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インタビューCEDEC(Computer Entertainment Developers Conference) 三上浩司氏

CEDEC(Computer Entertainment Developers Conference)
 日本最大のコンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンスとして知られる「CEDEC(Computer Entertainment Developers Conference)」も、今年で1999年の初開催から数えて18年目となります。当初はゲーム開発者の勉強会を目的として始まったCEDECですが、昨年2015年には参加者6373人、セッション数224本を記録するなど、近年飛躍的に加速するコンピュータエンターテインメントの技術革新に負けず劣らずの急成長を遂げています。
発展目覚ましいCEDECを舞台裏から力強くサポートしているのが、エンジニアリングやビジュアルアーツ、ゲームデザイン、アカデミック、技術基盤など、各分野のエキスパートたる運営委員会のメンバーです。運営委員会の役割はカンファレンスの基本方針決定、企画・管理・運営・収支といった事務方はもちろんのこと、全国から寄せられた公募セッションの審査など、実に多岐に渡ります。こうした運営委員会の尽力なくして、CEDEC、引いては国内コンピュータエンターテインメントの発展はありえなかったといっても過言ではないでしょう。
そんな運営委員会のひとりとして名を連ねるのが、東京工科大学で教鞭をとるメディア学部の三上浩司教授です。一般企業でゲームビジネスなどに従事した後、ゲームやアニメの制作技術の研究活動のため大学に戻ったという異色の経歴を持つ三上氏に、メディア学を志すきっかけや、CEDECの舞台裏、デジタルエンターテインメント業界の趨勢などについてお話を伺いました。
  • セールス・コミュニケーション部マネージャ 浅井維新氏

    三上浩司 氏

社会人時代のゲームビジネスがきっかけで「メディア学」の世界に

三上先生は一般企業に就職されたのち、東京工科大学の嘱託研究員として大学に戻っています。社会人時代に経験されたゲーム業界はどのように感じましたか。また、その後に研究者として大学に戻った経緯を教えてください。

  • 三上氏
  • 私が大学卒業後に就職したのは総合商社で、入社後に「メディア部門」に配属されました。事業内容は基本的にメディアや通信に関するビジネスが中心で、例えば、携帯電話やパソコンの代理店業、洋画の買い付け、果ては人工衛星に搭載するトランスポンダの販売なども手掛ける部署でした。
    そうした業務のなかで担当することになった事業のひとつが、1996年に発売された家庭用ゲーム機向けの通信対戦サービス『XBAND』です。これが、私とゲーム業界を結びつけた初めての接点といえるでしょう。商社というのは新しいビジネスに対して極めて意欲的で、だからこそXBANDという当時最先端の対戦通信サービスに関わることができたのだと思います。そういう意味で、商社で仕事ができたのは私にとって非常に幸運でした。

そのまま会社に残るという選択肢はなかったのでしょうか。

三上 氏
  • 三上氏
  • 90年代中盤から後半に掛けて、少しずつ不景気風が吹いてきたせいか、会社で面白くて新しいことができなくなってきたんです。それにちょうどその頃は、ゲームをビジネスの対象として扱うよりも、自らゼロから作ってみたいという気持ちが自分のなかで強くなっていった時期でもありました。そんな経緯もあって、思い切って会社を辞めて独立することにしたんです。しかしなかなか軌道に乗らず、悪戦苦闘の日々が続いていました。
    そんな折、大学時代の友人から声が掛かって、彼女の父が手掛けるビジネスの手伝いをすることになったんですが、これがパソコンゲームの開発でした。しかも、その友人の父というのが、金子満氏で実は日本における「コンピューターグラフィックの父」と呼ばれるような大変著名な方で、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスに自身の研究室を持っていたんです。
    金子先生を色々とお手伝いしているうちに、やがて東京工科大学にゲームやアニメなどのコンテンツ制作に関する「研究所(現・メディア学部クリエィティブラボ)」を作るという話が持ち上がり、プロダクション分野の実務に詳しい人材が必要ということで、研究員として加わることになったんです。初めは数年くらい携わるくらいの気持ちだったので、当然、教員になるつもりもなかったのですが……気がついたら、自分にとって一番長いキャリアになっていました(笑)。

現在、三上先生が教授を務める東京工科大学メディア学部では、おもにどのような分野を扱っているのでしょうか。

  • 三上氏
  • 「メディア学」は、非常に幅広い分野を扱う学問です。対象となるコンテンツには映画・アニメ・コンピューターグラフィックス・ゲーム・音楽・広告・教育などと極めて幅広く、学生はこれらの分野について、技術・制作・ビジネスの各側面を横断的に学んでいくことになります。「メディア学」は、非常に幅広い分野を扱う学問です。対象となるコンテンツには映画・アニメ・コンピューターグラフィックス・ゲーム・音楽・広告・教育などと極めて幅広く、学生はこれらの分野について、技術・制作・ビジネスの各側面を横断的に学んでいくことになります。
    また、メディア関連の専門知識を広く学べる点も特徴のひとつで、例えば、ゲームの技術ならプログラミング、ゲーム制作ならゲームデザインやプランナー、他にも音楽ビジネスなども扱っています。学生は希望に応じて、こうした分野を複数組み合わせて習得できるようになっています。
    ゲームを作るには、理系・文系の垣根を超えた広範な知識が必要になってきますが、東京工科大学メディア学部ではこれら専門の分野をすべて揃えています。大学でここまで多くの専門分野を学べる環境というのは、他にはなかなかないと思います。

SSで実際にアニメーションを作るのは難しくないのでしょうか?

