第5回:モノクロ世界で淡々と繰り広げられる超鬱“死に戻り”ゲーム「INSIDE」

第5回:モノクロ世界で淡々と繰り広げられる超鬱“死に戻り”ゲーム「INSIDE」

超鬱ゲー『LIMBO』のPLAYDEAD、6年ぶりの最新作

我々は6年待ったのだ……今回紹介する『INSIDE』のリリースは、それほど感慨深かった。
制作したPLAYDEADはデンマークの会社で、前作の『LIMBO』は全世界で300万本以上も売れた大ヒットタイトル。それから6年ぶりの新作というわけだ。

『LIMBO』はインディーズ系ゲームであり、2Dの横スクロールアクションゲーム。森の中で目覚めた少年を操作して、ジャンプで攻撃をかわしたり、仕掛けを動作させて危機を回避しながら先に進む。
画面はモノクロでそう派手でもない。

が、この白黒がクセものだった。

色のない世界をいいことに、少年のヒドイ扱いはノーブレーキ。
首がコキャッと折られるわ四肢が切断されるわ、血しぶきが飛んでも白黒なのでそうドン引きもしない。
淡々と残虐表現に慣れていく恐ろしさ、他人の痛みは永遠にガマンできる。

悪意に満ち、人の死に何の関心も抱かれない世界。そんな倫理観を超越した風景がアーティスティックに描かれる美しさと、生き残るために死の罠を突破していくアクションパズルの歯ごたえ。
頭を使って仕掛けは見抜いたが、タイミングが難しすぎる! 無慈悲なゲームに天を仰ぎながら、少年の死体を積み上げていくプレイヤーが最も無慈悲という救われなさに心とらわれたのだ。

■森の中を進むと、何かを載せたトラックや検問など人の気配が。彼らが探してるのは主人公の少年で、見つかったら無残な死あるのみ


主人公の少年を待つ、狂気と死に満ちた世界

今回の最新作『INSIDE』も、スタート地点は森の中。
しかし少し先に進むと、トラックが停車して、大人たちが何かを探索している気配がある。
どれどれというノリで木々の間から漏れている光に近づくと、大人が駆け寄ってきて馬乗り、マウントポジションからタコ殴りで撲殺。
探されてるのは主人公だった!

『LIMBO』がファンタジー寄りの残酷な『グリム童話』風だったのに対して、『INSIDE』はリアル寄り。とはいえモノクロ画面は相変わらずで、狂気と悪意に満ちた道中が待っているところの軸はブレていない。

主人公の死亡はストレスフリー。
撲殺されても落下死してもロードは速やかで、すぐに何事もなかったかのように再スタートする。
アクションゲームで前の地点に戻させれる「死に戻り」(アニメ化もされたライトノベル『Re:ゼロから始める異世界生活』のアレですね)は苛つきがちだが、『INSIDE』は巻き戻し地点の設定も絶妙で「また仕切り直せばいいや」と割り切りやすい。
残機や残りHPといったゲームらしい表示も省かれているため、“醒める”瞬間がない作りだ。

序盤のステージは、まるでスパイ映画か『メタルギアソリッド』シリーズのような潜入&隠れるスニーキングアクション風味。ただし、少年には反撃できる武器も体術もなく、見つかったら死あるのみ。

ジープから光が照らされたら暗刈りで身を潜め、検問ではトラックが去るまでじっとして、追っ手を一人振り切ったらもう一人に見つからないよう暗がりでストップ。

そして猟犬、怖すぎ。
崖から池にダイビングして臭いを消せ……!

こう振り返ると、少年はひ弱いどころか実にタフですね。

少年がヘッドギアをかぶると、無気力な人間たちを操れるようになる。者を運ばせたり、自分を高所に持ち上げさたりするが、最後は「使い捨て」だ


あらゆる命や人間は「道具」に過ぎない

森を抜けとうもろこし畑を抜け、廃業したような畜産農家? を通り過ぎて豚の死体をクッション代わりにして着地。
そうして奥へ奥へと進んでいくと、鉄とセメントからなる人工物へ、よりSFチックなステージへと変貌を遂げていく。

主人公の後ろに付いてくるヒヨコ達を送風機に吸い込んで飛ばし、箱を叩き落として高台への足場とする。
少年があっさり殺されるように、ここでは命あるものも、命なき無機物も「道具」としての価値しかない。

それは「人間」についても例外じゃない。

『INSIDE』のパズルでキモとなるのが、ヘッドギアを装着して他の人間を操ること。彼らは少年が歩く動作をすれば歩き、持ち上げる仕草をすればモノを持ち上げる。二体、三体と複数を操って、スイッチとなる足場に乗せたり、力を合わせて重い檻を上げさせたりする。

