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ジーニアス・パーティ ビヨンド

成毛久美子さん

『アニマトリックス』『鉄コン筋クリート』など、数々の名作を生み出し続けるSTUDIO4℃の下に、日本のアニメーションが誇る天才たちが集結した。プロジェクト名は『Genius Party <ジーニアス・パーティ>』。
昨年公開され、7月にDVDが発売された第一弾に引き続き、第2弾『Genius Party Beyond <ジーニアス・パーティ・ビヨンド>』が2008年10月11日よりシネマート六本木他で公開が決定した。また新たな世界観の創造に、わくわくが止まらない。
この『Genius Party』『Genius Party Beyond』にドスパラのPCワークステーション『raytrek <レイトレック>』が導入されている。今回は『Genius Party』で表題作『Genius Party』(監督:福島敦子)のCGI監督を務めた成毛久美子さんに作品について、そしてSTUDIO4℃の製作現場の声を集め企画された『raytrek spec. STUDIO4℃』についての話を伺った。

プロジェクトの象徴としての表題作、そのテーマとは。

──『Genius Party』のオープニング作品ですが、その概要をお願いできますか?

最初に『Genius Party』のプロデューサーである佐伯(幸枝)さんから来た話は、暗いものではなく華やかで、元気が出るようなオープニングにしたいということでした。エナジーということをテーマとして7人の監督のイメージの原動力のようなものを表現できる作品にしたいということです。
キャラクターは大きく3ついて、まず鳥のマスクをした鳥男、次に、地面に転がっている「ヒッグス」と呼んでいるんですけど、あの丸いカタマリ、あとは流れ星です。彼らは元々同じ種類のモノで、イメージを吸収することによって姿が変容していきます。舞台は脳の中です。ハートがたくさん出てくるので観ている人がなんなんだろうと思われるかも知れないんですけど、何かモノを見たときに「いいな」と思う心の象徴なんです。鳥男がヒッグスから出るハートを掴んで飲んで、流れ星に変容したものをみて、さらにヒッグスがいいなと思ってハートを出して、イメージを共有しあって色々変化していく感じです。ラストに向かってみんながモノを見て、いいな、と感動したものが一つの大きなイメージに集約していって、最後にとてつもないパワーを発揮するといった内容です。

──ストーリーの原案はどなたが考えられたんですか?

福島敦子監督がご自身で考案されました。何か脚本があったわけではなく、おおまかに「エナジー」というテーマから考えたものです。また音楽に合わせる、という前提がありましたので、音楽とのシンクロに関しては細かくこだわっています。

作業量2倍!?原画の線をスクリーンで表現。

──先にインタビューした方より、かなり時間が掛かったと伺いました。

そうなんですよ(笑)。今回は作画の方法が特殊でした。普通のアニメーションの場合、原画があって、動画さんに線を描いてもらって、それに着色をするんですけど、今回は福島監督がその原画の手書きの線を出したいということでしたので、色のセルの上に原画の線を重ねている表現になっています。通常作画の2倍になってしまうんですね。さらに手で描いた線はその人にしか描けない独特の物なので、それに沿って描いてくれる作画スタッフを探すのが凄く大変で、最終的に乗せる手書きの線に関しては福島監督本人がかなりの物量を担当されてました。


──原画を動画の上に重ねているんですか?

そうです。After Effects で重ねますが、原画が撮影素材になっているんです。単純に作画量、仕上げ素材共に2倍掛かってしまうことになりました。商業アニメーションでは殆ど行われない方法ですね。とにかく描くのに凄く時間が掛かりました。福島監督本人が一番大変だったと思うんですけれども。
セル画時代には原画をそのまま撮影で使うことは不可能だったのですが、デジタルになるとスキャンしたものがそのままAfter Effectsを用いて活用することもできますから、ご自分の線を映像を通して見てみたかった、というのがお有りだったのかも知れませんね。作画作業がピークになると、途中で「こんなことしなければよかったかも」などと仰っていたんですが(笑)、そこを今回は挑戦したんですね。絵が純粋に好きな方ですから。


左から、下地になる美術、レイアウトライン、下地とレイアウトラインの合成、それにセル部分を載せて完成。

元々、この手法は渡辺信一郎監督が『アニマトリックス』の『キッズ・ストーリー』(監督:渡辺信一郎)で行っていて、原画の線がそのまま特別活かせる手法があるよ、ということで、今作品の前作に当たる宇多田ヒカルさんのPV(『「Fluximation」Utada × Koji Morimoto』)でやってみました。この時の経験が今作品に繋がり生かされています。