  • 三上氏
  • デジタルで絵が描ける人なら誰でも簡単に作れると思いますよ。描いた絵をパーツごとに切り出して、パーツ単位で動かすイメージなんです。極端な話ですが、手描きのイラストをスキャナーで取り込んでそれをアニメーションさせることだってできます。デジタルイラスト制作の初心者でも、使えるようになっているんです。

学生には、具体的にどのような指導をしていますか。

  • 三上氏
  • 当座の目標として「新規性の高いオリジナルゲームを作る」という課題を与えています。これはつまり、世の中に存在しているゲームをしっかり分析して、確固たる優位性を持った作品を企画して生み出そうということです。
    こうして制作されたゲームは東京ゲームショウで展示することになるのですが、そこでのブース作りや配布用の印刷物なども基本的に学生主導でやらせています。こうしてゼロから作品制作をプロデュースさせて……まずは壮大に失敗してもらいます(笑)。
スプライトスタジオの画面

「失敗から学んでほしい」ということでしょうか。

  • 三上氏
  • ええ、やはり学生は無駄なことをたくさんしますよね。しかし、これが大事なんです。これが逆に下手に教員がサポートしてしまうと、よくわからないうちに小さな成功を収めてしまうんです。これでは、せっかく経験を積めるチャンスが台無しになってしまいます。
    大切なことは、障害にぶつかったら自分の頭でしっかりと考えること。そうした際に教員が適切なアドバイスを与えればきちんと理解して、後々まで活きる血の通った知識になるんです。だからこそ、学生には「偶然の成功より必然の失敗」をしてほしいんです。

ゲーム業界と大学の橋渡しを担う「アカデミック・基盤技術」の活動

CEDECの運営委員会では、プログラムワーキンググループの「アカデミック・基盤技術」を担当されていますが、具体的にどのような活動をしているのでしょうか。

  • 三上氏
  • 例えば、最近はソニーの『PlayStation VR』がなにかと話題を集めているため、「VR(Virtual Reality)」というとゲームのために生まれたテクノロジーという印象がありますが、決してそうではありません。米Oculus社の『Oculus Rift』を始め、VRデバイス自体は数年前からかなりの盛り上がりを見せていますし,20年以上前にも家庭用ゲーム機としても登場しています.20年前は当時のゲームの品質と比較してとてもゲームに使える技術ではないという考えが主流を占めていました。ですが、現実にはPlayStation VRを見ればわかるとおり、VRにはゲームに活かせる知見が数多く備わっていました。
    このように世の中にはゲームのための技術ではなくても、ゲーム開発にとって非常に役立つ知見が数多くあります。例えば、心理学や認知科学のような学問分野でも、ゲームのプレーヤー分析に活かせられるはずです。ゆえに、アカデミック・技術基盤では、ゲーム業界に留まらず、さらに広範な周辺領域をカバーして、その中でも特にゲーム開発に役立ちそうな知見をセッションとして取り上げたいと考えています。

学生の方にどのように使って貰いたいという希望などはありますか?

  • 三上氏
  • 学生の方で、絵を描けるという人は、SSを活用してアニメーションの勉強をしていただいて、就職に有利なスキルを身につけてもらいたいです。テンプレートを少し改良した程度のポートフォリオでは、就職できないと思います。自分でキッチリと作り込んで作品にするということを社会に入る前に勉強してもらいたいですね。

一担当セッションでは、どのような点を重視していますか。

  • 三上氏
  • 一般公募セッションの審査では、ゲーム業界以外の技術で特に開発者にとって利益があるものをという点を特に重視しています。注目に値するセッションが公募で集まらないことがあれば、我々から開発者にオファーして特別招待セッションを設けることもあります。来場者の方には、アカデミック・技術基盤のセッションに参加することで、ゲームからは少し遠いと思っていた分野にも意識を傾けてほしいですね。
インタビュー写真

