第6回:名作“メトロイド”をリスペクトした2Dアクション「Axiom verge」

第6回:名作“メトロイド”をリスペクトした2Dアクション「Axiom verge」

たった一人で5年かけて開発された「メトロイドヴァニア」

今回紹介する『Axiom verge』はいわゆるメトロイドヴァニアというジャンル。
メトロイドヴァニア=『メトロイド』×『キャッスルヴァニア』(『悪魔城ドラキュラ』)ということで、広い2次元の地形を歩き回って探索し、アイテムを集めつつ、マップを埋めていくアクションアドベンチャーのことだ。

今やメトロイドヴァニアは、大手ゲームメーカー謹製としては“絶滅危惧種”だ。
任天堂の『メトロイド』は3Dに移行して2D型は絶えて久しく、「ドラキュラ」はそもそも続編が出なくなった。

だったら自分で作ってやるぜ! と名乗りを上げたのが、本作の作者であるThomas Happ氏。
ゲームデザイン、グラフィック、音楽、プログラミング、全てたった一人!
そのためゲーム全体には統一感があり、開発に5年かけた完成度は頭のおかしい(褒め言葉)レベルに仕上がっている。

なお海外ではPS4やWiiUなど家庭用ハード向けにもダウンロード販売されているが、日本ではSteam版のみがリリース。
幸いにもSteam版は公式に日本語化されているので、本作をテコにお友達をSteam世界に引きずり込むのもアリだろう。


「白衣の科学者」の主人公もムズさも80年代チック

科学者のトレースは研究施設で起こった爆発事故に巻き込まれ、異星に飛ばされてしまう。
不思議な女性の声に従って、見知らぬ地の探索をすることに……。
主人公が科学者で、実験中に異世界に転送とはなんという80年代SF!
白衣を着ているのも鳳凰院凶真度が高くてナイス(『シュタインズ・ゲート』ファン以外は聞き流してください)。

そんなわけでトレースを操作してジャンプしたり銃を撃ったり、伝統的スタイルに忠実なアクションゲームの始まりだ。
ステージのあちこちに配置されている武器やアイテムを取り、トレースを強めながら探索していくのも『メトロイド』でおなじみ。

そしてグラフィックまでも、80年代にタイムスリップ。
全てのキャラや背景もドット絵で、3Dとはどこの食べ物ですかという世界。
キャラの小さなサイズは表示力に限りがあった8ビット時代を尊重し、くすんだ色合いは数千万年の歳月を経た遺跡らしくもある。

どこをどう切ってもレトロゲームの血が流れ、俺達の『メトロイド』が帰ってきた! とガッツポーズだ。

タマゴのような装置から目覚める主人公のトレース。これはセーブポイントも兼ねていて、各所に配置されている。ボス戦の手前にもある親切設計だ

■タマゴのような装置から目覚める主人公のトレース。これはセーブポイントも兼ねていて、各所に配置されている。ボス戦の手前にもある親切設計だ


主人公のトレースは生身の科学者で、フツーの人。

はじめは武器も持たず、敵から逃げ回るだけ。死にそうになりながら武器を手に入れ、ようやく反撃に移る。
撃っても撃ってもザコさえ倒せず、敵に触れるとHPがゴリッと減る。

この主人公、弱い!

そんな生態系ピラミッドの最底辺から始まる異星どうでしょうの旅。
こわごわ撃ってはサッと離れてヒットアンドアウェイを繰り返し、次のエリアへの道を切り開く地道な作業。かといって経験値もレベルもなく、雑魚を倒しても「体力回復アイテム」を稼ぐ以上の意味はない。

最近のユーザーフレンドリーな作品に甘やかされてると、過酷な世界に感じるかもしれない。

マップを埋めていくことが本作の大きな楽しみ。ときどきマップを開いて、未知の箇所をチェックするのが基本だ。前は行けなかった場所も、パワーアップして楽々と行ける場合がある

■マップを埋めていくことが本作の大きな楽しみ。ときどきマップを開いて、未知の箇所をチェックするのが基本だ。前は行けなかった場所も、パワーアップして楽々と行ける場合がある


20種類もの武器をスムーズに使える快適操作

「たった一人で5年かけて創られたゲーム」がただのレトロだけで終わるわけがない。
『メトロイド』が好きすぎる男が思い入れを込めた本作は、ある面では本家を大きく凌駕している。

一つは武器やパワーアップのヤケクソなほどの多さ。

武器だけでも20種類!

取った武器はリング状に並んだリストから選べるのだが、片っ端から揃えていくと多すぎて、お気に入りの武器を見失うほど。

このゲームはXbox Oneのコントローラーとは相性がとてもいいが、うっかり切り替えレバー(右アナログスティック)に触れやすく、戦ってる最中に暴発して困るんだよな……と少しグチ。

各武器のスペックは差がありすぎて、思い付きで作ったのを片っ端から入れたんじゃないか? と疑わしくなる。

普通にゲームを進めていても武器は入手できるが、強力なボスに対しては力不足。そんな時は秘された場所にある武器を探せば、攻略がグッと楽になる

■普通にゲームを進めていても武器は入手できるが、強力なボスに対しては力不足。そんな時は秘された場所にある武器を探せば、攻略がグッと楽になる


ゲームを進行するにつれ、主人公を様々な面で助けるアイテムが続々と手に入る。

攻撃力アップや射程が遠くまで伸びる、体力の上限アップのほか「アクションの幅を広げる」ものもあり。「何かを倒す」よりも「探索する」ことが中心のゲームだけに、地味に見えてこちらの方が重要かもしれない。

序盤はジャンプ力を上昇させたりと控えめだが、特定の床や壁が壊せるレーザードリルが手に入る頃からじわじわ行動範囲が広がっていく。
さらに中盤に手に入るワイヤーっぽいものは、天井に引っ掛けてぶら下がり、勢いをつけてジャンプ……『ヒットラーの復活』じゃないか!

