Valveが開発者向けに「Steam Audio」を無料で公開、VR内の音響を改善

 2017年2月24日、Valveは「Steam Audio」とそのSDK(開発環境)を公開した。Steam AudioはVR環境での音響効果を制御するためのソフト。VRアプリの開発を支援する施策の一貫で、無料で誰でも利用できる。

 VRにとって、音響は多くの人が考えている以上に重要な要素だ。現実の世界では、音は様々なものに影響を受けている。例えば音は壁で反射するため、壁との距離が違えば音の聞こえ方も変わってくる。ドアが少し開いていて、そこから音が漏れてくるといった聞こえ方もある。これらを再現できれば、VRの臨場感はさらに高まる。

 これまではソフトを作るメーカーがそれぞれプログラムしており、アプローチの仕方も異なっていた。小規模なメーカーでは凝った音響は手が回らないということもあっただろう。Steam Audioを利用すれば、少ない手間でよりリアルな音響を作り出すことができるようになる。

 Steam Audioには以下のような機能がある。

■バイノーラルレンダリング

 最も基本的な機能が「バイノーラルレンダリング」だ。耳の近くにあるもの、頭部全体や肩といったものの影響を考慮して音の聞こえ方をシミュレートする。これにより、音がどこから聞こえたのかを分かるようにする。

■オクルージョン

 直訳すると「音の閉じ込め」となる。「レイキャストオクルージョン」(見えない線を引くことで音の反射をシミュレートする方法)で音が聞こえるかを判定する方法は多くのゲームエンジンが対応している。

 Steam Audioはそれに加えて「パーシャルオクルージョン」の機能を搭載する。これはVR内で音の発生源が視界に入っている場合に音が聞こえ、入っていないと聞こえなくなる方法。例えば、曲がり角で発生源の向かって右側が見えている場合、右からは音が聞こえるが左からは聞こえない、という効果になる。これはイメージ動画がYouTubeで公開されている。

・Steam Audio Partial Occlusion Demo

■物理演算による反響

 反響は雰囲気の演出にも重要だ。室内なら部屋の形はもちろん、壁や床の素材、家具の配置などによっても反響の仕方は変わる。これらを再現すれば、より「そこにいる」感覚が味わえる。

■リアルタイム演算

 現実では、音の伝わり方は常に変化している。これをプログラムするのはとても大変だ。Steam Audioはリアルタイムで影響を計算するため、プレイヤーの移動を即座に音響へ反映できる。こちらもデモ動画がある。

・Steam Audio Sound Propagation Demo

■事前の環境設定

 条件を決めて作り込むと、リアルタイムで演算するよりも高品質な設定ができる。Steam Audioは固定されたシーン用に設定を作り込むこともできる。例えば室内に動かせるものがなく、音の発生源も動かない場合はこの方法が取れる。リアルタイムの演算をしなくて済むため、CPUへの負荷も減る。

 これらの方法を組み合わせると、音の聞こえ方で空間を演出できるようになる。探索ゲームであれば音のした方向もヒントにできるだろう。こうしたリソースが公開されれば開発者は他の部分に注力できるようになり、より面白いゲームが作れると期待される。エンドユーザーには直接関係のない内容ではあるものの、VR業界にとって注目度の高いニュースと言えるだろう。

Reported by 宮川泰明(SPOOL

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