意思なき操り人形達は、一体どうしてこうなったのか。なぜ少年が操れるのかも、ゲーム内では一言も説明されない。
彼らには顔も表情もなく、しかし動きは細かくて生々しい。
首と手をだらんと垂れ下げ、指示を与えられると命を吹き込まれて生き生きとする姿は前衛芸術の役者っぽくて、一コマ一コマが絵になってる。
パズルに行き詰まっても、ひょこひょこと頑張る姿がお芝居を見ているみたいに楽しく、つい時間を忘れてしまう。

胴上げで上のロープまで放り投げたり、力を合わせて邪魔な板を取り除いたり、絆も芽生えてきた気がした仲間たち。が、あくまでも手足となる「労働力」にすぎない。

主人公は前に進む障害が取り除かれたとたん、何の未練もなくスパッと切り捨てる。
やっぱり友情も錯覚だった、命は分け隔てなくゴミクズだ!

■風車のように回転する鉄板を使って、体を晒していると即死する衝撃波をどう使うかで頭をひねくり回すシーン。自分を実験台にして「死の罠」の謎を解くのだ


自分をモルモットにして「死の罠」を解く快感

そういう舞台チックな雰囲気もさることながら、もっと先を見たい! と思わせるアクションパズル、すなわち「死の罠」が優れもの。
水に潜って泳ぐと、何回やっても髪の長い妖怪? に追いつかれて溺死させられる。はて、なぜ足場には水中に入るハッチが2つあるのか……。
そうか! と正解にたどりついたときの気持ちよさといったら最高だ。

一人でいるときは、何もかも一人でやらないといけない。
例えば仕掛けを動かすための電源を入れると、殺人マシンの電源も入ってしまう。走って走って、飛び移る檻のドアを空けるのが間に合わない……。正解は「ドアを先に開けておく」こと。

前作『LIMBO』は純粋に反射神経だよりの局面が多めだったが(実績解除のために死ぬ想いをした……)今作では逃走のための「ダンドリ上手」に重きが置かれている感じ。
あらゆる人間もモノと同じ道具といったが、それは主人公本人も例外じゃない。
自分をエサにして敵を引き付けたり、自らをモルモットにした「実験」を繰り返して正解を導き出す冷徹さが問われるのだ。

死の罠のアイディアが盛りだくさんということは、つまり「死に方」もバリエーション豊かであるということ。
猟犬の群れに生きながら食い散らかされる、高いところから落ちてグッタリ、潜水艇のガラスを破られて闇が広がるなどなど。
「死に様」は使いまわされることは少なく、TPOに応じて色とりどりの「死」が用意されている。

死のトラップと死に際が組み合わさった最高峰が、遠くから響き渡る衝撃波の中で、風車のようにぐるぐる回る遮蔽板のステージ。
手前にスイッチがあり、動きを止めて衝撃波を遮ったものの、その先でパーン。カラダがはじけ飛ぶ瞬間が失敗するかぎりリピートするため、なんとかしないと!と気合が入ることハンバない。

■ロープで首を縛られた死体が水中に林立している、不気味だけどうっとり見とれてしまう不思議な光景。「見てはいけないもの」を見たいリビドーが、プレイの原動力となる!


一言もセリフはなく「動きと舞台」だけで語られる豊かなドラマ

どこまで行こうが命がゴミクズのように扱われ、世界は暗鬱さを増し、誰一人として救われやしない。もっと鬱なシーンを見たい、最低の想いをしたい。そんな負のスパイラルをたどって地獄の底をめざすプレイ体験は、「右から左へと進んでゴールをめざす」横スクロールアクションの行動原理にとても忠実だ。

登場人物にセリフは一つもなく、肉体が傷つけられたりモノが壊れる音が響くだけの世界。
しかし、「動きと背景美術』だけで、たしかにストーリーは語られている。それが何を語っているのか、プレイヤーの数だけ「俺だけのマイINSIDE(解釈)」がありうるのだ。

ステージの数だけ専用演出があり、「出落ち」の性格が強いのであまり語りすぎると台無しになるので控えるが(もう手遅れ?)終盤には「これどうするんだ」という衝撃展開があり、さらに隠しエンディングもあるので、ご自分の目で確かめて頂きたい。
「スーパーマリオ」系が苦手な人でも、仕掛けさえ見抜けばアクションの難度は高くないし、「買って損した」もないはず。

最後にひとつだけ。

このゲーム、サウンドが実は「人間の本物の頭蓋骨」をフィルタにして収録されているという。
それを頭の片隅に置いておくと、「ドォン……」と心臓が脈打つような音がしたとき「内から湧き起こる恐怖」を実感するだろう。

まさにINSIDE(体内から)!

 

 

© 2016 Playdead. All rights reserved.

Copenhagen, Denmark

 

Reported by 多根清史


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