三上先生がCEDECで実現したいことはなんでしょう。また、自身の研究とはどのような関わりがあるのでしょうか。

  • 三上氏
  • 個人の研究活動では、おもに「プレーヤーを楽しませるための科学的なゲームの作り方」に取り組んでいます。一例を挙げれば、ゲーム中のログを取って、それらのデータをステージ設計やゲームデザインに応用するという研究も行っています。そのほかにはアニメ的な表現技術をゲーム中にリアルタイムで再現する研究にも取り組んでおり、こうした技術を商用化して産業界にフィードバックできるくらい高めたいと考えています。 運営委員としては、ゲームが学問として成熟していない現状を打破したいという目標を持っています。ご存知かもしれませんが、日本の大学には「ゲーム学部」はありませんし、当然「ゲーム学」という学位も存在しません。それに引き換え、北米では大学とゲームのつながりが早くからできていて、2011年時点で343もゲーム関連の教育プログラムが存在し,ゲームの名がつく学位が与えられています北米のゲーム業界は産学のつながりが非常に強いといわれていますが、これはゲーム学が学問として広く周知されている影響が大きいと思います。
    ですから、私がアカデミック・基盤技術の担当になってから6年以上が経ちますが、その間は大学とゲーム業界のつながりを強くする活動を意識して行ってきました。例えば、大学の研究者にセッションを依頼したり、ゲーム開発者には大学の学術研究に関する文献を読んでもらって、実際の作品制作に活かしてもらうようなきっかけを作ったりなどしています。

「VR」が指し示すデジタルエンターテイメントの未来と
開発者のこれから

CEDEC 2016のテーマ「Now is the Time!」は、VRにこそ相応しいフレーズだと感じます。今年は、ついに「VR元年」にふさわしい年になりそうでしょうか。

  • 三上氏
  • VRのブームは過去何度かありましたが、その都度、表示デバイスや再生機器などの革新が必ずありました。しかし、2016年のVRブームでは、「HMD(Head Mounted Display)」のさらなる高精細化に加えて、三軸センサーやジャイロなども組み込まれるなど、ついに万全の環境が整ったと強く感じています。
    しかし、それ以上に凄いと思うのが、実はVRコンテンツを誰でも作れるようになったという点です。過去のVRブームでは特殊な機材や環境が必要になるなど、とても個人で開発を行えるようなレベルではなかったことを考えると、これは大変な進化だと思います。以前は何百万もしていた高額な開発機材も、いまではゲームエンジンを含めてVR機器自体も10万円程度から入手できるようになってきていますし、個人の開発者でも試行錯誤しながらコンテンツ制作を進められるような状況になりつつあります。

開発がしやすくなれば、VRコンテンツも徐々に増えていきそうですね。

  • 三上氏
  • ええ、ただ今年は「VR元年」ともいわれていますが、私自身は誰もが認めるような大ヒットコンテンツが生まれるにはさらに時間が掛かると考えています。ですから、今この時をVR元年と呼ぶには、本来は時期尚早なのかもしれません。
    しかし、それでも今ようやく、いくらでもコンテンツを生み出せる状態になってきて、開発ノウハウを貯めていける環境ができあがりつつあることは確かです。そういう意味では、いまは「VR普及のための土壌づくりの元年」といったほうが相応しいかもしれませんね。
インタビュー写真

ちなみに、VRコンテンツの開発環境は手に入りにくいものなのでしょうか。

  • 三上氏
  • 新しいモノを作ろうとすると、特殊な開発環境が必要になる場合があります。VRコンテンツの場合はまさにそれで、例えば、開発環境として利用するパソコンの場合、相当なカスタマイズが必要になりますし、メーカー製の量販店モデルでは対応できないケースが非常に多いんです。
    しかし、サードウェーブデジノスさんの場合、BTOメーカーとしてこちらが希望するスペックに対してとても柔軟に対応してくれるほか、コスト面も非常に考慮されています。特殊な開発環境を必要なときにすぐに用意してくれる──常に新たなコンテンツを研究する立場にいる者として、こうした安心感があるのはとてもありがたいですね。

CEDECには、デジタルエンターテインメント業界を目指す学生も多数来場します。これからの業界を担う若者たちにメッセージをお願いします。

  • 三上氏
  • 最近は、若い学生の方がCEDECに数多く足を運んでくれるようになって、非常にうれしく思っています。そんな若い方たちに、ぜひ知っておいてほしいのが「プロはいつでも勉強している」ということです。
    とかく学生のあいだは、勉学の目的は希望する仕事に就くためのものであって、いったん就職というゴールを達成してしまえばもう勉強の必要はないんだと思いがちです。しかし、決してそんなことはなく、現にゴールしているはずのプロたちは毎年のようにCEDECに来場して、新たな技術を身につけて開発に活かそうと夢中になっています。
    ですから、学生の方たちも、今学んでいる勉強はプロになったらおしまいという考えではなくて、プロになったあとも継続して極めていく対象であることをしっかりと自覚してほしいですね。
 メディア学という文系・理系の垣根を超えた学問に教授として携わり、コンピュータエンターテインメントに関する広範な知識を持つ三上先生の言葉は、学生に接するかのように実に親身で分かりやすく学問に対する愛情が自ずと伝わってくるようでした。 三上先生からも話があったように、CEDECにはゲーム業界だけに留まらず、学術や産業方面からも多彩な分野のセッションが開催されます。興味のある方は、ぜひともCEDECに参加して未来のコンピュータエンターテインメントを紐解く最新テクノロジーを垣間見てはいかがでしょうか。

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