『ヒットラーの復活』は80年代カプコンのアクションゲームで、『ワイヤーアクションの元祖と言われるゲーム。本家はジャンプができず「ちょっとした段差を上がることもワイヤー使え」のピーキーな仕様だったが、こちらはジャンプができる(代わりに「張り付いた天井の上に登る」はできない)。『海腹川背』をやったことがあれば、あの簡易版といえばピンとくるだろう。

最近の2Dアクションは「過去の名作の再現」でこじんまりまとまりやすいが、本作は大胆に新規フィーチャーをドカンと追加。
薄い壁を抜けられるワープや、今流行りなんだからとドローンも手に入り、リモート操作して狭い隙間まで探索できる。伝統的なメトロイドヴァニアが、最新の想像力によりアップデートしてるのだ。

「いろいろなことができる」ものの、操作が混乱することはない。

たとえば「ワイヤーで足場から足場に移って壁抜けしてからハイジャンプ、ドローンを射出」といったアクションが、いとも簡単にできる。
一連の操作が流れるように操作できるチューニングが本当に素晴らしい。

アクションゲームの華といえば巨大ボスとの戦闘! 『メトロイド』というより『コントラ』チックな派手なバトルが繰り広げられる。よく観察して、敵の弱点を突くのだ

■アクションゲームの華といえば巨大ボスとの戦闘! 『メトロイド』というより『コントラ』チックな派手なバトルが繰り広げられる。よく観察して、敵の弱点を突くのだ


さらにダンジョンの奥深くに進むと、地形のチップが崩れて画面がちらついているところに出くわす。
もしかして……ROMカートリッジの差込口にホコリなどが原因で発生したバグというやつ?

日本ではバグ、海外ではGlitch。
国境を超えて親しまれてきた(?)ゲームのおもしろ現象が、本作のキーワードの一つ。
現実のバグは電源を落とすしか解決方法がなかったが、主人公トレースは科学者であり「バグ取り」ぐらいはお茶の子さいさい。
「Address Disruptor」なる照射装置の波動を当てると、バグの“書き換え”ができてしまうのだ。

この装置は通行の妨げになっているバグを破壊できるばかりか、地形や敵のハッキングまで可能だ。
空中や泡を“書き換え”ることで足場にしたり、強いザコを弱くしたり体力回復アイテムを吐き出すように改造したり。
ユーザーの手に負えなかった規格外のバグをゲームの中に取り込み、攻略の奥深さに変えたアイディアがお見事!

ユーザーの手に負えなかった規格外のバグをゲームの中に取り込み、攻略の奥深さに変えたアイディアがお見事!

■レトロゲームでは「想定外」の現象だったバグも、本作はシステムの中に取り込んでいる。ノイズのかかったところにadress disrupterを当ててやると、隠し通路が見つかることも


武器やマップのコンプリートにドハマリ

正直な話をすると、途中で何度か投げ出そうかと思った。
何の装備も持たずに異星に投げ出されたトレースは最初はとても弱く、死んでもすぐセーブポイントから復活できるとはいえ、ギリギリでたどり着いたエリアまでの道のりを再びやり直すのはやはり辛い。
それに離れたセーブポイント同士を瞬間移動できるワープもなく、一度訪れた場所をまたザコを蹴散らして戻るのかと思うと億劫になる。

ああ、最近のファストトラベル(離れた拠点をワープできる)に甘やかされたなあ……と自分の軟弱さを噛みしめることに。

しかし終盤に入ると、ゲームのテンポがガラリと変わる。
序盤でぐるりと迂回してた壁が瞬間移動で超えられるし、ワイヤーフックで渡り歩いて数分はかかっていたポイントが、ドローンを上に投げる→本体がドローンの位置にワープする新技を使えば一瞬でゴール。

もしや……とマップを表示して、まだ踏破していないところをチェック。どうしても行けなかった「あからさまに怪しい場所」にあっという間に行けた!
こうなったら脳内麻薬ドバドバで、やめられない止まらない。我慢強く育ててきた主人公により前に苦しめられていた雑魚を蹴散らし、弱者相手に俺Tueeee! という万能感に浸れるのだ(おとなげない)。

ただクリアするだけなら11時間前後だが、武器やマップのコンプリートを目指せばドハマリし、気がつけば夜明け。
グラフィックも音楽も懐かしくて美しく、ストーリーを進めていけば「なぜ主人公は異星に飛ばされたのか」という謎も明かされていく。
それにヒロインのElsenovaもかわいい! どう可愛いかを、ご自分の目で確かめてもらいたい。

トレースの運命にも深く関わっているヒロイン(?)のElsenova。「機械と生命の融合」というテーマを形にした存在で、ずっと観ていると可愛く思えてくるフシギ

■トレースの運命にも深く関わっているヒロイン(?)のElsenova。「機械と生命の融合」というテーマを形にした存在で、ずっと観ていると可愛く思えてくるフシギ


 

 

Axiom Verge is Copyright 2015 Thomas Happ Games LLC

Axiom Verge is a Registered Trademark of Thomas Happ Games LLC

 

Reported by 多根清史


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