──背景も凄いですね。

背景も福島監督の世界観を一番大事にするという意味で、通常の美術だと厳しいかな、ということで絵本も手がけられている門野真理子さんという方に全てアナログでお願いしました。アニメーションはどんな作品でもまずレイアウト(カットの設計図となるもの)を作り、それを基に原図を渡された美術さんが背景を描いていきます。
レイアウトは通常撮影では素材として使わないのですが、今回はそのレイアウトのラインも使いたい、ということで。最近はやらないことなんですけれども、レイアウトのラインをセルに転写して、そのセルを目安にして門野さんに描いていってもらいました。セルを紙の上に載せて、ぱらぱらとめくりながらそれを目安に描いてもらう。そうして描いてもらった背景と、先の福島監督の描いたレイアウトのラインを合成して背景が完成します。門野さんの描いた絵の下地に福島監督の線が乗っている状態になります。

門野さんが栃木県に住んでおられて、ここ(吉祥寺)とは結構遠いため、毎回直接チェックや打ち合わせを組むのは不可能な状況でした。遠方に住んでいる方とやり取りする際にはお互いのパソコンを通じてデータを送信したり、同じデータの画面を観覧しながら電話でお話をしたりするのですが、門野さんはパソコンを使われない方で。美術チェックは上がってきた美術の現物を見ながら、福島監督が電話で門野さんと意見交換をするという形になりました。殆ど口頭のみの情報でやり取りをしたんですが、こちら側の意図を汲んでいただいて、素晴らしい背景が出来上がりました。

引き込まれる、引力を感じる3DCG

──3DCGを用いた部分は有りましたか?

モブといえばモブなんですが、遠くにいるヒッグスは殆ど3Dです。全部似ているので1種類だけでも良いかなとは思ったんですけど、3パターンほど作りました。それを福島監督の描いたレイアウトに合わせて配置して動かしています。

あとは雲ですね。後ろでうごめいている雲。3ds Maxのボリューム系のプラグインを用いています。監督から雲を常に動かしていたいというリクエストがあって、当初全部作画で、ということだったんですけどさすがにそれはまずいというか(笑)、雲が常に動いているのを全部描くのはきついなということで3Dでやることにしました。
苦労したのは夕方から夜に変わるシーンで背景の雲だったものが手前にだんだん集まって最後に画面全体を覆って夜になるところ。それを全部3Dでやってます。最初はリアルな雲も作ってみたんですが世界観から浮いてしまったので、手書き風に見えるように試行錯誤の末に開発しました。ヒッグスは比較的簡単だったんですが雲は開発が大変でした。

あとはラストのカメラマップです。ズームアップしていって、引いて、タイトルになる部分、作画と3Dを合わせるのに苦労した部分です。


「引っ張られる、引力が生まれる」というSTUDIO4℃らしい「カメラマップ」を用いた表現。

──前のインタビューで坂本さん(『デスティック・フォー』CGI監督)も仰ってましたが、STUDIO4℃の得意な表現ですね。

坂本さんが得意ですね、(坂本拓馬氏のインタビューはこちら)でもこっちは苦しみながらやりました(笑)。作画には作画の力がありますが、カメラマップが入ることによって画面に立体感が生まれるというか、引っ張られる、引力が生まれてきますね。福島監督はこのシーンも全部作画すると仰ってたんですが、カメラマップというのがあるんで、ということでこちらに任せて頂きました。
カメラマップを用いると作画だけでは体感できない力が出ますので、世界観の拡がりを表現するのには3DCGは強いですね。STUDIO4℃ではもう10年以上前からやっていますから、確かに先駆け的な表現ですね。

作画・実写・CG、トライ&エラーの繰り返しで得られた表現

──その他に苦労した点はありましたか?

実写素材を結構使いました。「にゅるー」っとした表現をするのに内側のツブツブをどうやって表現しようかと作画や3D、色々やってみたんですが、福島監督がお弁当の保冷剤を「こんな感じで」と持ってきたものをじゃぁそれを撮影してしまおう、となって。「にゅるー」っと出したものをカメラで撮影してAfter Effectsで合成しています。


素材はなんと保冷材。福島監督が「こんな感じにしたい」と持ってきたものをそのまま撮影してしまい素材として利用した。

あとは、流れ星。主にTrapcodeというAfter Effectsのプラグインを使いましたがもう少し噴射している感じを出したい、ということで線香花火を撮影したり。Trapcodeに助けられてはいましたが勢いとしてもうちょっと欲しいな、ということで足しました。


Trapcodeだけでは勢いが足りず、花火を用いたというシーン。

また世界観を合わせる為に美術とヒッグスや鳥男などのキャラクターにAfter Effectsでテクスチャーを入れています。ヒッグスと地面は同じものですから、同じ素材に見える必要があります。通常はやらないのですが美術とセルに同じエフェクトを入れて馴染ませています。門野さんの美術を随分といじってしまいましたが、ありがたいことに快くお好きなように、とのお言葉を頂きましたのでこちらもイメージどおりに進められました。
色々なんでもありでした。3Dにせよ、実写にせよ、思いつき、思ったものをその場でやった上でのトライ&エラーが多かったです。時間は掛かりましたが現場は楽しんでやれたのではないかと思います。

──さすがに時間が掛かりましたね

分業でありながら分業でない、福島監督と私と、ずーっと負担が同じ時間に掛かってしまって(笑)、分けられない感じでした。

raytrek spec. STUDIO4℃に関して

──raytrek spec. STUDIO4℃はいかがでしたか?

