE GIANT」(小学館)。音の出ない紙の上で音楽を表現することに成功したマンガ作品だ。原画のほか楽器が展示されている。

「BLUE GIANT」展示の様子

© ISHIZUKA Shinichi / SHOGAKUKAN

 会期中には展示だけでなく、ライブパフォーマンスやシンポジウム、トークセッション、ワークショップなどが行われる。東京オペラシティ1階アトリウムには、受賞マンガ作品を読むことができるマンガライブラリーも設けられている。

受賞マンガ作品の単行本

■「Unlimited Corridor」が体験可

 VR媒体である本誌でもっとも注目すべきは、エンターテインメント部門優秀賞の「Unlimited Corridor」が実際に体験できるかたちで展示されていることだ。しかも展示場所はオープンスペース。気軽に体験できる。

 「Unlimited Corridor」は、東京大学の廣瀬・谷川・鳴海研究室と、Unity Technologies Japan合同会社の共同研究成果である(制作チーム代表:松本啓吾氏)。

「Unlimited Corridor」。エンターテインメント部門優秀賞

開発チーム。左から東京大学大学院 情報理工学系研究科 講師 鳴海拓志氏、東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 松本啓吾氏、Unity Technologies Japan 合同会社 簗瀬洋平氏

© 2016 Unlimited Corridor PROJECT Team

 「Unlimited Corridor」は、鑑賞者の空間知覚を操作することで、実際には限られた空間内なのに、無限に続く回廊を歩き回ることができるようにしたVR作品だ。

 HMD着用時に仮想空間を少しずつ回転させることで体験者の歩行方向を誤認させて操作する「リダイレクテッド・ウォーキング」と、視覚と触覚で被験者の方向感覚を操作する「視触覚間相互作用」という二つの技術を使っている。

鑑賞者はHMDを着用して壁を手で触りながら歩く

© 2016 Unlimited Corridor PROJECT Team

 鑑賞者はバックパック型のPCと、Leap Motion、そしてモーションキャプチャー用のマーカーを付けたHMDを装着する。そして6×6m四方の空間の中に二つ配置された半円形状の壁際に手を添えながら歩く。

外から見ると、ただ円筒形の壁を触りながら歩いているようにしか見えない

© 2016 Unlimited Corridor PROJECT Team

 そうすると実際に歩行しているのは曲がった円筒状空間であるにもかかわらず、あたかもまっすぐ歩いているかのように感じ、無限に歩ける通路を体験できるというものだ。

 HMDで提示されるのは、ビルの外にある高所作業用足場のような映像だ。

HMDで提示される画像

© 2016 Unlimited Corridor PROJECT Team

 円筒状の空間は半径3m程度で、明らかに曲がっている。にもかかわらず、まっすぐに続く通路の映像を見せられた状態で、手で壁際を触りながら歩くと、そんなに曲がった空間を歩いているようには全く感じられない。理屈では円筒状空間を歩いていることはわかっていても、主観的にはそういうふうには感じられないのである。

明らかに曲がっている空間を歩いているのに、まっすぐ歩いていると錯覚する。© 2016 Unlimited Corridor PROJECT Team

© 2016 Unlimited Corridor PROJECT Team

 つまり人の知覚というのは実にたやすく変化してしまう、あやういものだということを示している。だが、この感覚は、口で言ってもなかなか伝わらないと思う。ぜひこの機会に、実際に体験してもらいたい。

着用するバックパック型PCとHMD。© 2016 Unlimited Corridor PROJECT Team

© 2016 Unlimited Corridor PROJECT Team

■ゴジラとの記念撮影も可

 他にも様々な展示がある。滅多に見られない貴重な資料や、海外からの出展作品も多い。初台まで足を運んでほしい。

Alter制作チーム(代表:石黒浩氏、池上高志氏)による「Alter(オルタ)」。アート部門優秀賞受賞。「生命らしさ」を運動の複雑さで表現するために、周囲のセンサーとニューラルネットワークで動きを制御するロボット

© 2016 Alter developed by Ishiguro Lab. in Osaka Univ. and Ikegami Lab. In Univ. Tokyo

Benjamin Maus氏、Prokop Bartonicek氏による「Jller(イラー)」。画像認識装置を使ったロボットで、ドイツを流れるイラー川の小石を地質年代で分類するインスタレーション作品。

© 2015 Benjamin Maus, Prokop Bartoníček

市原えつこ氏による「デジタルシャーマン・プロジェクト」。エンターテインメント部門優秀賞受賞。故人の顔を3Dプリントしてロボットに貼り付けて身体モーションを再生することで憑依させるという新しい葬いの形を探る作品

© Etsuko Ichihara

功労賞を受賞した、コンテンツ・マネージャーの飯塚正夫氏に関する展示。ガンダムの設定資料やボトムズのコックピット内部資料

© 創通・サンライズ

© サンライズ

ローランドの創業者で2017年に亡くなった梯郁太郎氏関連の展示。電子楽器を初期から製作を行い、ユーザーに提供してきた

ゴジラとの記念撮影スペースもある

© 2016 TOHO CO.,LTD.

Reported by 森山和道

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