実は私の所にはまだ回ってきていないんですよ(笑)。でも周りの人が作業をしているのをチラっとみた時に「あー、あれ間に合わないんじゃないかな~?」なんて思っているとこっちの半分ぐらいの力で「シャーッ!」と凄いスピードでレンダリングしてるんですよね。うわーって(笑)。まったくうらやましいです。今、社内にはraytrekが増えてきていますので、私にも早くお鉢が回ってきて欲しいです。

──では次の機会には是非お願いいたします。


アニメーションクリエイターを目指す方へ

──成毛様のこれまでの経歴を教えていただけますか?

武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を2002年に卒業後、7月にSTUDIO4℃に入社しました。入社後すぐに『マインド・ゲーム』(監督:湯浅政明)のCGIに関わり、暫くそこでこってりシボられ、いや、色々教えて頂きました(笑)。次の仕事の2004年の『きまぐれロボット』(原作:星新一)で初めてCGI監督を務めました。そのあとはいくつかの作品で色彩設計とCGI監督を担当しています。

学生の頃は広告のアートディレクターになりたかったんでグラフィックデザインや広告関係の勉強をしていたんですけれども、途中で映像に興味を持ち始めて。モーショングラフィックのゼミでMacromedia Directorというflashと同じ様なコンセプトのソフトで、そうですね、スタイリッシュな感じの(笑)、アニメーションを作っていました。

その授業の一環で、ユーリ・ノルシュテイン氏の作品をはじめとする国内外のアートアニメーションを観賞したりもしていましたね。まだ今ほどアートアニメーションも認知されていないときだったんですが、こういうのも面白いなぁと思いつつ、どうしたらこういったものを作れる仕事に就けるんだろうと悩みながら、卒業制作では人形アニメーションを作りました。アニメーションへの道も諦めきれないまま、デザイナーとしての就職が決まっていた矢先、ふとチャンスに恵まれSTUDIO4℃に入社することが出来ました。STUDIO4℃は自分のやりたかったこと、アニメーションで実験的な事ができるということも有りますし、商業的なエンターテイメント性も有りますし、丁度いいという感じでした。

ものを作っている人というのは、ひとつのことが出来ると更に次の表現がしてみたいという欲が出てくると思うんです。私がまだ予備校生だった頃にはCDジャケットのアートディレクションなど、「静止画」のデザインをやりたいって言う人が多かったんですけど、大学生の頃になるとモーショングラフィックスなどの「動画」を扱う人が増えたり、表現の幅をみんなが広げてきたというのを感じましたね。学生の頃にパソコン(DTP、DTV環境)が急に普及してきましたが、大学の学科自体も新しい環境について方針を模索している感じでした。今まで紙媒体を中心に大事にしてきた学科でしたから。

急にパソコンがやってきて、色々してくれたからびっくりしたと言うか、慌てていたと言うか、着いて行けていなかったと言うか(笑)。だから授業も生徒も過渡期にあって、どうしたものかと迷っていました。どうする?アナログはそろそろまずいんじゃない?やっぱりこれからはウェブかな?10年後はどうなってるんだろうね?とか言いあってました。

やっぱりパソコンの進化が凄かったというのが後押ししていますよね、これはもちろんアニメーション業界にも言えることです。STUDIO4℃もそうですし、パソコンによるデジタル環境の介入で日本のアニメーションシステム全体がガラっと変わってしまった。DTV環境があることで、会社に属することなく個人や少人数でアニメーションをやってみよう、という方も増えましたしね。

──STUDIO4℃で働く魅力を教えていただけますか?

社長がエネルギッシュで、いろんなことに挑戦してみよう!という社風に彼女のチャレンジ精神が受け継がれていると思います。やってはいけないという制約が少なく、それはそれで良し悪しだとは思いますが魅力的ですね。

──アニメーションクリエイターを目指す方にメッセージをお願いします。

難しいですね……。結局のところ技術を磨くということもそうなんですけれども、自分が好きなこと、目指すところを早めに見つけられる人が強いと思うんですよね。ソフトは動かせるけれど何をやりたいのかが自分でもわからないままだと、ずっと苦しいままだと思うんです。でも「やりたいことを見つけなさい」って言うのは簡単だけど実際は難しい。だから今現在自分が求めているものというか、興味があるものはなんだろう、という問いを、その時々にコロコロと変わっても構わないのでしっかりと持っておくといいと思います。
私も当初は生活のために働かないと、本当はやりたいけれどもアニメーションの世界みたいな「表現第一」では食べていく自信がないし、とかうだうだ考えていましたけど、でもあるときに「そんなに好きならアニメーションやればいいじゃないか」ってバーンと自分で決めちゃった。好きなものは好きだと決めてしまったら急にそのための力が出てきたというか、道が開けた気がしました。


──ありがとうございました。10月公開の『Genius Party Beyond』も楽しみにしています。


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